12話 友達を作ろう


 ソワソワとした様子でシズキの家のインターホンを鳴らす。

 何か企んでいるようだったから心配で心配で、今日はかなり女装を仕上げてきてしまった。不測の事態にも備えて替えの下着、胸には柔らかいシリコン性のパッド。下半身もモッコリしないように秘密道具を付けている。


──ガチャッ

「ふっふっふっ……待ってたよ」

 早速シズキが不敵な笑みを浮かべて現れた。


「……何をする気なんだ……?」

「まあまあ、とりあえず上がって上がって」

 手を引っ張られてズルズルとシズキの部屋に向かわされる。

 あまり部屋に入りたくない俺はほんの少し抵抗してみるが、骨折した手がミシッといったので大人しく着いて行った。


「お待たせ皆!」

 シズキが部屋の扉を開けてそう叫ぶ。


「貴女がマコちゃんっ!? 本当にモデルさんみたい!」

「女優でしょ! 事務所とかって入ってるんですか!?」

「えっ? えっ!?」

 シズキの部屋にいたのは、同じ学校の同じ年代の女子2人だった。


 普段からシズキと話しているのは見た事があるのもも、俺はこの2人と話した事は無い。


「2人共とりあえず落ち着いて。私が紹介するから」

「そ、そういえば身体弱いんだっけ……」

「ごめんねっ!」

 この2人にも俺が病弱という勝手なイメージを植え付けてしまっているようだ。


「この美人さんはマコちゃん。キックボクシングとかやってて筋肉もあるんだけど、病気が悪化して引退。私の友達!」

 どんどん変なイメージが植え付けられていっている。正直その設定を覚える自信は無い。


「で、この2人はアイちゃんとサクラちゃん。私と同じ学校の友達!」

「「よろしくね!」」

「よ、よろしくお願いします」

 うぅ〜ん……女部屋で女3人に囲まれている俺はどんな顔をしたら良いのだろう。


「とりあえず座って座って」


 シズキに誘導されて座ると、アイとサクラもペタンと座って俺を興味津々に観察してきた。

 服装、髪型、化粧、スタイル。更には持ち物が入っているバッグのブランドや匂いまで。


「そ、そんなに見られると恥ずかしいんですけど」

「シズキちゃんから色々と話は聞いてたんだけど、まさかこれ程までに美少女だとは……僕の想像を超えたよ」

「うむ……こんな人がモデル雑誌に乗ってても違和感無いよ……カッコイイ女性って感じ」


 アイは小動物のように小さく、ハムスターの後ろ足のようなツインテールをピョコピョコと揺らして俺の顔をじっくり観察してくる。

 サクラは高身長でかなり細い身体だが、健康的な肌色をしており普通にスタイルの良い女の子って感じだ。2人とも俺を観察しては羨ましそうな顔をしている。


「今日はマコちゃんにアイちゃんとサクラちゃんとお友達になってもらおうと思って誘ったの。今日は沢山話してお互いの仲を深めようっ!」

「「おぉ〜っ!」」

「は、はい……」

 女子のテンションに付いていけない。でもこんなに観察してくるのだからバッチリとメイクを決めてきた甲斐はあった。アイとサクラは俺の技術を褒めてくれるし素直に嬉しい。


「ねぇねぇマコちゃん! いつもシズキちゃんに送ってる写真みたいなポーズしてよ! モデルみたいに!」

「あっ、見たい見たい! 凄くセクシーなの見たい!」

「え……えっ!? シズキ私の写真見せたの!?」

 驚いてシズキに尋ねると、舌をペロッと出してテヘッと笑った。


「絶対見せちゃダメなやつなのにぃぃ!! うわぁぁぁあああ!!!」

 中には思いっきりパンツが見えてる写真や、太ももをムチッと掴んでエロい表情をした写真まである物を同じ学校の女子に見られてしまい、恥ずかしさでシズキの身体を揺らし、暴力に入らない程度の反抗を行う。


「グラグラはやめて?」

「は、はい……」

 色々と怖いからすぐにやめる。


「恥ずかしがる事ないよマコちゃん! あんなにセクシーで色気のある高校生なんて滅多にいないよ? 僕マコちゃんに憧れちゃってるもん!」

 どうやらアイちゃんは僕っ子のようだ。


「ねぇねぇ、私達に色気の出し方教えてよ」

「うぅ〜ん……じゃ、じゃあメイクとか教えようかな」

「ほんとにっ!?」

「うん。メイクは中学1年生の頃から練習始めたから自信あるよ」

 女装を始めると同時にメイクの練習も始めたから上手になるのは当然である。それに、実際の女の子に化粧するのも経験してみたかったし。


「2人とも元々顔が整ってるから私からお願いしていいかな?」

「是非ともお願いしますマコ先輩!」

「もうアイったら、マコト先輩みたいに言わないの」

「マコッ……」

「あ、ううん。私達の学校にマコト君っていう怖い子がいてね。マコちゃんには関係ないから大丈夫だよ」

「そ、そう。分かった」


 俺の名前が出てきたからビックリしてしまった。

 なんとか心を落ち着けてバッグの中から自分の化粧道具を取り出す。


「へぇ〜ファンデーションそれ使ってるんだ」

「うん、私はこれが1番慣れてるから。じゃあまずはアイちゃんから」

「1番だ〜!」


 俺がメイクする時に心掛けている事や、ちょっとしたコツなんかを詳しく教えながらアイちゃんにメイクをしていく。

 意外と俺でも世の女の子の技術に勝る部分があるようで、普通の女の子よりも女の子してる気分になり充実した時間を過ごすことが出来た。

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