11話 女装にハマった経緯
退院して2週間が経った頃、やっとシズキに女装の許可を貰った。
何故シズキに許可を貰わないといけないのかは自分でも分かっていないのだが、ついに女装できる事実に喜んだ。
俺がこんなにも女装にハマってしまった理由。それは俺がシズキに振られてすぐの事が原因だった。
◆◇◆◇◆
「シズキ! 俺はお前が好きだ! 付き合ってやる!」
俺は当時中学1年生で、その学校で最も喧嘩が強かった。そのままの勢いで好きだったシズキに告白をしたのだが──
「アンタみたいに男臭い奴は嫌いなの」
「……そんな……」
俺は振られたショックでその場から逃げ出そうとしていた。しかし、シズキは俺の心情など知らずに話を続けた。
「でもマコト君って前から思ってたけど女の子っぽいよね」
「……は……え?」
「ちょっと私の家に遊びに来てよ」
その時の俺は、大好きなシズキの家に行く理由が分からなかったのだが、その時何も考えずに行ってしまったのが今の俺を作り出したのだと思う。
「なんでこんな格好っ……」
「可愛いよマコト君、いやマコちゃん」
「恥ずかしいってっ!」
初めてシズキの部屋に遊びに行くと、俺はシズキの服を着せられて可愛い可愛いと褒められていた。
その時はまだ女装が好きだという気持ちがなかった為、シズキに褒められながらもすぐに服を脱ごうとしていて、ついにあの脅し文句を言われてしまうのだ。
「脱いだら私に告白した事クラスの皆に言うよ?」
「えっ……なんでだよっ!」
「だって私、女装したマコト君の姿好きだもん」
「……はぁ?」
「大好きなマコちゃんのままで居てくれたら、マコト君が私に告白してきた事言わない。でももし女装しなくなったらマコト君の事も嫌いになる」
その時、俺は意味不明で頭の中がこんがらがっていた。
それでもシズキに嫌われたくないという一心で、その日女装したままシズキの遊びに付き合った。
「ほらマコちゃんはこんなに可愛いんだよ?」
「……かわい……い?」
鏡の前に立たされて自分の姿を何度も可愛いと褒められる。
「マコちゃんとなら付き合えるかも」
「わわっ!」
女装している時だけシズキは抱きついてくる。
「マコちゃん好きだよ」
「っ──!?」
そしてその時、俺のファーストキスをシズキに奪われた。それは甘くて頭がフワフワするくらい優しいキス。
しかし、次の日学校で会うといつも通り素っ気ない態度で接してくるのだ。どうしてと聞いても 「私はマコちゃんが好きだから」 と言われる。
そして俺は、家にある服で女装してみてシズキの家に行ってみる事にした。
「シ……シズキ……」
──ガチャッ
「何……マコちゃん! 入って!」
女装した俺の姿を見た瞬間、俺の大好きなシズキの笑顔が見れて女装=シズキに好かれる、という意識が芽生えた。
それ以来、シズキにもっと好かれる為に女装の腕を磨いて家に遊びに行った。
学校ではいつも通りただの幼馴染みとして。しかし家では女装した俺とラブラブな関係で過ごしており、最高のリア充生活を満喫していた。
◆◇◆◇◆
「……こうなったのもシズキのせいだからな」
中学生の時からかなり成長した自分の女装姿を見て、シズキとせいだと言い聞かせながら様々なポーズを楽しんだ。
学校では喧嘩したりして、こういう女々しい物とは全く関係ない世界に住んでると思われる俺でもこんな事をこっそりやっている。もしこれがトモキや他の男達にバレたらどうなるだろうか。
虐め? ……いや、こんなに可愛い俺の姿を見たら、きっと皆トモキのように惚れるだろう。そのまま皆に命令されてエッチなポーズを取らされたり……。
「っ……やばっ、勃ってきた」
この前シズキと買ったショートパンツの股の部分が膨らんで窮屈になっている。
「んっ……はぁっ……可愛いっ……可愛いっ!」
鏡に写る自分の淫らな姿を見ながら、久しぶりの女装を極限まで楽しむことにした。
翌日の朝、清々しい気分で通学する俺の元にシズキがやってきた。
「おはようマコト」
「おうシズキ。もうすぐ夏休みだな」
「そうだね……むふふ」
「おい何企んでやがる」
シズキが怪しい笑みを浮かべて一気に嫌な予感が走った。
「秘密! でも今日女装して家に来てね」
「……すげぇ怖いんだけど」
「大丈夫大丈夫! 会わせたいだけだから!」
わざわざ女装した姿で誰かに会うという事はトモキだろうか。いやしかしトモキとは何度も会っているし……とにかく良からぬ事なのは確かだ。
「心の準備だけはしておくよ……」
「潔いね。じゃ、そんな訳で今日も喧嘩しないようにね〜!」
「したくてもできねぇよ」
シズキはルンルンとスキップをしながら走り去っていった。
最近は殴りたい奴がいても殴れないからストレスが物凄く溜まっているんだ。その分女装してストレス発散させたいのだが、シズキが絡むとろくな事がないから気を付けないといけない。
ストレス発散は1人(ソロ)が1番だ。
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