第76話 倉庫

目的の倉庫は外観からすると、普通の倉庫だった。

唯一普通ではない部分としては、入口のシャッター横に木製の看板が掲げられ「魔法少女クラブ 第7秘密基地」と毛筆で書かれている。


「だいなな、、」


「全盛期は30拠点ぐらいあったよ!」


「そんなに多かったんですか」


「そうね、大規模な組織だったからねー。内部抗争と壊滅作戦で全部なくなったと思ってたけど」


アンさんが看板に手を当て、撫でる。

「まだ、ちゃんと残ってたんだ」


何か思い入れがあるのだろうか、私はアンさんの横でシャッターに手をかけ、開けようと試みる。


「待って!! 強い魔法の匂いがする!!!」


アンさんの大きな声が響いたが、遅かった。

ギリギリと鈍い音が鳴りながら、シャッターが50センチほど上がる。


シャッター越しに倉庫の中から、得体の知れない何かがこちらに向かって凄まじい速度で近づいて来る音が聞こえた。


私の両足首が強い力で掴まれる。

見下ろすと、シャッターの隙間から腕がのび、私の足首を掴んでいる。


足首を引っ張られ、お尻を地面に打ち付ける。

シャッターの隙間から、見える倉庫の内部に明かりはなく、暗闇から伸びる両手の間に微かな顔の輪郭が見えた。


床を這い、強い力で私を倉庫の中に引きずり込もうとする人物の顔には、感情のない黒いボタンが2つ付いている。


「タスケテ、、、」

パックリと開いた赤色の口から声が漏れる。


私の足首を掴む人形の両脇から別の2体の人形が倉庫の暗闇の中から現れ、シャッターの隙間から這い出すと、私の両腕をそれぞれが掴み、パックリと口を開ける。


「タスケテ、タスケテ、、、」


「これは、魔法少女の3人かしら?」

パニック状態の私の横で、アンさんが頬に手を当て首を傾げる。


両手と両足首を掴む人形を見ると、面長のツヨシと違い、3人とも女の子の容姿をしており、魔法少女っぽい服装をしている。


「なんで、魔法少女が人形になってるんですか!?」


横のアンさんを見上げながら、疑問を投げかけるが、アンさんはシャッターを指差し呟く。


「それだけじゃないわ」


引きずり込まれそうなシャッターに視線を戻すと、倉庫の内側からシャッターにぶつかる音が鳴り響く。


1つや2つではない。怒涛のようにシャッターにぶつかる音が鳴り響くと、シャッターの隙間から続々と人形の群れが溢れ出ると、私の身体に覆いかぶさり、赤い口を開け、口々に声を上げる。




「タスケテ、タスケテ、タスケテ、タスケテ、、、」



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