第77話 情報

「全部で26名。内、魔法少女クラブの構成員が3名、一般人が男性12名、女性11名。とんでもない数ですね」


大賀補佐がリスト化した資料を見つめる。


倉庫で人形達を見つけた後、アンさんと車のトランクにギュウギュウ詰めに押し込み、連れて帰って来た。


今は、各々に水を与え、会議室に隔離している。



「一気に俺がマイノリティーじゃなくなったみたいだな」


面長のツヨシが机の上で水を飲みながら、愉快そうに周囲の人形達を見まわす。

「なんか、親近感わくわ」


水を飲んだ人形達は正気を取り戻すが、自分の姿や周囲の状況に動揺し、口々に不安の声をあげるので、会議室は騒々しい。



「あのガキ、見つけたらぶっ殺す」

他の人形達とは離れ、会議室の隅で3体の人形はあぐらをかき、円になって座っていた。

「アタシらをこんな姿にしてチョーむかつく」

「なぶり殺す。地獄をみせてやる」



魔法少女クラブの構成員は誰よりもいち早く状況を理解し、物騒な復讐の会話をしている。


それぞれ、赤色、青色、黄色の服装をしており、ミホと名乗る赤色がリーダー格で、右目の下に泣きぼくろがある。私の足首を掴んだのは彼女だ。


「ナメやがって」

ミホは人形の拳で床を殴りつける。


「あの」

私はメモ帳を片手に声をかける。

「この魔法をかけた犯人を知ってますか?」


座っていた3体がジロリと私を見上げる。


「アンタ、魔対の人間か?」


私が頷くと、3体の人形はけたたましく笑った。


「誰がお前に協力するかよ!」

「アタシらをバカにしてんの?」

「頭悪そうな顔してんなお前、カエルにしてやろうか?」


罵詈雑言を浴びる結果になり、足元の人形達を蹴り上げたい欲求に駆られるが、理性で堪える。


口の悪い魔法少女達だ。

心に傷を負いながら、犯人につながる情報を集めようと、事情聴取を試みるが、他の人形達はまだ話を聞ける状態ではない。


メモ帳片手に、少しでも落ち着いた人形がいないか周囲を見回していると、私のふくらはぎがトントンと叩かれた。


見ると、オレンジ色のスカートを履いた女性の人形が私を見上げている。



「私達をこんな姿にした子を探しているんですよね」


「はい、何か特徴とか覚えていますか?」



彼女は少し考え込んでから、答えた。




「わたし、その子を多分、知っています」



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