第66話 餃子
「なんで、私も幽霊が視えるようになっているんですか?」
半身でゆらゆら漂う店員から暖かいおしぼりを受け取りつつ、人形に向かって小声で訊く。
「ああ、この蝋燭があるからだな」
お店の外でつけた蝋燭は机の上で皿にのせられている。
「この火が消えない限り、幽霊が視える」
「そうですか」
お店の中は薄暗いわけではなく、天井の電球が明るい光を灯している。幽霊のお店に電気が通っているのも不思議な感覚だが、それは幽霊の文化に対する偏見になるのだろうか。
私達は1階の座敷席に通され、4つの座布団が置かれた畳の上でテーブルを囲んでいた。通される間にはカウンター席が数席あり、幽霊や物の怪がお酒を飲み、上機嫌でツマミを食べていた。
「何を食べますか?」
私はテーブルに置かれたメニューを手に取り、内容を読むと、それぞれ「生きてる人用」「死んでる人用」「物の怪用」と項目で分かれていた。アルコール類だけは共通メニューのようで、種類豊富に取り扱っていた。
食べ物の種類は物の怪用が1番多く、生きてる人があまりお店に来る事はないのか、餃子の1品のみだった。
「貴方、本来の目的を忘れてますね」
「そうでした! 化け猫見習いのミカンさん!」
背後でガタンと音がした。
振り向くと、隣のテーブルに座っていた三毛猫が黒目を大きくしてこちらを見ていた。
「あの、私に何か用でしょうか?」
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