第48話 裏口

細長い店内を進み、料理の材料や色々な備品が置かれた部屋のさらに奥に、裏口はあった。


木製の緑色をした扉をヒナミさんがノックを3回してから開くと、明るい日の光が部屋内に差し込んだ。



「よかった、よかった。今日は機嫌が良いみたい」



おかしい。

ここは地下階のはずなのに、扉の先は地上だ。


ヒナミさんと先輩に続いて、扉から外に出ると、見慣れた場所に出た。そこは千葉駅から少し離れた富士見通りの一角だ。


振り返ると、そこには裏口の扉は消えており、代わりに自動販売機が立っていた。



「私の店の裏口は色々な所に繋がってるのよ、機嫌が良くないと思い通りの所に行けないけどね」



そう言いながら、駅の方に向かってヒナミさんは歩き始める。



昼過ぎの人通りはまばらだったが、千葉駅の東口に向かうにつれて、大きな人だかりが出来ていた。



駅の改札へと上がる階段前は、待ち合わせをする人で休日や仕事終わりは溢れているが、平日の昼下がりでこの人だかりは異様だった。


何かを囲んで大きな輪っか状に広がっている。


後方の人は何事かと、首をのばして人混みの合間から前方を覗いている。



野次馬的な恥を知らない好奇心に満ちた目が、その場には溢れている。正直、私はその目が嫌いだ。


自然と苛立ちからくる吐き気に襲われながら、自然に振る舞おうと、顔を引つらせていると、人だかりの中心から悲鳴があがった。




女性の甲高い、耳を貫く悲鳴だ。



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