第44話 カフェ

先輩の言う、次に立ち寄る店は同じデパ地下内にあるカフェだった。


おとぎ話の絵本に出てくるような西洋チックな外観をした入り口の看板には、『カフェ セサミ』と書かれ、クリーム色の壁に付けられた曇りガラスの窓の奥にはオレンジ色の灯りが灯っている。



先輩が茶色の扉をノックすると、「はーい」と女性が扉を開けた。


その女性には見覚えがあった。

受付の親切なミナ姉だ。


「あら、ルーキーちゃん達いらっしゃい」


先輩の後について、お店の中に入る。


先ほどのイノさんのお店と同じように、魔法がかかっているのか、外から見るよりも中の方が広かった。



内部は奥行きがあり、左手にカウンターと椅子があり、右手には壁沿いに小さな木製の机と椅子が、2セット並んでいた。


カウンター内には大きなコーヒーメーカーが複雑な配管の先から蒸気を吹き出し、そのコーヒーの香りが店内を満たしていた。



「2人ともコーヒーで良いかしら?」


「はい」と答え、先輩とともにカウンター席に座る。



私があまりにもマジマジとカウンター内で、コーヒーの用意をする女性を見ていたので、彼女も気付いて、笑顔を返した。


「どうやら、ミナ姉には会ってるみたいね。私は双子の妹のヒナミよ。そっくりでしょ」


確かに、そっくりだった。


「ヒナミさんは魔法使いなんですか?」


「その通り!」


ヒナミさんはどこからともなく杖を取り出し、天井に向かって振りかざすと、杖先から小さな打ち上げ花火が上がった。



感嘆の声を私と先輩はあげ、花火のパチパチという音に合わさって、拍手した。



「ミナ姉も魔法使いなんですか?」


「そうではないわ。私がたまたま魔法使いなだけ」


コーヒーメーカーの至る所を杖でカンカンと叩きながら、ヒナミさんは答えた。


コーヒーメーカーは爆発するのではないか、と心配になるほどの振動と、蒸気を吐き出し、透明な配管を通り、ドリップされたコーヒーが勢いよく上部から噴き出す。



それを「あらよ、あらよ」とヒナミさんは宙でカップを回転させ、受け止める。そして、そのままの勢いで2人の前にカップを置いた。コーヒーは一滴も床に落ちていない。



またも感嘆の声をあげ、パチパチと拍手する。

「はい、お待たせ。スペシャルコーヒー」




最後に私の前のカップを杖先でポンと軽く叩いた。




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