第31話 昼食

「午前中おつかれー」

地下の食堂に行くと、大森さんと今井君が席をとってくれていた。


「おつかれさま」

購入したカツカレーを机に置く。

見ると、2人ともカツカレーを食べていた。


「やっぱり匂いに負けたよね」

大森さんが満足そうにカレーをパクついている。


「ここのカレーは最高だな」

今井君も一口一口、美味しそうに食べる。



私も急いで席に着き、いただきますと早口で唱え、スプーンに白米と金色のルーを乗せ、口に入れる。



「美味しいー!」

思わず歓喜の感想が漏れた。



しばらく、至福の美味しさに3人で浸っていると、1人の男が近づいて来た。


昨日、レトロなカメラを持っていた人だ、腕には沢山の新聞を抱えている。



「やあ、ルーキー達、新しい新聞が出来たからあげるよ」



無造作に新聞を三部引き抜くと、机に置いて去って行った。


大森さんが机に置かれた一部を広げながら説明してくれた。


「あの人は霊魂地域福祉課で私の上司にあたる人だよ。心霊写真を撮るプロなんだって。それもあって、局の広告班も兼ねてるんだって」



心霊写真のプロ。

少しブルっと身震いをする。


私はもっぱら心霊現象の類は苦手だ。大森さんを目の前にして言えないが、ハッキリいって怖い。



「なあ、これ僕達が写ってるぞ!」



今井君が指差す新聞の一面を私も覗き込む。

見出しに『今年の新入社員、ヤバすぎ!』と書かれ、大きな写真に写った私と目が合った。



河童に跨り、握りしめた右手からは粘液が滴り、唖然とした顔でこちらを見つめている。



写真には『大型ルーキー ビッグバン!某課補佐を挨拶の一撃ノックアウト!」と被せ文字が綴られている。


一面の下部には、まるで指名手配写真かのように、3人の顔写真が並び、こちらを見ている。



さっきの広告班の人は「号外!ごうがーい!」と言いながら、食堂内を練り歩き、手当たり次第に新聞を配っていた。




大きな身震いとともに、大量の冷や汗が全身から噴き出た。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る