第21話 乾杯

どこからともなくクラッカーの音が鳴り響き、紙吹雪が舞う。閉め切られていたカーテンが開き、外の光が部屋に注ぎ込まれる。


「入庁おめでとう!」

大きな祝いの言葉から「カンパーイ!」と続く。


手に持つ表面張力限界のグラスめがけて、たくさんの人がグラスを片手に飛び込んで来る。



「わー!  ありがとうございます!」



悲鳴に近い感謝の言葉を返し、両手で支えたグラスがカチ割れるのではないかというほど、打ち鳴らされる。


鳴らした方々は満足そうに、他のグラスめがけて突撃して行く。



不思議な事に、液体が溢れることはなく、表面張力を保ったままだ。



いや、不思議ではない。おかしい。

グラスを横にしたが、液体は溢れない。

真下にしても、液体は溢れない。


これは、飲んでも大丈夫なのか?


まあ、飲めばわかるか。

グラスを戻すと聞いた事がある声がした。


「おめでとう」

声の方を向くと大賀補佐が微笑んでいた。


「ありがとうございます!よろしくお願いします」


お互いにグラスを合わせた。


「すごいでしょう。1年に一度の事だから、みんな張り切るのよね」


グラスから一口飲む。



「すごいですね。ただ、最初から粗相してしまったのですが、大丈夫なのでしょうか?」


「あれぐらい大丈夫よ。正直スッキリしたわ」

ふふふと、悪魔的に笑った。



「次はあの補佐をぶっ飛ばしなさい」


「ええ、、、」


「冗談よ」

眼は笑っていない。


「今年私たちの魔対課は料理担当だから、しっかり食べなさいね」


気づくと部屋の至る所に色とりどりの料理がのったテーブルが置かれ、ブュッフェ式の飲み会に様変わりしていた。



「今日はこれだけで、本格的な仕事は明日からですから、交流を広げてきなさい」




「ただし、どれだけ飲んでも、次の日は遅刻せずに出勤するのも社会人の務めですからね」



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