第17話 励まし

それだけではない。


2階、3階、4階のボタンがなく、3.5階や2/7階、はたや複雑な数式が書き込まれているボタンまでが20個並んでいる。



少なくとも2階、3階、4階のボタンはない。



「私の今までの謎がやっと解けた」


「謎?」


「125メートルの高さがあるのに、4階建ては絶対におかしいと思ってた」


「なるほどね」

今井君が腕組みをして頷く。


「実際は普通の人が入れない階がたくさんあって、そこには秘密裏な部署があるって事なのか」



「確かに」

大森さんも腕組みをして頷く。


「外からだと反射するガラス張りで、中が見えないようになってるもんね」



私は大事な事を聞くのを忘れていた。

「そういえばだけど、2人はどこの配属?」



「僕は妖怪環境維持課」



「え?」「え?」

私と大森さんは同時に声を出す。



「私は霊魂地域福祉課」



「え?」「え?」

今井君と私は同時に声を出す。



「小夜ちゃんは?」

大森さんがいきなり下の名前で呼ぶ事に、驚きつつも答える。



「私は魔術防災対策課」



しばらくの沈黙がエレベータ内に広がる。


「なんて言うか」

今井君が腕組みをほどき、肩をすくめて沈黙を破った。


「同期同士、お互い頑張ろうぜ」



チン、



という聞き慣れた音がすると、正面の扉が開き、目の前に『巨大な河童』が立っていた。


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