第7話
「はぁ、はぁ、はぁ」
前方にはアニメキャラとアンなことしてる汚いおっさんがいる。
俺は隠れてその様子を伺っている。
「ちょっとーはやいよー。」
「ご、ごめんみさりん。」
「ほんと、のぶりんはせっかちなんだから〜」
聞くに耐えない。
見れたもんじゃない。
汚い。
臭そう。
吐き気がする。
みさりんが可哀想になった。
「み、みさりん!」
「の、のぶりん!」
・・・どうして俺はここにいるんだろう。
昨日の午後のこと
「さ、殺人?」
「・・・うん。」
「でも、妄想だろ?」
「違う、本当に殺されたんだ。」
「どうやって?」
「・・・わからない。ただ、お前と同じ寄生型が殺されたんだ。」
「まじか・・・」
「まじだ・・・」
「つーか、なんでんなこと知ってんだ?」
「ん?ああ、友達から聞いたんだ。」
「そうか。。。」
「とにかく、お前も気をつけろよ。」
「寄生型が妄想空間から自分で出ることって、できる?」
「今の所、わからないな。そんだけ、じゃな」
「あ、最後に一つ、どうして俺なんだ?」
「え?」
「どうして俺に妄想空間について、教えたんだ?」
「友達だから?」
「お、おう!」
「嘘だぞ?」こういうやつだ。
「冗談だって、スネんなよ・・・お前以外、いなかったんだ。」
「え?」
「お前以外にも相談しようと思ったんだけど、みんな、妄想とは無縁みたいなやつらでさ。
お前ぐらいしかいなかったんだよ、そういうの。」
「左様か・・・」
「ま、気をつけろよ。じゃ、」
そうはいかん。
俺には絶対的な使命がある。
命をかけてでも自発型になって、アンなことをしてやるんだ。
俺はさっきのサイトに戻ると、再び情報を漁り始めた。
どうすれば自発型になれる・・・
1.他人の空間に入りまくる
2.ひたすら妄想する
3.I had make love to Misa-rin today in delusional space
2は今までもやってきたから、1一択だな。
・・・でも、空間に入りまくるってことは、人混みに行くってことだよな。
めんどくさ・・・
そして今、ここにいる。
・・・ダメだ。帰ろう・・・
後ろを振り向くと、60代くらいのおばあさんが立っていた。
「あんた、ここの主かい?」
「え?いや主じゃないです。」
「じゃ誰?」
「あの人だと思います。」汚いおっさんを指さす。
「ちがう、あんたの方。」
「え?」
「あたしね、向こうのほうの町で文房具屋やってんのよ。」
「はぁ。」
「それでね、前にね。」
それから1時間ほど、男の気がすむまで、その空間は続いた。
その間ずっと、俺はおばあさんの話を聞き続ける羽目になった。
「あ、終わったみたいですね。」
「ん?そうかい、じゃあまたね。お元気で。」
「はーいオタッシャデー・・・」
「おお?」
出てきていきなり後ろからぶつかられたので驚いた。
周りの人は、みんな俺を迷惑そうに避けて通る。
あ、そうか。
ここ横断歩道だ。
俺は割と近所の人通りの多いところに来ていた。
はあ、妄想空間って疲れるな。
大して面白くもなかったし。
もう帰ろう・・・
しかし、帰る途中にも一度人の空間に入ってしまった。
そこは夏のプールだった。
学校にあるようなシンプルなものではなく、流れるプールやウォータースライダーなどがあるあのプールだった。
そして、人がいなかった。
おお、やった。
当たりだ!
きた!
遊ぼうぜ!
っとおれ水着じゃないんだった・・・
ん?でも妄想空間だから出せるかも。
俺は目を閉じて、自分の水着姿を可能な限り妄想してみた。
目を開けると、俺は水着を着ていた。
ヒャッホーウ!
ウォータースライダーに10回以上乗り、流れるプールで流れまくり、屋台でクレープやカレーを食べまくった。
そろそろ飽きてきた頃、俺はこの素晴らしき空間の主を見つけていた。
その人はウォータースライダーの搭乗口に座って、既に滑り台の中にいる誰かと話していた。
うわっリア充か?
「大丈夫だって、怖くないよーほら。」
「うわっ!き、急に離すなねーちゃん。」
「だから、大丈夫だってー別に死ぬわけでもないんだから。」
「・・・嘘だよ。」
「え?なんて?」
「なんでもない。」
「そら、ゴー!!」
「ウワァ〜〜!!!」
滑り台の中にいた男の子は、一瞬だからよくわからなかったが、知っている顔だった気がした。
お姉さんと目が合う。
お姉さん、といっても、俺とタメか、もしかすると年下かもしれない。
かなりの美人だ。
そしてその露出度の高い水着がよく似合う。
「あ、」
そのお姉さんはいつの間にか俺の目の前から消えていた。
不思議だった。
俺は柵から身を乗り出し、下のウォータースライダーのゴールを見る。
さっきの男の子が出てきた。
そして、さっきのお姉さんがいつの間にか下にいた。
怖かったー?
も、もう一回乗ろ!
えー?怖いんじゃなかったのー?
も、もう一回!
わかったわかったー
下からそんな会話が聞こえてくる。
邪魔しちゃまずいな。
俺は階段を降り、もう一度屋台に向かった。
あの男の子がこの空間の主で、お姉さんの方が妄想なんだな。
しかしこの寒い時期にプールとは、よほど来たかったんだな。
プール全体に快い夕日が差し込む頃、空間は解体された。
男の子はなぜか少し寂しそうに帰っていった。
外に出ると、まだ午前中だった。
うわぁ1日終わった気でいたのに・・・
ま、帰るか。
ところが、その日はまだあった。
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