綱引きの第十三話
転移を繰り返して、辿り着いた場所は、教会の礼拝堂である。
目的とはここのことだ。
例の強化合宿のせいで、教会の重鎮という重鎮が全員出払ってしまっている。どんだけ盛んなのおっさん共とつっこみたくなるが、ひとまず置いておくとしよう。
俺は先程、テントに侵入する前の兵士を殲滅する段階で、兵士を一人だけ催眠しておいたのだ。その兵士に、「強化合宿のテントが
重鎮の重鎮が命の危機に立たされているわけだ。まあその時には既に俺が催眠しちゃってるわけだが、そんなこと教会の神官は知るわけがない。
となれば対
ここはリーン聖国であり、国教を掲げている。治安維持は神官騎士の仕事となっているのだが、国民すべてが敬虔な信徒という訳ではない。特にここレギンは辺境であり、実力主義の思想が強く、住人の信徒が占める割合は比較的低い。それ故に、治安維持において神官騎士の対抗勢力が存在する。
冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドに登録している神官は多く、逆に冒険者ギルドも素材を教会に浄化して貰っているため、その対立はさほど深くはない。だがそれぞれの組織を牛耳る上層部になると話は別で、結果として組織同士が対立している形になっている。
今までの
ここで神官騎士が
本来ならば物資が届き兵站が楽なレギン付近で作戦を立ててじっくりと待つのが、
辺境であるが故に、レギンの教会の神官で、戦いも回復も出来ない者はほとんどいない。逆に言えば最低限の警備を残し、ほぼ全ての人員が教会から出払うこととなる。
最優先は金庫だろう。次に重役の部屋などになるだろうか。何にせよ、特に盗まれて致命的となる物もなく、優先順位が低い礼拝堂は特に警備が薄くなる。
つまり、今がチャンス。
入り口に立った一人で立っていた警備は催眠しておいた。ここで手こずると面倒なことになっていたのだが、あっさりかかってくれてよかった。
教会の中を《探知》して数少ない人の位置を探り、《視の魔眼》の「鑑定」で加護を調べていく。
どうやら『神託』の加護持ちは居ないらしい。もし居たら催眠しておかなきゃならなかったところだ。ラッキー。
さて、これでこの礼拝堂に、誰の邪魔も──神ですら──無くなった。ここまで周到に用意してまで、俺が果たそうとする目的は一つ。
コツコツという靴底の床を叩く音を礼拝堂の円い天井に反響させながら、俺は主神、光の女神像へと歩み寄る。
丁寧に彫られた女神像は前に見たときと変わることなく鎮座されていた。そして俺の目的はその下にある、さして飾りたてられても居ない、おそらく教会関係者以外は良く存在も知らないくらい目立たない石。しかしその見た目とは裏腹に、金額が鑑定不能という端的に言ってヤバい石。
「聖光の石」。女神の力の媒介装置である。
その石を乱雑に掴み取ると、全力で《闇魔法》の「支配」をかけていく。
即座に抵抗を感じた。女神か何かが対抗してきたようだ。
女神の力の媒介装置ならば、それ自体に力を及ぼすことも当然可能だろう。想定内の事だ。問題ない。
事態は、俺の《闇魔法》の「支配」と、女神の支配力の綱引きの様相と化す。
力に抗い「支配」する感覚。ただの物を「支配」する時とは違う。
魔力を込めるのではなく、意志を込めるという、根本的に何かが違うものだ。慣れない感覚ではある。
だが、俺はシルフの精神世界で、多少の違いはあれど同じような経験をしている。全く意図した事態ではないが、いい練習にはなった。
あくまでここレギンに留まろうとした理由は、この聖光の石を支配するためだった。
聖光の石は、女神が情報収集するための媒介装置だった。その性質ならば、逆にハックする事で情報を得ることも可能ではないかと考えたのだ。ハッキングは、「支配」すればどうにかできると思った。
隠密と催眠が得意な俺にとって、より確実な状況を実現させるためには、ある程度人脈がある中、裏から事態を操り最適な形へ持って行く事が一番の近道だ。
実際、こうやって女神と仮想綱引きをやっている最中にも、誰も邪魔が出来ない状況となった。
『神託』の加護がある物がこの近くに居れば、SOSを発信できたかもしれないが、例え届いたとしてもこれほど離れていては何もかも遅い。
そういえば、隠密と催眠が得意と言ったが、影からの不意打ちや建築物の構造、障害の配置を一瞬で把握できる能力もある。
これらを考慮すると、暗殺者なんかとてもやりやすいのではないかと思えてくる。
まあ必要に駆られれば暗殺も是とするし、逆にやる必要が無ければ普通にやらないのだが。敵ならちゃんと敵対してから殺したい物だし、やはり向いてないのは向いてないな。
というか暗殺者というものが、大抵依頼という形で、つまり雇用者と被雇用者という関係を前提とする職業である以上、性に向いていないと言わざるを得ないな。
誰かの下につく? まっぴら御免だな。そんな自分を否定して、他者にもたれかかるような所行は。
とか色々考えていると、女神の力がふっと消える感覚がした。
クソ。逃げたか。
これ以上続けて情報を搾取されるより、保身を選んだというわけか。女神とやらも意気地がない。
いや、或いは長期戦を見込んでいるのか?
あちらが長期戦ならば、こちらもそう応じない理由はない。
爵位が上がることで予想される、爆発的な戦闘力のインフレーション。時が経てば経つほどに、俺の手札の量と質は高まっていき、状況がこちらに有利に傾いていく。
むしろ長期戦になるならば、願ったり叶ったりだ。
「女神様と対抗して競り勝ってしまうって、あんた……」
礼拝堂に鈴の転がるような声が響く。シルフが追いついてきたのか?
見回してもその姿は見受けられない。不可視化しているのか。
──「幻滅」
「シルフ。遅いぞ」
途中で女神側が逃げたとは言え、ある程度の情報を得ることは出来た。そしてある程度神のことを知っているシルフと、摺り合わせを行おうと思うのだ。
俺がシルフの姿を見破って視線をよこすと、彼女は苦そうに顔を歪めた。
「相変わらず何で不可視化してるのに見えるのよ」
チートのお陰です。はい。
「やっぱりあなたの能力、馬鹿げてるわね」
「精霊からのお墨付きか」
「精霊から見ても化け物よ」
でも、とシルフは続ける。
「魂に関しては化け物どころの騒ぎじゃないわね。なんで神様に勝てるのよ? しかも、他のこと考えてたでしょ?」
バレてたらしい。
まあ暗殺者云々考えていたときは、目が石を向いていなかっただろうから、バレバレではあるだろうが。
「何なのよ、あんた。正直底冷えする位怖いわ。正体が化け物でも驚かないわよ。見れば見るほど恐ろしい」
「何その噛めば噛むほど味がでる的な。いい男?」
「冗談言ってるんじゃないのだけど……」
シルフは呆れたようにため息をつく。
しかし、俺が怖いねぇ。何があるかなんて分からんし、正体とか言われても俺は俺だ。
何も無いと思うんだよなぁ。
『我が主の目的はぁぁ、終了したようだぁぁ』
「思いの外早かったですね。報告ありがとうございます」
アリーヤは、祈里からの伝言を伝えてきたフェンリルに感謝を述べた。
祈里とフェンリルは遠距離で意思疎通が可能なのだが、アリーヤは下僕という特殊な立場故か、その能力を使えない。
伝説の幻獣フェンリルを、まるで無線機のように扱っている現状をふと再認識し、アリーヤはそっと苦笑する。
単純な強さという点では、「絶斬黒太刀」をもってしても、おそらくアリーヤはフェンリルに及ばない。そもそも祈里でさえフェンリルのステータスを越えたのは最近であることをふまえると、当然のことではある。
だが現在、またおそらくこれからも、現場指揮を執るのはアリーヤとなる。彼女としては不本意では有るのだが、フェンリルが意見を譲ろうとしないのが原因であった。
フェンリル曰わく、自身には経験が足らず、祈里の足を引っ張る事となるという主旨を、間延びする声で述べていた。これに関して祈里は躊躇なく頷いたのである。フェンリルにとって、戦略また戦術的な視野、人間的な視野の欠如というものは未だ弱点として存在していたのである。
実際には、祈里がアリーヤの能力を高く評価していることも、確実に原因の一つではあるのだが。
アリーヤは眼下の光景を鋭く見やる。
茶番劇は、特に問題もなくトントン拍子で進んでいた。
祈里が出て行った後、テントの中の人間は少々乱れた兵装で虫の大群と対峙した。
祈里の眷族となった虫の魔物、「ナイトメアバグ」は、人間の膂力では全く傷つける事の出来ない強度を誇る。大群の進行を押しとどめることは出来ても、数を減らすことは中々出来ない。
英雄であるレイブンが、神具を使って魔動具を酷使し、節や腹などの防御が薄い部分を全力で攻撃して、ようやく通るほどだ。並みの神官騎士には倒すことなど出来るはずもない。
それ故に彼らは、メイスで吹き飛ばしたり、裏返して固定したりと、何とか遅滞戦闘を継続させるように方針を転換した。そしてその間に、レイブンが召喚者を探し、討ち取る計画である。と言っても、これも祈里の命令通りではあるのだが。
その後、教会から増援が到着する頃には、重鎮や女性神官騎士(つまり祈里の催眠を受けた人物)はほとんど死んでおり、召喚者とレイブンが一騎打ちをしているような状態となった。
召喚術士はレイブンに虫をけしかけようとしており、教会からの増援は慌ててこれを阻止。
結果、完全にレイブンと召喚術士の一騎打ちとなる。
召喚術士は一騎打ちなど全く専門外ではあるが、ステータスが魔人になったことにより底上げされており、あらゆる魔術を使ってレイブンと互角の勝負を繰り広げる。
対してその他の戦闘員は、ナイトメアバグを吹き飛ばして、何とか邪魔にならないように立ち回る。
状況が膠着したところで、フェンリルからの報告が入った、というのが現在までの大まかな流れであった。
「……正直もう少し早く決着がついてくれても良いんですけど……」
『そう命令できればなぁぁ』
「命令できるのはイノリだけですからね……。とりあえず着地点は相討ちになるように、催眠したらしいのですが」
後は一騎打ちの結末を待つだけ……なのだが、それまでアリーヤは、戦線を保たなければならない。
「……ちょっと左翼が薄くなりすぎてますかね。増援五お願いします」
アリーヤはフェンリルに丁寧な口調でありながら指示を行う。ナイトメアバグはあくまでも虫であり、アリーヤの指示を聞くほど知能が高くない。
そのため、虫の戦線を率いるために、虫の影の中に黒狼達を忍び込ませているのだ。影の中から噛んで、物理的に移動させればいいと言うことである。
『五はぁぁ、少ないのではないかぁぁ? せめて倍は欲しいがぁぁ』
そう問いかけつつも、フェンリルは既に黒狼達に伝言を伝えている。
「足りないでしょうね。でもそれで良いのです」
『どういうことだぁぁ』
「私達の存在に気づかせないためです」
一騎打ちをしている召喚術士は今、戦況を正しく判断できるだけの視点と余裕を持ち合わせていない。
その中で戦況に完璧に対応してしまえば、また別の指揮官が居ることを伝える羽目になってしまう。
「そのため、あえてムラを作り、虫が本能に任せて人を襲っているように見せかけます」
『……お主ぃぃ、我が主にぃぃ、考え方が似てきたなぁぁ』
「は?」
『平然とぉぉ、嘘を策に混ぜる所とかなぁぁ』
「……」
アリーヤは暫く黙り込み、考える。
否定する言葉は浮かばなかった。何より、平然と虐殺する側に立っていることが証拠とも言える。
彼女は苦笑混じりに呟いた。
「毒されてきているのかもしれませんね」
そしてそれを、あまり悪くないと思っているのも事実であった。色々考えた末、アリーヤは吹っ切れたとも言える。
結局それでも、祈里に対等に見られたいという思いと、祈里の支配から自由になるためには強くならなければならないという事実の板挟みに苛まれているのだが。
「……まあ未だにあの人が何を考えているかは分からなかったりするんですけど」
と言いつつ、不機嫌そうな視線を横に向けた。
その先には、一人の女性がうずくまっている。
「なんで『これ』がここにいるんですかね」
白い長髪、神官騎士の軽鎧に身を包んだ女性──祈里の師匠役であった、ファナティーク・ラセホスがそこにいた。
彼女の問い掛けは誰に向けたものでもなく、また答えを欲している訳でもなかった。そもそも答え自体は、祈里の口から直接聞いていた。
曰わく、「精神干渉魔法」が完全にかからず、そこに祈里が興味を持ったのだ。
似た事態を祈里は知っていた。
ライジングサン王国で共に召喚された勇者の内の一人、龍斗を催眠しようとした時も同じ現象が起こっていた。
「精神干渉魔法」による命令には絶対服従するのだが、自由意志が存在したままなのである。催眠にかけたあと自由意志を持たせたのとは違い、言わば半分だけ催眠にかかった状態なのだ。
祈里は「精神干渉魔法」への抵抗力は、その対象の精神状態に依存すると考えている。
これを前提とするならば、龍斗やファナティークは、本来「精神干渉魔法」に抵抗できるだけの精神をもっていながら、かけた瞬間は狼狽、あるいは自失状態にあり、表面上催眠にかかったのではないかと考えられた。
そんな彼らに祈里が興味を持つのは、彼の性質からすれば当然とも言える。
これ自体は、何となくではあるが、アリーヤも理解している。
それでも感情では納得できていないのは、アリーヤがファナティークに嫉妬しているのが理由の一つに挙げられる。
祈里に興味を持たれているという、ファナティークに対する
実際、祈里は彼女をここに置いていく時に、迷いなく「ファナティーク」と呼称していた。
そして何となくではあるが、このままファナティークを含めた三人で旅を行うことになるのでは無いか、という予感をアリーヤは覚え始めていた。
『アリーヤよぉぉ』
「どうしました?」
『決着が付いたようだぁぁ』
「やっとですか……。虫達が霧散するように見せかけて下さい」
召喚術士であるクリスが倒れたため、指揮系統を失ったナイトメアバグが散り散りに逃げていく……というシナリオである。
アリーヤは相討ちとなったクリスとレイブンを見やる。
アリーヤは、自身が目的のため、悪魔に魂を売ったクリスと、自身を重ねていた部分があった。
祈里ははっきりと否定したし、あっさりと催眠に負けた彼女と自分が全く同一であるとは、アリーヤも思っては居ない。だが同情しないかと言われれば別だった。
(催眠された状態とはいえ、仇の一人を最後の最後で倒せたわけですから、本望ですかね……?)
自分と倒れ伏すクリスを重ねて、考えている内に、倒れるレイブンが祈里に重なるように見えた。特にその二人には、共通点があるわけでも無いのだが。
(そんなことになって、私はのうのうと生きていられる?)
思考が堂々巡りを始め、そこでアリーヤは考えるのをやめた。あまりに考えても仕方がないことだ。
とにかく、アリーヤは場を収めるために、追加の命令を下すのであった。
「……やられた」
聖水の体をもつ水の女神は、憎々しげにそう呟いた。
「まさか乗っ取ってくるなんて」
下界監視装置の一つを、祈里に奪われたのだ。それと同時にいくつかの情報を奪われた。
水の女神は机に突っ伏し、ため息をつく。
「何て失態……主神様にどう報告すれば……」
「別に怒りはせんわ」
虚空に呟いた問いに、すぐ近くから答える声があった。
水の女神はすぐに姿勢を直し、声の元に向き直った。
「しゅ、主神様!? 何故ここに!?」
「何やら異常を感じての。ま、何が起こったかは大体把握しておる」
「す、すみません! 聖光の石どころか、情報すら与えてしまう失態を!」
「じゃから責めはせんと言っておろうが」
そう主神は宥めたあと、机の上にあるウィンドウのような物の先を睨んだ。
「……またあやつか」
「ええ。八つの世界因子を持つ、例の魔族です」
このウィンドウは、下界と神界をつなぐ物であり、データベースであるとも言える。元々神界にある、下界を覗くための丸池の複製のような物であった。
「風の女神も嘆いておったわ。お気に入りの精霊を盗られたとな」
「……まさか精霊が裏切りを!?」
神への背信とも言える行為であり、名も知らぬ精霊に怒りを向ける水の女神。
「そうであれば良かったのじゃがな。精霊は契約したのではなく、支配を受けたようじゃ」
「それは……!」
契約であるならば、あくまでも神の支配下での出来事であり、精霊が神の下にあることには変わらない。
だが支配されたという事は、神から支配権限を奪ったに等しい行為だ。
「精霊一体奪われたところで何か出来るとも思わんから、実害は余りないと見ていいのじゃ。問題は……」
「神の支配を超えた力を持っていること、ですか」
「お前が聖光の石を奪われたのも当然じゃな」
だが期待に応えられなかったことには変わりない。水の女神は悔しさに顔を歪ませる。
「では、次はどのように?」
「精霊でも神でも、奴に精神力では決定打を打てん。なら肉体を滅すれば良いのじゃ。……魔族を当てる」
「なるほど……魔族の力を持ってすれば……」
「問題は奴の得体の知れぬ能力の事じゃな。それ如何によっては魔族であっても足を掬われかねんのじゃ」
「それであれば、先程、奴から幾つか情報を盗みました」
「何!? 本当か!」
聖光の石の支配を断ち切った瞬間、水の女神は僅かではあるが、祈里の魂の情報を盗み見ていたのだ。
「私にはそれが限界でした。申し訳ありません」
「いや、十分じゃ。水の女神よ。情報があるのと無いのとでは確度が違う」
主神は口元に笑みを浮かべて、画面を見つめながら呟いた。
「次こそ奴を殺してやろうぞ。この世界はわしらのものじゃ。好きにはさせん」
「盗んだ情報は、大体正確って事かね」
「多分大丈夫よ。私の記憶で否定する証拠は無いわ」
シルフと情報を摺り合わせる。シルフが神の情報を全て知っているわけではないが、辻褄が合わなければダミーだと判断できる。
幾つか検証してみたが、どうもダミーではなく確度の高い情報のようだ。さすがに神も、あの綱引きの合間にダミーを用意できるほどの余裕はなかったらしい。
「でも、まさか六神が本当の神じゃないとはね……」
「まあ今はこの世界を管理しているわけだから、神といっても良いかも知れんが」
この世界には、光の女神、闇の女神、火の女神、水の女神、風の女神、土の女神の六柱の女神がいる。
それぞれが一つの種族を受け持っており、光の女神は人間、闇の女神は魔族、火の女神はドワーフ、水の女神は竜人、風の女神はエルフ、土の女神は獣人からそれぞれ主神として崇められている。
つまり全ての種族の見解を鑑みると、六柱の女神には序列がなく、全員等しく神である、と言えるのだ。そして全ての種族は一切の関わりを持つことなく、全てが全て敵対している。
では女神もそうなのかと言えば違う。六柱の女神は敵対している訳ではなく、光の女神を主神として他の五柱が従っているらしい。
この時点で言えることは、全ての種族が敵対し合っている現状は、女神達が仕向けたことだということだ。この辺は魔王に聞いた話と違いはない。
光の女神をトップとして、火の女神は世界の守護を、水の女神は世界の監視を、風の女神は魔法の管理を、土の女神は自然の管理を、闇の女神は破壊を司るように分担しているらしい。この辺はトップの精霊ならば知っている話で、シルフも肯定していた。
で、こっからが精霊も魔王も知らなかった話。
この世界が始まる当初、世界の神は一人だけだったらしいのだ。今の六柱の女神は、六種族を受け持つ神の眷属であり、精霊に近い存在だったようだ。
かなり昔、今の女神が反乱を起こし、騙すか何かして当初の神を封印し、世界を自分たちの物にしたらしい。
あくまで精霊のようなものでしかなかった彼女達に、世界を支配するような力はなかった。そのため彼女達は、封印した神から力を搾取し、流用することで世界の支配を行ってきたらしい。
世界の神なら、好きなように下界を見下ろすことも可能に思えるのに、わざわざ聖光の石みたいな装置を使って監視していたのは、その辺のチグハグさから来ているってわけだ。
「実際に戦うとなれば、今のステータスでもどうなるか分からんが……、神相手でも将来的には何とかなる可能性は高くなった」
世界を支配しているから、俺の攻撃は全て防がれ相手の攻撃は全部通るみたいな、鬼畜ステージも覚悟していたわけだが、神の力を流用しているような歪な奴らならそうも行かないだろう。
多分ステータスとスキルでごり押せるはずだ。
世界を我が物顔で管理し、種族同士を敵対させている事も、俺の知ったことではないし全然構わない。
だがこの世界に居ようと、俺は俺だ。
「世界の神だか知らんが、好きにやらせてもらうさ」
どこに向けたわけでもなく、呟いた。
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