夏に出来た癖

御喜楽亭良い蘭

中二の夏の終わり 僕はクラスのみんなと葬式に出席している 

同級生が死んだ 彼の名をBとする 

葬式なんてのはテレビや映画では観たことがあるが実際に見る ましてや出席することなど初めてだ

僕は悲しいふりをして神妙な面持ちで下を向いているがチラチラ周りを見ている


Bの母親が泣いている すすり泣くというのはこのことだろう Bの父親は気丈に涙をこらえている クラスメイトの中からも嗚咽が漏れている


クラスの中にも泣いているのがいるんだ 

Bの為に Bがいなくなったから悲しい奴がいるんだ


Bが死んだから泣くやつがいるんだ


話は小5の夏にさかのぼる

Bとは今でこそ仲がいい いや良かったが小学生の頃はBとその取り巻きに虐められていた 小学生ながらにプライドが高かった僕が鼻もちならなかったのだろう

でも不登校にはならず身体を大きくして体力を付けるため僕は水泳を始めた 

それでもいじめはなくならなかった


ある日おそらく知的障害のクラスの女子の者であろう水着がプールのフェンスに干してあった それをBは放課後教室に持ってきて僕に着るように強要した

もちろん断った その教室には女子もいたし本当に嫌だった 

嫌がり断り続けたがBとその取り巻きの蹴りは止むことはなかった 

背中や身体にあざが出来ると両親にいじめられているのがばれる それが嫌だった僕は仕方なく それを着た 


恥ずかしかった ここから消えてしまいたかった BとBの取り巻きと女子たちは笑っていた 僕は泣きそうだった その理由は恥ずかしかったからだけじゃない

男子である僕が女子のスクール水着を着ることで そしてそれをみんなに見られることで 蔑んだ目で見られることで 


勃起してしまった


それと同時にBを心の底から恨んだ 今までいじめられていたことも恨みに加わっていくのが心の中でわかった 加速するのがわかった 人間としての理性 人を許容するという感情が欠落し 恨み 殺してしまいたいという感情が生まれるのがわかった



それでも僕は不登校にはならなかった むしろそれをばねにして今まで以上に水泳に打ち込んだ

そして小学6年の夏 僕は県の大会で優勝した それがきっかけで僕のスクールカーストは上位になりBとも仲良くなりつるむようになった


中学に上がりBと悪さもした と言ってもよくあるヤンキー漫画のようなガチな奴じゃなくて せいぜいが万引き 煙草や酒なんかには手を出さなかった

僕が水泳部に入り真面目に部活をしていたというのもある



中一の夏 つまり去年の夏の始め 街のはずれの湖のほとりで事件が起きた 

覚醒剤中毒者がホームレスをナイフで刺し殺し湖に捨てたであろう事件が起きた

「あろう」と言うのはその覚醒剤中毒者はその後自分の喉をナイフで刺し湖に落ちて自殺した そして警察の捜査で覚醒剤中毒者の遺体は発見されたがホームレスの遺体は発見されていない 現場にあった血液の量からホームレスは湖に落ちてはいないとしても そう遠くへは行けないはずだと新聞の地方欄に載っていた


そしてクラスで いや学校全体でオカルトブームがやってきた

その湖のほとりで夜中になると「クチャ クチャ」と刃物で肉を刺す音が響くとか男のうめき声が聞こえるとか 「苦しい・・・殺してくれ・・・」とはっきり聞いたというものまで出てきた


当然Bは行ってみようと言いだした 僕は寝不足だったが付き合うことにした

何人か誘ったが結局来たのはB一人 夜一緒に湖のほとりに行くことになった

何も起きるわけないのに


その現場に着いた もう捜査は打ち切られてしばらく経つ 

ホームレスが住んでいたであろうテントは撤去されそのあとには大きな木が立っている

そしてそこには殺されたのはホームレスなのに噂がそうさせたのであろう供養の花があった ワンカップとジュースもあった


ジュースは飲もうかと思ったがさすがにやめた


こんなところかと思い もう帰ろうかとしたときBがそこにあったワンカップを開けて一口飲んだ そしてまずいと言って残りは捨てていた


そして家に帰った


供養の花なんかがあるってことは噂は街にまで広がっているのであろう 事件の前は釣りに来る人もいたが もう街の人も近寄らなくなっていた

僕の寝不足も解消した


そして一年が過ぎ僕たちは中二になった


その事件のことを口にするものは少なくなったが相変わらずその場所には近寄るものさえいなかった


僕は相変わらず部活 水泳に打ち込み時々Bと悪さをしたりしていた 

そして夏が近づく


中二の夏と言えば 健康な男子なら性欲が高まる 高まりすぎてどうすればいいかわからなくなる 今まで感じたことのない性的感情を探し始める


そんな日常が続いた夏休み前のある日 Bはこの夏引退する水泳部のC先輩の水着を盗んで来いと僕に言った もちろん断った


ちなみにC先輩は男子からはあこがれの的 引退により水着姿が見られなくなることを悔やむ声がやまなかった 僕もその一人ではあった


断ったがBはしつこかった その時僕は感じた というより思い出した

あの時のBの目 僕に盗みを強要するときの目 僕に迫る目


僕をいじめていた時の目だった


忘れていた感情が溢れてくる 抑えようとすると噴き出してくる 

もう自分でコントロールできなかった


僕はBの頼みを聞いた BはいつものBに戻った 


そしてBは盗んできた水着はあの湖のあの木の下に置いておけと言っていた

あとで取りに行くのだろう


そして僕は水泳部の更衣室から盗んできたC先輩の水着と自分の水着を持ってあの場所に向かった


次の日Bはその場所で遺体で見つかった 死因は溺死 服を着たまま湖に入りおぼれたらしい

このことが告げられた学年集会は軽くパニックになった ホームレスの呪いだと叫ぶ男子 悲鳴を上げる女子 貧血で倒れるもの しゃがみこんで立ち上がれなくなるもの 


そして噂が生まれる Bは呪い殺された 


無理もない場所が場所だ そういえばBは去年僕とその現場に行ったことを自慢げにみんなに話していた 酒を飲んだことも話していた 一口飲んで捨てたくせに一本飲んだと言っていた

みんなの間ではそれが原因だと言うことになっている 


そしてクラスで葬式に出席することになった 初めは希望者のみだったが結局全員で参加することになった


そして今に至り話はBの葬式に戻る


まだお経は続いている 飽きてきた 


だけどあることのおかげでこの退屈な状況も楽しめる 

あのときに覚えた感覚


僕は今 制服の下にC先輩の水着を着て勃起している




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夏に出来た癖 御喜楽亭良い蘭 @okirakutei-yoiran

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