凡人が魔法と出会ったとき

@gura1107

第1話 起

人生は歴史と同じで同じようなことが繰り返されると言うが果たして本当にそうだろうか?そもそもそんなことは言わないかもしれないが、おれは、同じことを、繰り返していると思う。小学校も中学校も高校もそして、大学も結局同じことを、繰り返しているように感じた。そんな退屈で気だるい日々に飽き飽きしている。それは、人がジェットコースターやお化け屋敷など、色々な種類の刺激を求めていることからも言えるだろう。日常はそう簡単には刺激のある楽しく、面白い非日常には変わってくない。変わったとして、それはひと時であり、アニメや漫画のように、急にファンタジーを帯びることはないだろう。だが、もし、自分の暮らしている日常が、唐突に、なんの前触れもなく、アニメや漫画のような非日常に変わったとしたら・・・。そんな、急にファンタジーを帯びる非日常を過ごすこととなった主人公のお話。


おれの名前は高見英利たかみひでとし大学二年生の二十歳。特にこれといった、特技がない。キャラはヤベェー奴。周りから異常者だの、きち○いだの、と、呼ばれている。大学ではそれなりに有名人で、色々とやらかしていることも多い。頭の良さは普通。追い詰められた時の集中力はすごい。高校受験の際、中三の始めで偏差値四十三だったのが先生や親に、高校は入れないよ、と言われて猛勉強。その成果で偏差値が六十まで上がった。が、基本凡人なのでそれ以上は上がらなかった。大学受験もだいたい同じような流れで希望の大学に合格した。(実話)。大学での生活には不満だらけで、最初はこんなに退屈だと思ってなかった。もっと楽しいものだと思ってたら、全然楽しくない。面白いことの一つも起きない。一年生の時に知った。外から見るのと、内側から見るのとではわけが違うということを。オープンキャンパスのときや文化祭のときはとても楽しい大学に見えたのに、いざ入って見ると、そこまで楽しくない。それどころか、レポート課題に追われる始末。辛い(切実)。一時期は、学校を止めることさえ考えたが、流石にそれはしなかった。「よう、異常者(ひでとし)。相変わらず、つまらない顔してるなぁ。」今、おれに話しかけてきたのが宮城英里みやぎえいり割としっかりしてる奴で、イケメン。頭も良く、運動神経もいい。バスケサークルに入っている。バスケをやってる姿は、まさに鬼に金棒状態。イケメンがバスケ。この組み合わせで、女子の心を撃ち抜いている。男子は皆こいつの心の臓を撃ち抜いてやりたいと思っているだろうと思ったら、そんなこと考えてるのはおれだけで、男子とも付き合いがいい。だが、こいつには弱点がある。実はこいつ、屈指のアニメ好き。いわゆるアニオタだ。前に一度、こいつの部屋に行ったことがあるのだが、そのとき、彼の部屋は半痛部屋と化していた。流石にちょっと、引いた。おれもかなりアニオタのつもりだったのだが、フィギュアや、抱き枕カバーなどなど、多くのグッズが置いてあったのを覚えている。が、しかし、こいつは同時にシスコンでもあった。なんでも、妹に自室を、見られたらしく、そのときに、妹に引かれたらしい。その影響か、最近行ったときには綺麗さっぱりオタグッズがなくなっていた。だが、ただロッカーに閉まっただけなので、捨ててはいないらしい。この話を聞いたとき、正直、おれは、ザマァ(笑笑)と内心一人で笑っていた。「おい、せめて英利(異常者)にしろ。お前のそれ、おれの名前が異常者になっちゃってるじゃねぇか。」「ハハ、悪い悪い。気をつけるよ。異常者。」「学校のみんなにバラすぞ。オタク。」「すみません許してくださいなんでもしますから。」「ん?今なんでもって。」「さて、ところでなんだが、丁度昼だし何か食べに行かないか?」「露骨に話逸らしたな。まぁいいが。いいぜ、何食べる?」「ラーメンとかにしようぜ。この辺うまいラーメン屋あるんだよ。」「いいね。行くか。」さて、おれたちが、昼飯を食べている間におれたちの通っている大学の説明をしよう。

おれたちの通っている大学は雪ノ野大学という大学で、最近作られたばかりの大学だ。最近作られたばかりというだけあって、施設がすごい。大学内は綺麗で一貫校並みの広さがある。屋上含めた5階建てで、中にはプールなんかもあったりする。図書館も普通の大学と比べ物にならないくらい広い。極め付けは、サークルや部活にそれぞれ一つずつ専用の部室のようなものが設けられる。日替わりとかではなく、毎日活動できるわけだ。正直なところ、そんなに広くする必要が、どこにあったのか、聞きたくなるくらいの広さだ。

次は住んでいる地域だが、この地域自体には特に何もない。が、駅が近くにあったり、少し行けば、すぐ遊ぶ場所があったりと何かと便利なところだ。便利という点を除いて説明するとなにもないと説明するしかないのだが、便利さだけはピカイチにあるところだとおれは思う。さて、そろそろ昼食が食べ終わるのでストーリーに戻ろう。

「普通にうまいラーメンやった。」「だろぉ?てか、普通にうまいラーメン以外だと思ってたのか?」「あぁ、睡眠薬とか、めっちゃ辛い奴とか、もしかしたら毒薬とか、入ってるのかと。」「流石にそんなのうちじゃ出さないよ。」と、店員が言ってきた。そりゃそうだろうな。

昼食を終え、俺たちは学校に戻ってきた。「えいり、お前、今日、午後の講習ある?」「いや、ないよ。」「ならどっか遊びに行かね?バイト五時からだからそれまで暇でね。」「いいけど、どこで遊ぶんだ?あんまり遠い所はめんどいからやだよ。」「バイトあるんだからそんな遠い所は行かねぇーよ。」「大体、遊ぶ前にお前、レポートやったのか?」「え?レポート?」「いや、化学のレポート出てただろ。その反応だとやってなさそうだな。」「まぁ、待て。まだ、提出期限によっては慌てなくて済む。」「今日が確か木曜日だから、明日に提出だな。」「あ、明日、だと。」無理ゲーすぐる。しかも、今日に限ってバイトがあるだと。自分一人でやっては到底間に合わない。ならば、取るべき手段は一つ。「あのぉ、えいりさん。レポートをお見せいただけませんか。」「やだ。」「なぜだ!普段なら写させてくれるじゃないか⁉︎なぜ、今回に限ってダメなんだ。」「俺もやってねぇんだよ!見せるもなにも、俺のレポート用紙は、泉から出てきたのかと疑うほど綺麗な状態なんだよ。」「なん、、だと。そんな、友達だと思ってたのに。」「お前は友達をなんだと思ってるんだ。」「レポートを見せてくれる良い人。」「俺とお前の友情はレポート用紙並みに薄いな。まぁいい。俺にはレポートを見せてくれる人は、この学校にいくらでもいる。俺はそいつらに見せてもらうよ。」「おぉ、なら俺も一緒に、、。」「え、やだ。そこで苦しんでろ、ぼっち。」と、言い残し、えいりはいってしまった。あの裏切り者め。しかも、俺をぼっちだと?本物のデブにデブって言ってはいけない法則を知らんのか奴は。本当のことを言われるのが、一番キツイんだということを知りやがれ。グスン。と、泣いてる暇はない。えいりが頼れなくなった以上、誰か他の人を探さねば。取り敢えずNINEで手当たり次第に聞いてみた。

ここで補足おば。NINEとはSNSアプリで、グループなども作れたり、個人でチャットを通し会話できる某SNSアプリとパクリスペクトしたものである。以上。補足終了。

手当たり次第に聞いてみた所、返信が返ってきたのはたったの五名。そのうち五名が、俺へのざまぁメッセージだった。グループでも聞いてみた。が、ダメ。返信無し。泣きそう。もうダメダァ、おしまいだ。と、思っていたそのとき!女神が現れた。「私で良ければ、レポート、見せてあげようか?」そう、俺に声を掛けてくれたのは、河井恵かわいめぐみさんだった。恵さんが俺に恵みを与えてくれるだと。

河井恵。この学校の女神。頭も運動神経も良く、性格もいい。常に静かで近寄り難い雰囲気を放っているが、話してみると、話しやすい人。どっかのえいりとかいう残念系イケメンと違ってオタクでもない。そして何よりもぉぉぉぉぉ、かわいい。顔立ちが少し幼く、肌が白い。不健康的な白さではなく、日焼け止めとかでカバーして保っている白さが、少し幼い顔立ちにマッチしている。身長は大学生の身長の平均より少し低いくらい。低すぎたら、ただの大学生幼女だが、少し低いという、幼過ぎず、大人び過ぎず、まさに理想の身長。胸は普通よりやや小さい。身体つきは、細い。が、なぜか運動神経がすごい。彼女は、硬式テニスをやっているのだが、無双しているところしか、見たことがない。因みに、彼女のいる硬式テニス部だが、彼女見たさに、多くの男子が見学をしている。まぁ、そろそろ彼女についての説明は終えて、ストーリーに戻ろう。

「え?いいの?ほんとに?でも、なんで俺に?ほとんど初対面だよね?」当然だが、異常者だの言われてる俺は、彼女と話したことがない。「いや、その、NINEみて、困ってるみたいだったから、私のレポートじゃ、いや?」「いやいや、とんでもない。ただ、話したこともない俺になんで見せてくれるんだろうって思っただけ。気を悪くさせたなら謝るよ。」「いや、大丈夫だよ。それより、五時からバイトがあるんだよね。だったら私の早く写しちゃった方がいいよ。」「うん、ありがとう。今度、お礼に何か奢るよ。」あれ?俺バイトがあるなんて話したかなぁ?まぁいいか、きっと、どこかで話してたのを、覚えてないだけなのだろう。

そのときは、そう思っていた。しかし、今思うと、あれは、俺をこの事件に関わらせるために、俺のことについて調べたバイトのことが、口に出ちゃったのだろうと思う。

と、心の中で適当な伏線を張ってみたが、この伏線が回収されることがあるのだろうか。そもそも、心の中で唱えただけのフラグが回収なんてされるのだろうか。まぁ、バイトのことは、多分、今日、五時からバイトあるから、お願い見せて、と、多くの人に頼みまくってたのを小耳に挟んだとか、そんなんだろう。

「ありがとう。おかげで、レポートを終わらせられたよ。」レポートを写し終えたので、帰ろうと俺たちは門の前に来ていた。「いえいえ、困ってるときはお互い様だから。」「さっき言った通り、お礼に何か奢るよ。」「いいよ、そんなの。気にしないで。それより、バイト。もう後三十分しかないよ。」「本当だ。もう行かなきゃ。本当にありがとう。また明日。」門を出る途中と恵さんと話している途中、終始、男子からの視線、いや、殺気が凄まじかった。あぁ、俺明日殺されるのかな。

俺はコンビニでバイトをしている。「おーい、ひで。夕方の品出しやってくれ。」今話しかけて来たのは俺がバイトをしているコンビニの店長。ひでというのは俺のあだ名だ。困ったときの茶番要員で、今、三十代後半くらいのおっさんだ。自分の人生の武勇伝をたまに聞かせてくるのだが、どれもこれも、本当なのか、嘘なのか、微妙なラインの話で、俺は基本疑うことにしているが、話自体は面白い。

「はーい、わかりました。」と俺は夕方の品出しを始めた。

「お疲れ様でしたー。」バイトが終わり、帰る途中に、ふと、星でもみたくなったのか、近くの児童館にある、屋上に立ち寄った。空は割と晴れていたが、流石は都会。星なんて、ほとんど見れられなかった。諦めて帰ろうと思い、屋上から地上まで降りた。

ここからが、俺と魔法と呼ばれる特殊な力とそれを操る少女との出会い。あの時、俺が屋上に立ち寄ろうと考えなければ、この出会いはなかったのだろう。この事件に巻き込まれることも。退屈で、どうに刺激の足らない日常から、ファンタジーな日常に変わることもなかったのだろう。これが、起承転結でいう、「起」にあたる部分である。

屋上から地上まで降りて来て、家に帰ろうとしたとき、俺は、目にした。小さい少女が、不気味な化物を倒しているところを。アニメなどでみる、魔法らしきものも操り、化物を退治していた。化物は、少女に倒された後、消滅した。化物の体から光が発生し、光が収まると化物は、光の粒となって消滅したのだ。そんな光景を目の当たりにした俺は、顎関節症になるんじゃないかと、思われるくらい口を開き、とても興奮していた。そのため、冷静な判断が出来なかったのだろう。冷静になるより先に、好奇心が爆発した。恐怖は、あまりなかった。もし、化物が、血を出して、破裂したり、バラバラになったりなど、グロテスクな消え方をしたら、恐怖を抱いただろうが、そんなグロテスクな事は起こらなかったため、目の前にいる少女に対し、怖いと思う事はなかった。ただ、目の前にいる少女が何をしていたのか、何者なのか、聞いてみたくて仕方がない。好奇心は、収まることを知らず、遂には、少女の前に出て行った。「なぁ、君は、さっき何をしていたんだ?俺は警察とかではない。ただ、君が、化物を退治しているのを見て、何をしていたのか、気になって仕方ないから質問しているだけだ。」と、羅生門の下人のように、好奇心に動かされて、質問してみた。あの物語とは、少し、いや、かなり状況や心情が異なるが、好奇心に動かされたという例えには、丁度良いだろうと思って使っただけだ。ともかく、俺は質問してみた。すると、少女は、「・・・お兄さん。いつからそこにいたのですか?」質問したのはこちらなのに対し、質問で返してきたので、とあるセリフを言ってみたかったが、その気持ちをグッと堪え、答えることにした。「君が、化物と対峙しているところから、化物が消えるまでだけど。」そう答えると、少女は「つまり、最初から見ていたわけですね。すみませんが、目撃者の記憶は消すように言われているので、今、見ていた記憶を消させてもらいます。」「え、ちょ、何を言って。」目の前が真っ暗になった。

気がつくと、俺は、児童館の前にいた。何をしていたのだろうか、おれは。全く思い出せない。まぁ、直前までやってたことが、全く思い出せないなんてこと、よくあることだと思い、気に留めないことにした。しかし、先ほどまで、俺は何かを見て興奮状態にあって、しかも、見たものというのが、何やら不思議な、まるで、魔法のようなものだった気がする。まぁ、多分、気のせいだろう。きっと、妄想だったのだろう。妄想と現実の区別がつかなくなるなんて、よくあることだ。いや、ないな。自分自身で、即答するくらいだから、ありえないな。じゃあ、俺は一体、ここで何を見て、何をしていたんだ?まるで、記憶でも消されたような感覚だった。まぁ、実際に消されているのだが、当時の俺はそんな事は、知る由もない。不思議な感覚に襲われながらも、俺は家に帰ることにした。

次の日の朝。昨日のことが忘れられない。気になって仕方がない。昨日の夜も、ずっと気になっていた。だからだろうか。もしくは、寝ぼけているのだろうか。時計の針が九時を指しているように見えるのは。いや、寝ぼけているわけではない。頭ではわかっているのだ。今は、朝の九時で、何を頑張っても、学校に遅刻が、確定していることを。ゆっくりとベッドから立とうと、した。したのだが、どうせ遅刻するなら、急いで行かなくても、良いのではないか?急いで行って、疲れたところで、疲れた状態では、集中して講習を受けられないだろうし、どっちにしろ、遅刻は遅刻だ。結果は変わらない。なら、ここで二度寝をしても、結局、責められるなら、結果は同じ。よし、寝よう。再び目を覚ましたのは、午前十一時だった。なぜ、二度寝などしたのか、俺は、ひどく後悔しながら、全力ダッシュで、学校へ向かった。

学校へ着き、遅刻した経緯を話した。滅茶滅茶怒られる。と、思っていたら、大学は、高校よりも適当で、全く怒られなかった。いや、むしろ呆れて、怒ることすら諦めているようにみてたのは、きっと気のせいだろう。俺は、まだ、見捨てられてない。そう言い聞かせた。このことを、えいりが、聞いたら、どれだけ笑われるだろうか。って、あれ?えいりが、教室にいない。えいりが、今日学校に来ているかどうかを、同じ講習を受けてる奴に聞いてみた。「なぁ、今日、えいり来てないのか?」「うん?あぁ、英利か、今日は来てないよ。」「え、まじで?あいつ学校だけは、真面目に行っているのに。休むなんて珍しいな。」「そうなんだよ。女子のファンクラブの奴らも知らないみたいだし、本当どうしたんだろうね。」「待て、女子のファンクラブってなんだ?あいつのか?」「え?そうだよ。知らないの?」「し、知らなかった。」ファンクラブだと?どんだけ、人気者なんだ、あいつ。そのファンクラブの連中に、えいりが、滅茶滅茶オタクだということを言ったら、どうなるだろうか。「まず、英利が殺されるね。信じてもらえないどころじゃないと思う。」「こ、こいつ、思考を読みやがった。」「何年一緒にいると思ってるの?とゆうか、本気でそんなこと考えていたのか。」説明が、まだ、だった。さっきから、俺と話しているこの子は、宮野姫みやのひめ俺の幼馴染で、中学まで、一緒だったが、高校では、別々になり、大学で、再び一緒になった。大学一年生のとき、えいりとも、知り合い。それから三人で、話をするようになった。身長は小さく、顔立ちも幼い。性格もやんちゃで生意気な感じ。まさに、大学生の小学生。合法ロリだ。「ちょっと、私の説明酷くない?」「実際、その通りなんだからし仕方ないだろ。」「そうだけど、恵ちゃんとえらい差がない?」「そうでもないよ、絶対。」「本当に?」「きっとそうだよ!大丈夫差なんて無いよ。」「私の目を見て。」「だ、多分、無いから大丈夫だって。」「最初は、絶対だったのが、最終的にきっとに変わってるのはなぜ?」「あ、あれ?そうだっけなぁ(震え声)。」「まぁ、いいわ。それじゃ、私、次の講習いかなきゃだから、じゃあね。」「おう、ありがとう。じゃあね。」さて、えいりは今日学校にいないらしい。「あ、ちょっと待って!ファンクラブに入っている人、誰でもいいから知ってる?」「え?あぁ、硬式テニスの子たちなら、全員入ってると思うよ。」「ありがとう。じゃ、今度こそ、じゃあね。」「うん、またねー。」ふぅ。なるほど硬式テニスの子か。さて、行って言ってくるか。「おーい、君たち、えいりのファンクラブの人?」「そうですけど、何か用ですか?」「実は、えいりって、すげぇ、アニオタなんだぜ。」そう言った後から、俺の意識は途絶えた。

気がつくと見覚えのない真っ白な天井が広がっていた。たぶん、保健室だろう。「本当に言うなんて、バガなことするなぁ。英利は。」隣には姫がいた。「あれ?俺どうなって。」「ファンクラブの子たちが、英利のことを、ボコボコに、殴ってたから、取り敢えず、止めさせて、保健室まで連れて来たの。」そうか、なるほど。つまり、俺は、地雷を踏み抜いて、そのまま怪我を負ったということか。「しかし、あんなに怒るなんて、普通思わないでしょ。」「まぁ、ちょっとやりすぎだと思うけど、でも、地雷があると知ってて、好奇心で踏みに行く奴が悪いと思うよ。」そらゃそうだ。全くの正論だ。「取り敢えず、あの子たちに謝りに行ってきなよ。」「そうだな。行ってくるわ。」「じゃあ、私帰るから。」「俺の目がさめるまで、ずっと一緒にいてくれたのか?」「いや。普通に部活終わりに様子見に来たら、たまたま、英利が目を覚ましただけだよ。」そこは、嘘でもいいから、ずっと一緒にいた、と、言って欲しかった。「じゃあ、またねー。」「おうじゃあな。」俺も謝ったら帰るか。バイトもあることだしな。謝る時にまた、殴られなきゃいいけど。そんな俺の思いとは裏腹に、謝るときも、結局、殴られるのであった。

夜七時くらい。「どうしたの?その怪我。」と、店長に聞かれた。「いやー、ちょっと、地雷原に自分から足を踏み入れちゃって。」「大丈夫?」「俺は大丈夫ですけど、俺の学校での青春は大丈夫ではないです。」俺は店長に学校での事を話した。「それは、自業自得だね。庇うに庇えないし、フォローもできないね。」と、冷たい一言を言われた。泣きそう。「まぁ、でも、反省はしてるみたいだし、次からはやらないように気をつけなよ。好奇心は身を滅ぼすともいうしね。」「はい。身をもって、身を滅ぼして来たので、その言葉の意味が、心にしみます。」「あ、もう君あがっていいよ。」「あ、わかりました。」俺はあがる準備をした。準備が終わると「お疲れ様でしたー。」と、言って、家に帰ることにした。

家に帰る途中。なにやらつけられてる気がする。俺相手にストーカーか?いやそれはないな。それじゃあ、学校で怒らせた女子たちが復讐にでも来たのか?いや、俺ごときにそこまでするほど、彼女らは、暇じゃないだろう。じゃあ、俺の気のせいか。と、最初は思っていたのだが。やっぱりつけられてる。顔ははっきりとは見えないが、明らかに視線を感じる。こういう時は、まっすぐ自分の家には帰らない方が良いと聞いたことがある。だから、俺はまっすぐ家には帰らなかった。友達の家にでも、泊めてもらおうと思った、が、しかし、英利には友達がいなかった!悲しい。さて、どうしようか。アニメの主人公のように、誰だ!俺をつけてるやつは!とっくに気づいてるぜ!なんて、厨二じみたセリフを成人男性が言えるわけがない。そもそも、たまたま、道が同じだけの一般人だったら、明日から表を歩けなくなる。なら、どうしようか。そうだ。幸い近くには自販機がある。しかも、俺をつけていると思われる人の近くに設置してある。自販機で飲み物を買うフリをして、顔を確認しよう。そう思い、自販機に近付いて、顔を確認した。そこまでは良かった。正しい判断だと思う。相手が人なら。俺が見た姿は人と呼ぶには無理がある、子供が見たら、絶叫する前に失禁して倒れるほどの見た目の化物だった。

さて、どうしようか。化物は見ているだけで特に襲っては来ないのだが、最悪なことに、目を合わせてしまった。目を合わせた事で石になったり、意識を乗っ取られたりすることはなかったが、なんというか、気まずいというか、アニメとかなら、普通すぐに襲ってくるはずだ。それで主人公が力に目覚めたり、誰かが助けに来てくれたり、様々なパターンがある。しかし、この化物は襲って来ない。というか、俺に対して、一切害をなさない。一体これはどういうことだろうか。取り敢えず挨拶をしたら、何か返事が返ってくるかもしれい。そう思い、俺は声をかけた。「こ、こんばんわ。(震え声)。」反応なし。心なしか頷いたような気もするが、多分、いや、絶対に気のせいだろう。次に俺は、俺のことをつけていたのか聞いてみた。「あ、あの〜、俺のことつけてました?」反応はあった。というか、襲って来た。大きな雄叫びをあげて、襲って来た。普通なら怖がり、逃げるが、英利は違った。先ほど、好奇心は身を滅ぼす、と、いうことを学んだはずなのに、あろうことか、好奇心に逆らえず、化物に自分から、近づいていったのだ!流石、異常者と呼ばれるだけはある。好奇心って怖い。取り敢えず、殴ってみた。反応、なし。次は蹴ってみた。反応、なし。化物のターン。俺を担いでどこかへ連れ去ろうとした。「え、ちょ、おま。は、離せ。や、やめ。」と、適当に抵抗してみたが、お父さんが、子供を抱えて、いるとき、子供の抵抗は虚しく終わる。そんな感じに、化物に抱えられている俺も、抵抗は虚しく終わった。あぁ、俺はこれからバッタにでもされるのだろうか。そんなことを考えていると、急に体が、宙に浮いた。浮いたのは一瞬で、地面に落ちた。めっさ痛い。それよりも、何故、急に化物は俺を離したのだろうか。全身の痛みを我慢しながら立ち上がると、化物と誰かが、戦っていた。戦っていた、と、言ったが、実際には戦っていたと、言えるほどのものではなかった。暗くてよく見てなかったが、化物が圧倒されていて、あっという間に、化物が倒れてしまった。倒れたかと思うと、化物は光を放ち、光の粒となって消えた。なにが起こっているのか、理解ができない。なんだこれ。まるで、アニメのようじゃないか。少し前に人影が見える。全くではないが恐怖は無い。化物に連れ去られようとしていた俺を一応助けてくれたのだから。お礼を言おうと、人影がある方に近づいた。「ありがとう。助けてくれて。」そう言いながら、目で見える位置まで来た。そのはずなのに、人の姿が見えない。「下です。」下?下の方を見ると、小さな少女、おそらく小学五年生くらいだろうか。そのくらいの歳の子がそこにはいた。え、幼女?幼女が、俺を助けてくれたのか?なんだか、惨めというか情けない気分になる。まさか、こんなに小さい子に助けられるなんて。でも、お礼を言わないわけには、いかない。「君が助けてくれたの?ありがとう。助けてくれて。」「別に、仕事ですので。それと、残念でしょうが、あなたの今夜のことの記憶、消させてもらいます。」あれ、そういえば、この子とどこかであった気が。てか、それよりも、俺の記憶を消す?こんな状況になることは滅多に無い。滅多にどころか、いま逃したら、一生来ないだろう。「それはやだ。こんな、面白い状況、滅多に来ない。それを記憶を消されて、なにも覚えていないなんて、そんなの嫌だ。また、退屈な日常を過ごすことになる。」「面白い?こちらは遊びではなく、仕事でやっています。すみませんがご理解をお願いします。」相手は不思議な力が使えるとて、幼女だ。全力ダッシュで、逃げれるはず。と、振り返り、走ろうとしたそのとき。「アイスちゃん。そいつの記憶は消さなくていい。」あれ、聞き覚えのある声が、「そして、お前も逃げなくていいから。」暗闇の中から声が聞こえた。その声の主は、よく聞き覚えがある。ほぼ、毎日聞いている声だ。「よう!英利。こんなところで会うなんてな。」声の主はえいりだった。


起。終わり。次章 承

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