パッドエンダー・山田~業を背負うモノ~

闇谷 紅

第1話

 俺の名前は、山田雅司。ある日枕元に立った女神様からとある能力と罰を与えられた男。

「まず、俺の能力だが――」

「ままー、あのおじちゃん独り言言ってるー」

「しっ、指さしちゃいけません」

「……声に出す必要もないな」

 そもそも俺は誰に説明しようとしたんだ。俺を指さす幼子とそれを引っ張って行く母親のお陰で少しだけ冷静になれたが、まあいい。俺の能力はバッドエンドをぶち壊す力。誰かの服から胸パッドをポロリとさせることを代償に悲劇をぶち壊すことが出来るんだ。

「ただし、パッドをポロリさせた女の子は元々胸を盛っていたと世界が書き換えられる」

 女の子の胸を小さくしてしまうとは何て最悪な能力だろうか。ちなみに俺はおっきなおっぱいが大好きだ。先日、神殿で胸を夢盛りした女神様の像をガン見してしまったのもそのせいだ。

「それが女神様に邪な感情を抱いたと断罪されることになるなんてあの時は思っていなかった」

 俺に与えられた罰は、授けられた能力で悲劇をぶち壊し続ける義務を負う制約。大きなおっぱいが好きなのに、悲劇を避けるためとは言え、グレードダウンさせなきゃいけないとは何という皮肉だろうか。

「誰か変わってくれないかな……あ」

 嘆きつつ歩いていた俺は足を止める。

「へっへっへっへ、お嬢ちゃん俺と良いことしねぇか?」

「や、止めて下さい、人を呼びますよ?」

 拙い、テンプレ臭しかしない展開だが、能力のおまけで俺にはわかる。絡んでる方の男、違法薬物を服用してる上、刃物を所持しているようだ。ここで介入しなければ、男に絡まれてる女の子が刺されてしまう。

「くっ、パッドエンド!」

「「え」」

 俺が能力を発動させると、女の子の服からパッドがこぼれ落ちた。

「ちっ、なんだ偽乳かよ……」

「えっ、えっ」

 女の子は愕然としているが、これで悲劇は回避された。もちろん俺はそうは思わない。おっぱいが小さくなるとか、それはそれで充分悲劇なのだから。

「あ、お前は……おい、いたぞ、あの男だ!」

「なっ、しまっ放せ、放せぇぇっ!」

 俺の能力で立ち去ろうとした薬物中毒者が衛兵に見つかり取り押さえられていたが、女の子の胸はもう元には戻らない。

「俺はこんな事をいつまで続ければいいんだろうか……あ」

「へっへっへ、護衛も連れずこんな所をぶらつくとは手間が省けたってもんだぜ」

「お嬢様、お逃げ下さい! ここは私が」

 やれやれ、世界は俺にまた苦しみを強いるらしい。俺の名前は、山田雅司。パッドエンダー・山田。

「パッドエンド!」

 今日も俺はバッドエンドをぶち壊す。


つづくかは不明

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