大魔王様はツイ廃

@Soranica

プロローグ

 ──大魔王。みなさんはこの言葉でどんなものを想像するだろうか。普通に『大』と付く魔王なのだから魔王よりでっかくて強いやつ、みたいな安直なものでも思い浮かぶのだろうか。

それかRPGなんかをプレイしている人なら、ラスボスと思っていた魔王を倒した後、これで終わりとぬか喜びさせてから堂々と出てくる裏のボスみたいなのを想像するかもしれない。

なんでこんなことを聞いてるかって? ……まあなんだ、俺がそういう所謂裏ボスである『大魔王』になってしまったわけで。


 事の経緯はこうだ。いつも通り習慣となったネットサーフィンをしている時に、ふと1つの広告に目が留まった。『人生に退屈していませんか?』という文言だ。

俺は大多数が通る同じ道、つまり普通に学校を卒業して普通に就職して普通に結婚してーってやつだな。そんな没個性な人生を送りたくない高2のお年頃だったわけだ。

自分だけにある才能を見つけようと色々なモノに手を出しまくったが、何ひとつ才能のある分野が見つからず悶々と過ごしていた俺にとってその一文は何よりも甘美な響きをしていて、気付いた時にはスパム覚悟でクリックをしていた。


 数瞬の読み込みを経て表示されたページは、背景が黒一色で塗りつぶされており、ど真ん中に『異世界転生』の大きい白文字が映っているだけの味気のないページだった。

取り敢えず異世界転生の文字をクリックしてみると、転生体アンケートと書かれ、その下に質問がズラーっと並んでいるページに移された。

まさかあり得ないだろうと思いながらも、暇をしていた俺は数が4ケタにのぼる膨大な数の質問に答えていった。

途中にあったおそらくは好みのヒロインである欄は一層気合を入れて入力したつもりだ。俺はいわゆるロリババアの、特に『魔王っ娘』と言われるジャンルのキャラが大好きで、無駄に細かく聞いてくるアンケートに大して本気も本気、自分の性癖を全てさらけ出す勢いで入力した。


 とここで、忘れずにツイッチャーでこんなサイトがあったことをつぶやいておく。ツイッチャーというのは簡単に言うと、150文字までで書きこめる「つぶやき」というものを使ったコミュニケーションツールで、俺は普段からなにか面白いことが起こると逐一ここに書きこんでフォロワー、ツイッチャー内での友達のような人たちと共有している。俺みたいな重度のツイッチャー中毒は、"ツイ廃"と言われていたりする。

つぶやくと早速フォロワーからリプライ、つぶやきに対する返事が送られてきた。


@ありえないだろ(笑) こんなの全部書き込むって暇人すぎ(笑)


思わず笑いながら適当に返事をして、アンケートの残りを埋めにかかる。


 長いこと続いたアンケートの回答欄もすべてが埋まり、なかなか良い暇つぶしになったなと思いながら『回答を送信』のボタンをクリックすると、次は『ほんとうによろしいですか?』とおどろおどろしいフォントで書かれたページへと飛ばされた。

昔よく見た怖い系のフラッシュのようなチープさを懐かしみながら、ドンと来いとクリックをする。

『送信されました。新しき良き人生をお送りください』と表示されたページを見ながら、長い時間同じ体勢で疲れた身体をほぐすために伸びをしていると、急激に眠気が襲ってくる。まさかな、と思いながらも、俺は抗いがたい眠気に身を任せて意識を閉じた。


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