絶対恋愛対象外

近々近

1

 ただいまーと言う元気な声が家中に響きわたる。あの子達が帰って来た合図だ。それに対し俺も声を返す。


 おかえりと


 ここは学童保育所、略して学童。子ども達が放課後に集まる場所だ。両親が共働きだったり、一人親家庭だったりと集まる理由はそれぞれ違う。


 そんな場所で学童の指導員として働いているのがこの俺、佐久間純也だ。子ども達からは純くんと呼ばれている。


 学童の1日の生活を説明しよう。2時頃に学校が終わった子ども達がバラバラと帰って来る。その後外遊びをしたい子達は指導員と一緒に公園に向かう。その間残った子ども達は家の中で塗り絵とか積み木で遊んだりしている。外遊びから子ども達が帰って来る前に残った指導員はおやつを作る。


 そして外遊び組が帰って来たら丁度おやつの時間となる。

 おやつを食べ終わって6時を回る前に保護者が迎えに来る。

 お金の話しだが6時を回ってしまうと遅保育になってしまい別料金がかかる。指導員の負担をなくすために6時以降は保護者の了承の上でお金を上乗せさせていただいている。

 そして遅保育が終われば1日が終わっていくざっとこんな感じである。


 説明が終わった所で周りが騒がしい、俺は今遅保育をしながら名簿のチェックをしていた。


「純君ー純君オセロやろ〜う」


「ダメよ!純は私と戦闘ごっこをするんだから!」


「どちらも却下よ純は私の描いたこの闇の魔導書『漫画』を読むのよ!」


 出たな遅保育3人集、もとい遅保育の常連、3人が俺に構え構えと騒いでいる。3人とも5年生なのにまだまだ甘え足りないのか俺にベタベタだ。


 オセロをやろうと言い出しているのは斎藤美咲、普段は大人しく何をやろうにも、おどおどしているが、今は気が知れた友達といるのでとてもアクティブだ。将来の夢はお嫁さんとても女の子らしい子だ。


 次に戦闘ごっこをしようとか訳のわからないことを言っているのが及川加奈、気に入らない男子がいるとすぐに手を出してしまう問題児、運動神経抜群で男子顔負けのスポーツ少女である。将来の夢は?と聞くといつもローキックを仕掛けてくる。


 その次に闇の魔導書とかもっと訳のわからない事を言っているのが、自称エターナルダークインフィニティ(本名田中倫子)いつもよく分からない事を放っている。手を顔の前に持って行き斜め45度にあご下を傾け「私の魔眼が目覚めるのが怖いのね!」と叫ぶ事がマイブームらしい、将来の夢はお前を下僕にする事だと…怖い。


 この3人に構え構えと言われている中俺は仕事をこなしていた。正直一緒に遊んでやりたいが仕事を終わらせずに明日を迎えるのはしんどい、しかしここから3人の猛攻が始まった。


 加奈が肩にずっとパンチをしてくる。パンチパンチパンチパンチ


「ねぇねぇ痛いねぇ痛い?」


 めちゃくちゃ痛いこの子本当に小学5年生の女子なのかと思うぐらい腰の乗ったパンチをしてくる。

 しかも肩の当たると痛い部分にクリティカルヒットである。

 だが俺は大人だそこは我慢だ。


 そんな中、美咲はオセロを手にオセロの楽しさを必死に解説している。


「オセロはね、白さんと黒さんの言い争いなの白は黒さんにダメだよーって言ったり黒さんも負けじとダメだよーって答えるの!ね?楽しいよ!」


 意味がわからない


 えーとエターナルダークなんだっけもう、倫子でいいや、倫子は倫子で、俺に今回の漫画の説明いや、呪文を唱えていた。


「漆黒より選ばれし戦士の勇気を讃えよ!」


 こんな事を言っているが漫画の中身はいつもバリバリの少女漫画である。

 しかも絵がめちゃくちゃ上手い、絵とかそういうのはわからないが素人ながらその旨さがヒシヒシと伝わってくる。


 だが今は俺の邪魔をしている事には変わりない、各々伝えたい事があるのだろうが俺は明日に仕事が持ち越しかどうかの瀬戸際、そろそろ俺の堪忍袋の尾が切れそうだ。その瞬間


 ガッシャーン


「あ…」

 俺の目の前でオセロが散らばった。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」


 美咲がオセロをひっくり返してしまった。美咲が脚がガタガタし始め、体が動かなくなってしまい謝る事しかできなくなってしまった。


「おい大丈夫か美咲!?」


「ごめんなさいごめんなさい」


「はい!美咲ちゃん泣かないでオセロは全部拾ったよ」


 加奈と倫子の手には沢山のオセロが握られていた。


「もう、しっかりしなさい?全部拾ってあげたのだから」




























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