第7話  避けられ


もっと顔に出ないのかと思ってた。


夜寝る前に寝室に行くとスマホを片手に、少し見ようとして、見たそうなのに見るのを止める。


何もないような顔をして、歯ブラシをしたり明日の用意をしている。その様子を私が目で追っているのに気づくのか、いつにない険しい顔を作っているのが違和感でしかない。


本当に何もないときの緩みと、何も無い振り、というのは緩みを作るためか、どこかに力が入るものなのだと知る。



「お休み」

私がそう言っても、しばらく聞こえないふりなのか答えない。

間をとってから

「お休み」と言う。


沈黙が流れている空気が、やけに浮き彫り立っていた。



「愛してるよ」と言ってみた。

間をとってから答えたのは

「ありがとう」


そういえば2、3日前に、休日の夜、娘と3人で寝るときに

「パパ、好きだよ」と言った娘に続いて、

「私もパパ大好きだよ」と言ったとき、私には返答がなかったから「パパ?」とふってみたときに答えたのも、

「ありがとう」だった。


理由を軽くきいてみると

「感謝してるから」だそうだ。



少し前ならもう少し違ったのに。と感じることが付きまとう。

その差に、避けられてる…と思い、ぐさりと胸を突き刺す。

ばかだなと思う。

自分で勝手に思い込んだり傷ついたり、なんてネガティブなんだろって、そう考えるとそうなのだけど、彼が私を避けているのは勘違いではない。


明日彼は一泊の出張らしい。


その前に、このきになる気持ち、避けられてるんじゃないかという淋しさを、彼に言ってみようかどうか、迷う。

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