第5話 愛する方 愛される


愛、

それはどんなであれば愛なのだろう。


恋愛の頃は、愛が100年続くよう、そんな風に強く祈るのに、

やっぱり変わらない愛なんてものは、無いということだろうか。


愛が自分にどれだけ向けられているか、そんなことばかり測ってきた私。

それはこの愛が、愛されて成り立っている愛ではなく、私が愛する方で、成り立っている愛だから余計に不安が目につく。


特に私の主だった4つの恋愛のうち3つは、愛される側の恋愛だった。

1つの恋は私が初めて愛して追いかける恋だった。


恋をしてみて、愛される恋愛と、愛する恋愛はこんなにも違うものかと、改めて思う。

両方が同じように想う愛というのはほとんど無いと思っている。



彼との恋愛は2つめの、私が愛する方の恋愛。

彼との日々が「暮らし」という現実になり、良いとこどりの恋愛から遠く離れてきたけれど、この愛はいつから崩れはじめたのたのだろう。


娘が産まれてからではないだろうか。


育児で気持ちも追われていたのも確か。

それでも彼が望むように、娘とお風呂に入った後も化粧は落とさず、朝起きた時に化粧を済ませておくために、明け方の授乳で起きた5時頃に化粧もした。彼が帰宅するまではパジャマに着替えることもせず、朝ごはんも出産前とかわりなく彼の好みに応えた。

私たちはお互いの親に頼れない。だから出産後、5日で退院した翌日からは戻りきらない体でもとにかく何でも彼の希望を叶えたくて必死だった。


それでも出産後、彼の私に対する接し方は前とずいぶん変わっていた。


愛がどこかへ浮かんで消えてしまったんじゃないかと感じていた。

育児にも疲れたし、彼の振舞いにも疲れ、

少しずつ、彼の愛が、愛ではなく、責任と義務に変わっているのだと感じた。


男の人にとって、家族を持ったという変化によってそれまでに無い大きな責任が生まれることはポジティブな変化なのだろうと思う、


ただ、彼の場合、家族への責任、愛情よりも、ねばならない、「義務」という側面が色濃いのではないかと、自分が愛されなくなっていくその実感が毎日怖かった。


すれ違っていく思いはいつも暗闇の中で、気づけばお互い別々の道にたどり着く、夫婦であっても夫婦でなくても、愛とはそんなもの、ではないだろうか。

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