第2話 部長

男「…………ふー」

女先輩「お。どうだったね?」

男「面白かったです。とっても」

女先輩「うんうん。作品に対してはフェアに評価してくれるその姿勢、私は大好きだよ……具体的には?」

男「いや、具体的にどこがって言うか……。引き込まれるような世界観とか、まるで自分がその場に居るかのように錯覚してしまう表現力とか、ですかね」

女先輩「ふむふむ」

男「特に図書館のシーンは、館内にスッと射し込む陽光や、紙を捲る音が静かに響く風景が目に浮かぶようで…」

部長「おっ、女ちゃーん。なに、新しい話書いたの? 最初に俺に読ませてって言ってるじゃーん」

女先輩「……部長くん」

部長「そんな学のなさそーな後輩なんかより、俺のほうがしっかり評価してやるって! …おい一年、黙ってねーで原稿こっちに寄越せよ」

男「あ、はい……」

部長「女ちゃんもこっちにおいでよー。俺、今メッチャ面白い話考えてんだ! まさに空前絶後の超大作ってヤツ! ひょっとしたら本屋大賞なんか獲っちゃうかも__」

女先輩「すまない、私は今日はもう帰ることにするよ」スッ

部長「え?」

女先輩「その原稿は返さなくていいから。それじゃ」

部長「何? どーしたの女ちゃん、気分でも悪いの?」

女先輩「ああ、悪くなったんだ。たった今ね」

部長「マジで? あ、俺送っていってあげるよ! 一人じゃ危ないだろうし!」

女先輩「……。いや、君は部長なのだから、部室を最後まで監督する義務があるだろう。私は後輩くんに送ってもらうとするよ」グイ

男「え、ちょ、先輩?」

部長「はぁ〜? いやいや遠慮すんなって、そんな役不足より断然俺のほうが__」

女先輩「役不足は実力に対して配役が軽すぎる際に用いる慣用句だよ。力不足と混合していないかい?」

部長「へ?」

女先輩「それじゃ」

男「ちょ、先輩襟首引っ張らないで! 首首、首絞まっちゃってますからー!」

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