第二百十七話 終わる日常と終わりの始まり③
絶滅要塞が再び現れたことにより、竜族は人間を滅ぼすことを決意した。そして自分達が動き出せば必ず神々も動くと考えた竜族は、それに対抗する為に悪魔たちと手を組む。
神話の時代より神々に敵対してきた悪魔達にとってもこれは好機であった。
様々な思惑が蠢く中、遂に聖魔大戦の序曲が鳴り響いたのである。
そしてそのすべてを、時読みと星読みの力を使い操ろうとしているクロノスフィア・クロスディーン。人間、魔族、竜族、悪魔を滅ぼし、他の神々達も手玉にとってみせると絶対的な自信を見せ遂に表舞台へと姿を見せた。
「なるほど……なにもかも、あなたの思惑通りと言う事ですか。ティアラに、時の歯車のことを教えたのもあなたということ、或いは……」
言いながらぽっぴんはユカリスティーネの方へ視線を送る。
「そんなことはどうでもいい。止めるなよ、ぽっぴんぷりん」
メームちゃんはそう言うとソフィリーナのことを指差して吠える。
「絶対に許さぬぞソフィリーナっ! 我は元からおまえのことを虫が好かなかったのだ! 我を……べんりを……皆を謀った貴様を絶対に許さぬぞ女神めえっ!」
ソフィリーナに怒りをぶつけるメームちゃんを睨みつけると、今度はクロノスフィアが吠える。
「許さないだとぉ? 愚かな娘だ……。許さないのは私の方だっ! 魔族風情が神にも許されていない時を操る
「はははははっ! ならばとくと見せてやろう、その神をも超えた
刹那、メームちゃんの全力のエネルギー弾がクロノスフィアを飲み込む。飲み込んだものを無に帰すメームちゃん必殺の一撃だ。アモンの時とは違い、先のことは考えずに限界まで時間を止めて、全力で放ったその攻撃は、神であるクロノスフィアの身体を飲み込み消滅せしめた。……かに思えたその瞬間、エネルギー波が掻き消される。
確かにクロノスフィアを捉え、ダメージを与えたかに見えたのだが無傷。
「そ……そんなばかな……どうして?」
力を使い果たしたメームちゃんは、幼女の姿へと戻り前のめりに倒れ込むと気を失った。
クロノスフィアは口元に笑みを浮かべると、右手に持っていた何かを顔の前に翳す。それは懐中時計、手の平サイズの懐中時計からは小さな紫色の稲妻が迸り、長針が物凄い勢いでぐるぐる回っていたのだがゆっくりとその動きを止めた。
――
「私は時の神だ。きさまらが時間の法を犯し不正を働いたその時、それを審判し裁く力を持っているのだ……くくく……くっくっく、あーはっはっはあああああっ! つまり、おまえらにとって最強の力である、その魔族の時間操作でさえもっ! この私の前では無力っ! これぞ神っ! 私こそがこの世界を統べるに相応しい最強の力を持った神なのだあっ!」
―― バーニング・ヘル・フレアあああああああああっ! ――
天を仰ぎ馬鹿笑いを上げるクロノスフィアに対して、ぽっぴんは獄炎魔法を放つのだがクロノスフィアはそれをいとも簡単に片手で握り潰した。
「そんな型落ちギアムで放った一撃がこの私に届くと思うか? 火炎魔法はこういうのを言うのだっ!」
クロノスフィアが手を翳した瞬間、ぽっぴんの獄炎魔法を遥かに凌駕する火炎が放たれた。しかし、それを防いだのはオーロラの壁であった。
クロノスフィアは冷たい表情でソフィリーナのことを見ると抑揚のない声で言う。
「どいうつもりかね? ソフィリーナ」
「クロノスフィア……お願いです。この子達は……見逃してください」
「言っている意味がわからないなソフィリーナ?」
「おねがい……クロノスフィア……」
ソフィリーナはクロノスフィアの腕に縋り付き、止めを刺すのを止めてくれと懇願する。そしてユカリスティーネも飛び出すとその場に膝を突き、手を突き、頭を下げて懇願した。
「私からもお願いします。クロノスフィア・クロスディーン様っ! この者達は、確かに時の理を犯す大罪を犯しました。しかし彼らもまた、今回の騒動の被害者の一人なのです。突然この異世界へ飛ばされ、精一杯生きてきた結果の過ち。どうか、どうかそんな彼らに御慈悲をっ!」
懇願する姉妹をつまらないものを見るかのような目で見下ろすと、クロノスフィアはぽっぴんに向けていた手を下ろす。
「まあ、かまわんさ。世界がリセットされれば彼らも消える運命。しかし、魔族の娘。その体内にある時の歯車だけは回収させてもらう」
クロノスフィアがメームちゃんに向かって手を翳すと、メームちゃんの背中の中心が輝き時の歯車が浮かび上がった。そして手元まで飛んでいくと輝きを失う、それをそのまま握り締め砕くと、クロノスフィアは振り返り言い放った。
「もう、君達がどうこう足掻いた所でどうにもなりはしない。聖戦は始まってしまったんだからね。まあこの先数百年は続く戦争だ。我々神々にとっては瞬きするほどの時間ではあるが、人間にとっては長い時間だろう。その間に好きなだけ足掻き、もがき、苦しめばいい。この世界の大きな因果の流れの中で、自分達は無力でちっぽけな存在であると知るがいいさ」
笑いながらそう言い残し、クロノスフィアはユカリスティーネを従えその場を去って行った
そして、ソフィリーナも。
「さようなら……べんりくん」
つづく。
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