第百八十四話 双竜挟撃、竜を追う者、追われる者①
地上でサーヤと別れ、準備を済ませると俺達は再びダンジョンへ戻る。準備と言ってもローリンの武器を買いに行っただけなのだが。
「本当に、そんなに必要なのか?」
背中の籠に大量に刺さる剣を見ながら俺はローリンに問いかけた。
「これでも足りないくらいですよ。ドラゴンの鱗はミスリルよりも硬いと言われているのですよ。こんな普通の剣では一太刀で折れてしまいます」
いやぁ、一太刀で折れるほどの力で斬りつける奴の方がやばいと思うんだが。
さて、エクスカリボーンが盗まれたことはどうやって誤魔化したかと言うと。まあぶっちゃけ誤魔化せなかったので堅く口止めしたわけだ。はっきり言ってエクスカリボーンが無い事を知ったサーヤはかなり動揺した様子であったが。それでもローリンの力を信じてこのことは内密にオルデリミーナ、もといジュリア騎士団長の元へと急ぐのであった。
店に戻りパワビタンなどの回復アイテムをありったけリュックに詰め込むと、俺達はすぐにダンジョンの更に奥深く、マグマ地帯へと向かった。
道中何人かの冒険者に出会い情報を聞き出す。ドラゴン狩りに向かったパーティーは少なく見積もっても10を超えるらしく、大体1パーティーが3~5人と考えると、50人近くの冒険者達が下の階層には居ると考えられた。
「ちっ、金と名声に目が眩んで自分の力を過信した馬鹿どもがぁ」
言っちゃ悪いがモンスター狩りなんてなにがあっても自己責任だ。金儲けの為に出向いて於いて強力なモンスターが現れたから助けてくださいなんて、そんな身勝手な話はないわけだが、かと言って放っておくこともできない。それに、この情報はルゥルゥにも知られている筈。だとしたら必ずドラゴン退治に現れるだろう。
上手くいけばその場でエクスカリボーンを取り戻してローリンがドラゴンをやっつけてくれるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら更に先へ進んだ。
この間メームちゃんと一緒に来たマグマのある階層へ降りようとするのだが、その道が土砂や岩に埋まって進むことが出来なくなっていた。
「私の魔法で吹き飛ばしましょうか?」
「やめておけぽっぴん。おまえが地下で魔法をぶっ放すと碌なことにならない気がする」
「むぅ、いつまであの時のことを引き摺っているんですか。もう一年も前のことですよ」
そりゃトラウマにもなるだろ。て言うか洞窟が崩れて埋まってるもんを更に崩したら危ないだろうが。とは言ったもののこれでは先に進めない。どうしたものかと迷っているとローリンが逆方向へと歩き出した。
「どこに行くんだよローリン?」
「少し戻った所の地面に裂け目がありましたよね。そこから下に降りることができないか確認してきます」
おいおいおい、そんな危険な真似大丈夫かよ? ここはやっぱ地道にこの土砂を掘ったほうがいいんじゃねえか? と悠長なことを考えるのだが、「すぐに戻ります」と言ってローリンは裂け目を降りて行った。
ローリンを待つこと数分、突如ダンジョン内に大きな音が響き渡った。
「な? なんだよ今のは?」
「ドラゴンの鳴き声じゃないの? なんかあれね。想像通りの恐竜の鳴き声よね」
ソフィリーナは呑気に言っているが、俺にはとんでもない化け物の咆哮にしか聞こえなかったんだが、マジでやばいよあれは。今度こそ死んじゃうかもしれないなと俺は思うのであった。
暫くすると地面の裂け目を降りて行ったローリンが戻ってきた。
「一応下まで降りることはできましたが、結構キツイですよ。それにかなり熱いですね。マグマがすぐ近くにあるのでしょう。私はここから先に進もうと思うのですが皆さんはどうしますか?」
どうするも何も選択肢はここしかないんだし、こっから下に降りるしかないだろう。
慎重についてくるようにとローリンが先に降り、次に俺、ソフィリーナ、ぽっぴんの順に岩の切れ目を降りて行く。
「うぉぉ、少しでも足を滑らせたら真っ逆さまだな。それに下から来る熱気もやばいな。おーい、おまえら大丈夫かあ?」
上を見上げてソフィリーナとぽっぴんに声をかけるのだが、俺はこの順番にして正解だったことに気が付いた。
二人のパンツが丸見えだからだ。
ふむ。ソフィリーナは水色で、ぽっぴんが白か……なるほどな。
「ちょっとべんりくんっ! 今パンツ見てたでしょっ! ぽっぴーんっ、べんりくんがスカートの中覗いてるわよおおおっ!」
「なんだとこんちくしょおっ! タダで人のパンツを覗き見ようなんてふてえ野郎だっ! ぶっ殺してやるっ!」
すると二人はするすると器用に岩の斜面を下りてきて俺に追いつくと、上からガシガシと蹴りを浴びせてきた。
「ちょっ、おまっ、やめろ馬鹿っ! おちっ、落ちるわあっ!」
蹴りを払いのけようと左手を放した瞬間、突如俺は身体がふわっと浮くような感覚を覚える。右手で掴んでいた部分の岩が崩れて俺はそのまま下に落ちたのだ。
頭上から叫び声が聞こえてきた。そしてその声はいつしか日常の会話へと変わる。何気ない日々の想い出、記憶、この異世界にやってきて色んな事があったなぁ。今となってはなにもかもが懐かしい……って、これ走馬灯じゃね?
そう思った瞬間俺は地面に叩きつけられるのだが、そんなに痛くはなかった。と言うかなんか柔らかいものにぶつかったぞ。
俺は起き上がり地面を触るとぷにぷにの柔らかい感触を手に感じる。
「ん? なんか柔らかいな? あれ? ルゥルゥ?」
「いてて……。え? べんり? おまえ一体どこから……てか、どこ触ってんだおまえ」
柔らかい感触は、ルゥルゥのちっぱいであった。
おいおい、なにこのお約束。俺、ラノベの主人公かよ?
つづく。
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