第百五十一話 何度も失敗を繰り返して生まれたものが今と言う時代②
階段を上がった直後、前方からドローン型の飛行ロボットが数機迫ってくる。迎撃しようとぽっぴんが杖を突出し魔法を唱えるのだが、「ポンっ」と杖の先で小さな爆発が起こるとそれっきり、ぽっぴんはへろへろと力なくその場にへたり込んでしまった。
「うにゅ~ん。さっきの魔法連発でMP切れですぅ。て言うかなんだか目が回って体に力が入りませ~ん」
「あんな大出力の魔法を考えもなしにポンポン使うからだ馬鹿たれ」
そんなことをしている間にロボットが迫ってきていた。俺はぽっぴんをおぶると反対方向へと走りだす。
「すいませんべんりさん。感謝します~」
「いいから今は体力の回復に専念しろよ。ちっきしょう、パワビタンがないとこんなにも不便なものなんだな」
走りながら俺は思う。とりあえず後ろから撃たれてもぽっぴんが盾になるから俺は安全だと、そんなことも知らずにぽっぴんは俺の背中で「かたじけねぇ、かたじけねぇ」としきりに手を合わせて拝んでいるのであった。
「行ったか?」
「行きましたね」
曲がり角にあった小部屋に滑り込み、息を殺してロボット達が通り過ぎるのを待ってから俺達は再び廊下へと出た。
「ふー。あんなのでやり過ごすことができるなんて馬鹿な機械だぜ」
「まったくですね。所詮シンドラントの技術力なんてそんなもんなのですよハーハッハッハーっ!」
ぽっぴんが馬鹿笑いすると警報が鳴り響いた。そして前方と後方からガシャガシャと足音を鳴り響かせながら二足歩行の人型ロボットが大量にやってくる。
『シンニュウシャヲトラエヨ』
『シンニュウシャヲトラエヨ』
馬鹿はおまえだ。せっかくやり過ごしたのになに大声だしてんだよ。睨み付けるのだが口笛を吹きながらそっぽを向いて誤魔化している。くそったれが、俺はぽっぴんの頭を鷲掴みにするとギリギリと回して俺の方を向かせた。
「どうすんだよっ?」
「わっかりましたよっ! 倒せばいいんでしょ倒せばあっ! 喰らえっ! バーニング・ヘル・フレアーっ!」
獄炎魔法は杖の先で「ぷすんっ!」と小さく燃え上がり煙をあげるとそれで終了。
「ふっ……まだ、MPが回復していないようですね」
苦笑いしながらそう呟くぽっぴん。
「ふっざけんじゃねえよおおおおっ! どうすんだよこれ? もう完全に詰んでるじゃねえかよっ!」
「うるっさいですねえ。べんりさんはいつも偉そうに文句ばっかり、だったらたまには自分で戦ってみてはどうですか?」
「おまえ、この状況でなにをそんなに落ち着き払ってんだよ? 俺が戦えるわけねえだろ! 絶体絶命の大ピンチなんだぞ!?」
言い争いをしている間に目前まで迫ってきているロボット達であったが、先頭の一体が俺達に手を伸ばした瞬間、後方で爆発が起こる。なにが起こったのか? わけがわからず茫然としているとロボット達の向こうから声が響いた。
「べんりっ! 駆け抜けるわんっ!」
その声に俺達は走り出す。
獣王は口から光線を放つとロボット達を一掃していく、そして前方の敵を全て破壊すると俺達の元へとやってきた。
「大丈夫かわんっ!?」
「おまえ、どうして?」
「A25が絶滅要塞が動き出したと言うから居ても立っても居られなかったわん。ユカリスのお嬢ちゃんはソフィリーナ嬢の介抱をしているわん。それからローリン嬢は一人、内部からこの要塞を破壊するとあちこちぶっ壊して回っているわん」
獣王の説明が終わると同時、ズズンとなにかが爆発したような振動が下から響いてきた。
これはきっとローリンの仕業だ。つまりローリンは一人でMM―1000を二体やっつけてさらにこの巨大な要塞を止めようと奔走していると言う事か。本当に働き者の聖騎士様だなまったく。
「俺も休んで大分よくなったわん。今こそ、体内に蓄えてきた魔力を解放する時だわんっ!」
そう言うと獣王は超久しぶりに獣人の姿へと変身した。それはもうゲームの獣王記さながら、知っている人にはピンとくるかもしれないが、知らない人にはまったくわからないネタである。
「おまえ、まだ魔力の貯蓄あったのかよ?」
「あほか、こないだのは冗談だ。あんなことでこの力を使うわけがないだろ?」
語尾に「わん」とつけないと物凄く違和感がある。こいつは本当に獣王なのだろうか? いつの間にか知らない誰かとすり替わってしまったのではないかと錯覚してしまう。
「行けべんりっ! メイムノーム様を必ず救い出してくれっ!」
「助かったぜ見知らぬ獣人のおっさん、後は任せておけ!」
「見知らぬってなんだよっ? 知ってるだろ俺のこと? あれ? なんで? って、ちょっ、まっ! ぬわああああっ!」
強力な魔力に反応したのかロボット兵たちは一斉に獣王に群がり揉みくちゃにする。
死ぬなよ。獣王。
俺とぽっぴんは振り返らずに駆け出すのであった。
「べんりさんっ! あの扉の向こうからなにやらとんでもなく強大な魔力を感じますっ! あれは間違いなくメームさんですっ! て言うか最初からメームさんの魔力を辿ってくればよかったんですねっ!」
なんで今更そんなことに気が付くんだよ。魔力とかそういうの俺は感じないんだから頼むよほんとに。
扉を開けて中に飛び込むと、真空管のような透明なガラスケースの中で膝を抱えながら浮かび、淡い光を放っているメームちゃんを見つけた。
良かった。とにもかくにもメームちゃんを見つけ出すことができたのだから良しとしよう。
「メームちゃんっ!」
ガラスケースに駆け寄り呼んでも返事はない。目を瞑ったまま微動だにしないメームちゃん。眠っているのだろうか? それともまさか? 悪い方へ考えるのはやめよう。とにかく一刻も早くこの中からメームちゃんを助け出して、そして時の歯車を見つけないと。
「ぽっぴん、これどうすればいいんだ?」
俺は目の前のコントロールパネルのようなものを見ながらぽっぴんに問いかける。ハッキリ言って全然わからない、変なボタンを押してしまったらメームちゃんが危険かもしれないので迂闊に触ることはできない。
迷っているとぽっぴんは、手慣れた様子でパチパチと色んなボタンを押したり上げたり下げたり。その度に色んなところのランプが点いたり消えたりをしている。それを見ながらぽっぴんは「ふむふむ」と頷いては、またボタンを操作する。
「わかるのかよ?」
「わかりませんよ。だからこうやって色々試しているんじゃないですか」
「おまっ!? 触っちゃいけないボタンだったらどうすんだよっ!」
「触っちゃいけないボタンがこんなところに付いてるわけないじゃないですか」
そう言いながらぽっぴんは拳でパネルに嵌っているガラスを砕くと、中の赤いボタンを押した。おまえ……それって、絶対やばい奴じゃね?
「ぽちっとな」
―― ブーブーブー。緊急自爆装置が作動しました。 緊急自爆装置が作動しました。 この絶滅要塞は10分後に自爆し世界を滅ぼします。逃げても無駄なので城内の兵士達は慌てず速やかに死ぬ覚悟をしてください。繰り返します。緊急自爆装置が ――
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます