第三十九話 異世界ものったらやっぱステータスでしょ!
とにかく死んでしまう前にお義母さんから許可を貰い結婚式をあげるしかない。俺がこの先生き残るにはメームちゃんと結婚するしか他に手立てはないんだ。
「なにニヤニヤしながらぶつぶつ言ってるのよ? 気持ちわるい」
「べ、べつにニヤニヤしてねえよ。この顔のどこがニヤニヤしてるってんだよ?」
「全体がよ」
ソフィリーナに突っ込まれるが、生まれつきそういう顔なんだよ!
「とにかく
メームちゃんはこの呪いを解く気はまったくない素振りだし、だったら母親である魔王に会って解いてもらうしかない。まあ結婚するのはやぶさかでもないが、場合によってはメームちゃんの体内にある時の歯車をなんとかすることを交換条件にしよう。
しかしそこで、異論を唱える者が一人、いや一匹。
「果たしてそう上手くいくかわん?」
「な、なんだよ?」
獣王が偉そうにドヤ顔で俺達を見上げている。
「魔王様の神殿に行くには、我々88の魔闘士の中でも最強と謳われる12人の魔闘神達と闘う必要があるわん」
「な……なん……だと?」
おい、まさか、やめろよ。そこから先はなんとなく想像できるけど、まさかあれじゃねえよな?
「12人それぞれが護る12の宮殿を越えて行かなければ、魔王様の元へは辿りつけないわん。迂回路もなければ、魔法でワープもできない。絶対に12の宮殿をその足で進んで行かなければならないわん」
やっぱりかぁぁぁ。やっぱりそういう設定だったかぁぁぁ。パロディとかオマージュって言えば許してもらえるとか思ってないだろうな? マジでやめてよぉ。
「ちなみに12の宮殿にはそれぞれ守護星ざ」
「それ以上は言うなあああああああああっ!」
俺が叫ぶと獣王は不思議そうな顔をするのだが、俺のあまりの気迫に説明はそこそこに切り上げてくれた。
もうしょうがない。そういう風にダンジョンを作っちゃったって言うんだから素直にそれを攻略するしかあるまい。
そして獣王の横でいつの間にか意識を取り戻していたリサさんは、なにやら遠い目をしながら外を指差して言う。
「あの遠くに見える火時計の火が全て燃え尽きた時に、べんり様の命の火も燃え尽きます」
「どこにそんなのあるんだよ。適当言ってんじゃねえ変態メイド」
ふざけやがって、人の命がかかってるってのにこいつらなんかふざけ始めてねえか?
ふと横を見るとぽっぴんがソフィリーナの前に跪き、傍らにはマジックで「ぺがさす」と書いたダンボール箱が置かれていた。
だからなんでおまえがそんなことを知ってるんだよっ!
そんなこんなで俺達は魔王様に会いに行くべく準備を始める。とりあえずなにがあるかわからないので、コンビニにある色々な回復アイテムは持って行っておこう。
「あー、それじゃあ。これから異世界コンビニ12宮編が始まるわけですがー。とりあえず出発前にメンバーの紹介と、それぞれのステータスを自己申告でお願いします」
「なんで自己申告なんですか?」
ローリンが質問してくる。なんでかって? んなもん決まってるだろ、そういうのが視覚化される装置とかはこの異世界にはないからだ。以上っ!
「そ、それでは僭越ながら私から」
そう言ってローリンはおずおずと前に出て自己申告でステータスを言う。
名前:ジェイ・ケイ・ローリン
職業:聖騎士
HP:この身、朽ち果てるまで
MP:我が命、燃え尽きるまで
武器:聖剣エクスカリボーン
必殺技:エクスカリボーーーーーーーンっ!
「い、以上です……」
顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにするローリンを皆黙ってみているのだが、誰からともなく我慢しきれず吹き出す。
「ぶ……ぶぅぅぅうううううううううっwww ローリンw ちょw おまwww HPとMPなに? え? なにそれwwww」
「い、いやその……体力なんてものは己の心持ち次第でなんとかなるものかと……言うなれば精神力ですっ! 気合いですよおっ! て言うかなんで笑ってるんですかああああ!」
「いや、本気でやるとは思わなかったからさw」
ローリンは膨れながらポカポカと俺のことを叩いてきた。
なんかいつもやることなすことが男前すぎて忘れていたけど、こういうところは女子高生らしくて可愛らしいよな。
「なんだかおもしろかったので私もやってみますっ! 我が名はぽっぴんぷりん! 大賢者を生業としいっ!」
「ああいいよもう、二番煎じになるからやめとけぽっぴん。大火傷するぞ」
こういうネタは一発だから破壊力があるのであって、二回も三回も続けてやるもんじゃないんだよ。これだからお笑いの素人は駄目ですね。
ぽっぴんは「むぅ……」と口を一文字に閉じて、つまらなそうな顔をするが放っておこう。
「さて、そういうわけだ。お遊びはここまでにして行こうか」
「べんり。どこにいくの?」
「これからメームちゃんのママの所に行くんだよ」
俺がそう言うとメームちゃんは一瞬不思議そうな顔をするのだが、にこっと笑うと俺の元に駆け寄ってきて抱っこをせがむ。
そして俺が抱え上げると耳元でそっと呟いた。
「オマエハワレノモノダトイウコトヲユメユメワスレルナヨ」
つづく。
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