どぉしてぇ?

紀之介

あんなに、面白いのに!

「…秋といえば」


 公園のベンチで、いきなり綾さんは立ち上がりました。


「サッカー、したくなるじゃない?」


 隣で座ったままの翔君が、目だけを綾さんに向けます。


「ならないと、思うな。」


「どぉしてぇ?」


 綾さんは、翔君の顔を覗き込みました。


「あんなに、面白いのに!」


 翔君が、呆れた様に指摘します。


「…した事、あるの?」


「ない♪」


 何かに思い当たる翔君。


 無言で、スマホを手に取り操作します。


「昨日…これを 観たんだね」


「?」


「このアニメ、観たんでしょ?」


 スマホの画面を見せられた綾さんは、悪びれる様子も見せませんでした。


「そう♡」


----------


「ねぇー しようよぉー サッカー」


 隣りに座る翔君の体を、二の腕を引いて綾さんが揺らします。


 翔君は意識して、前を向いたままの姿勢を維持しました。


「…ボール、2人で蹴り合っても 面白くないでしょ?」


「し・あ・い! 試合をするの!!」


 綾さんの言葉に、翔君が呆れます。


「サッカーは1チーム、何人だか知ってる?」


「11人!」


「後20人、どうするつもり?」


 頑なに、自分の方を向く気配を見せない翔君の腕から、綾さんは手を放しました。


「8人いればね…」


 自分の頭を、翔君の肩に預ける綾さん。


「─ ミニサッカーって言うのが、出来るんだよ!」


 やっと自分の方を向いた翔君に、笑い掛けます。


「3人は、私に当てがあるから…」


「…」


「もう3人は…お願いしても良いよね♡」


----------


「…その服は、何? 」


 ミニサッカーの試合の日。


 グランドの現れた綾さんを見て、翔君は固まりました。


「可愛く…ない?」


「─ そう言う話じゃ、無いでしょ!」


「…じゃあ、何?」


「何で、そんな短いスカート…履いてるの!?」


 少し声を荒げた翔君に、綾さんは平然と答えます。


「えーと、動きやすい服装…して来てると思うんだけど。」


「─ その格好で…ボール、蹴るつもり?」


「うん!」


「…」


「ダイジョーブ! 私、見えても気にしない人だし!」


 真剣な目で睨む翔君を、綾さんは茶化し続けました。


「うそ嘘。ちゃんと見えても構わないの、履いてるから!!」


「─ みんなが来る前に…着替えて。早く!」


「面倒くさいから、い~や~」


 してやったり顔で、舌を出す綾さん。


 翔君の顔に、渋い表情が浮かびます。。。


----------


「綾ちゃんが、そう言う事するのなら…」


 暫く無言だった翔君は、小声で言いました。


「僕はもう…口を……利いてあげない。」


「…え?!」


 翔君の呟きに、綾さんの顔色が変わります。


「う…嘘だよ、ね?」


 口を引き結ぶ翔君に、慌てて駆け寄る綾さん。


「ごめん… い、今直ぐ、きが、着替えて、く、来るから!」


 涙目で、声を震わせます。


「だ、だから…ね? それだけは…やめよ! ね!? お・ね・が・い!!」

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どぉしてぇ? 紀之介 @otnknsk

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