第八話 襲撃予知

 その後、ソフィの部屋を出た後、俺とジルは教会から出ようと、出入り口に向かうが……その前に、ソフィが俺達を呼び止めてきた。


「あっ……ちょっと待って。2人とも、あと5分くらいここにいて」


「あん?」


 なんでそんな事をしないといけないんだ……と思ったら、ジルが少し真剣な顔をしていた。まさか、予知でなにか見たのか?


「最近ないと思ったのですが……どこからですか?」


「全部横の窓から」


 おい、ちょっと待て……俺はなにが起きるか分からねぇんだよ、イメージよこせ、その予知したイメージを!


「ちょっと待てソフィ、俺にも教えろよ! イメージを送れるんだろ?」


「残念、それが出来たのは、まだ伝えるのが難しい歳の間だけだったからね」


 なんだそりゃ……ということは、今は出来ないって事なのか?


「とにかくあなたは、ジルと私の指示に従っといたら良いのよ! 急いで!」


「分かった、分かった!」


 そして、俺はジルの指示に従って、ジルとは反対側の窓に行くと、その傍で待機した。

 だけど、こういう事をするということは、誰かがここを襲撃してくるのか? そんな感じがしてならないな。


「誰か襲撃してくるのか?」


「そうよ。だから、気を引き締めて」


「なるほどな……それにしても、ジルとソフィは仲良いんだな。言わなくても意思疎通出来るなんて……もしや……」


『ただの幼馴染み』


 2人揃って言うんじゃねぇよ。本当、仲良いな。

 まぁ、俺は襲撃に対して、準備しておけば良いだろう。気にしない気にしない……。


 それと、俺達を迎えに来た軍の人も、出入り口を守ってるよ。迎えに来ただけなのに、なんでこんな事にって顔してやがるぞ。


「ちょっと、そこ! ちゃんと気を引き締めてよね! 私の特異力は、色んな人が欲しがるレベルなんだからね!」


 すると、ソフィが俺に向かって怒鳴ってきやがった。


「マリナだ……そう言えば言ってなかったっけ?」


「あぁ、マリナね。とにかく、私の特異力の事がどこからか漏れてから、ひっきりなしに色んな奴が、私を攫おうとしてきてるのよ」


「でも、ことごとく予知して対策するから、最近は攫おうとする人もいなかったのですが……なんでまた……」


 マリナの後に、ジルがそう話してくるが、襲撃する奴等の考えなんて、分かるわけねぇだろう。というか、ちょっと待てよ……。


「ソフィ、予知ってどこまで分かるんだ? 何人がどの窓から来るかって、分からないのか?」


「予知の仕方にもよるわ……私の身に起こる事で予知したら、私目線の景色が、イメージとしてくるわね。だけど、この教会で起こる事で予知したら、どの窓から何人来るかは分かるわね」


「つまり……」


「今回のは、私に起こる事で予知したの。因みに、予知出来る範囲も、その時の体調とか、精神力にもよるわ。あっ、因みに1回予知すると、1時間ほど時間を空けないと、再度使えないわ」


 それなら、もう一回予知したらと言おうとしたら、その前に返されたよ。ということは今回の場合は、どこから来るとは分かっていても、何人来るかは分からないってか。


「つまり、突入されると同時に……!!」


「対策するしかねぇんかい!!」


 そして、俺達が警戒している中、窓が割られ、何者かが侵入して来ようとしたが、ジルは手に持っていた杖で、窓を一気に凍らせ、突入してきた奴等をその場で凍らせ、俺は左側で待機していたから、左足で思い切り窓を蹴り、爆発させてやった。


『ぐわぁぁぁあ!!』


 因みに、俺が爆発させた瞬間、そこから数人の悲鳴が聞こえたが、何人か同時に吹き飛ばしたか?

 ジルの方は、厳つい顔のおっさんが、凄い表情のまま、氷の中に閉じ込められてるぞ。そのまま連行出来るな……。


「マリナさん、まだです!!」


「なに? うおっ!!」


 すると、ジルがそう叫んだ瞬間、俺の足下から手が伸びてきて、更にはその床から、誰かの顔まで出て来た! お化けか?!


「うわっ!! なんだお前!!」


「ひっひっひっ……誰だって良いだろう。さ~て、古代神器持ちは誰だ~?」


 なに? 古代神器狙い? 聖女じゃないのか?


 どっちにしろ、こいつ良く見たら実体がありそうだ。お化けじゃねぇ、特異力か?! やっかいな能力もあったもんだ。


「マリナさん!」


「うおっと! ひっひっ……危ない危ない……」


 すると、ジルの奴が杖を振り、そこからつららのような氷の槍を飛ばすと、俺の足を掴んでいた奴に当てようとした。だが、直前で床に潜られて、逃げられてしまった。


「あっぶねぇなぁ……ってか、また床に潜りやがって」


 こいつは、床を自由に動けるのか? ということは、壁も?


「マリナさん! またそっちに来ます! 跳んでかかと落としです!」


「うわっ……た!!」


「ちっ……このガキィ……なんで俺の場所が……」


「分かりますよ。それが僕の、古代神器の力ですから」


「なにっ?! 貴様……がっ!!」


 爆発させる必要もなかったわ。ジルが古代神器持ってるって分かった瞬間、こいつそっちに注意がいってしまって、上に跳んだ俺の事を忘れやがった。


 だから爆発させずに、普通にかかと落としでノックダウンさせてやったよ。こいつ弱すぎるぞ。


「なんだこいつら? なにがしたかったんだ?」


 だけど、呆気に取られている俺を余所に、ジルはどこかに連絡をしている。

 というか、なにか丸いのを取り出して、そこに話しかけてるが……それって、俺のいた世界で言うところの、携帯かなにかか?


「…………すいません、マリナさん。僕はしばらく、ソフィの警護に当たらないといけなくなりました」


「ん? だけど、襲撃は終わっただろ? こいつらは、聖女を狙ってたわけじゃ……」


「こいつらは、ソフィを狙う奴等に雇われただけです。恐らく、古代神器を取って来いとしか、言われていないんでしょう。だから、僕等の中の誰が神器を持ってるか、分かってなかった」


 まぁ、確かに言われてみればだな……それに、ソフィの事が知られているなら、ソフィのいる教会を襲うリスクくらい、分かるだろうな。それはつまり……。


「外部の人間を当て馬にして、ソフィの特異力の観察、僕等の対応の事を、調べていたんでしょう」


「うわ……嫌な事をする奴等だな……ということは、今のところ……」


「はい、奴等の思うつぼかもしれません」


 それならしょうがねぇな、誰か警護に付かねぇとな。というか、今まで良く平気だったな。


「あ~あ、窓壊してくれちゃって。まぁ、直すのはお城の人だから良いけど」


 おいこら、聖女。これは日常茶飯事なのか? 平気な顔して、壊れた窓を見てるなよ。


「ジル~私は別に大丈夫よ、いつもの事だし」


「そうはいかないよ。ジュスト中佐の命令だからね」


「あっそ……」


 いやいや……いつもの事なんだろうけれど、いつもは警護している奴がいるからだろう。


「それに、また1人で暴れられて、教会を半壊にされても困るからね」


「なによ……しょうがないでしょう。昔の事を出させないでよ」


 お~い、おいこら……またこれだよ、疎外感。良いんだけどな、良いんだが……俺にも説明しろや!


「おい……もしかして、お前は戦えるのか?」


 すると俺の言葉に、ソフイは一瞬迷った顔をしたが、その後俺の顔に向かって、拳を突き出した。だけどその瞬間……。


「なっ……!!」


 俺の顔の横を、もの凄い衝撃が飛んでいったと思ったら、外にあった木が、激しい音を立てて、縦に真っ二つに避けた。というか、破裂したと言った方が良いな……。


 それとあのな……ここ教会の中だ、衝撃破が壁をすり抜けた?!


 そして、倒れる木の音と一緒に、ソフィは呟いた。


「自分の身は自分で守れるから」


 戦う聖女様かよ……嘘だろう。本当になんなんだよ、この世界は……。


 すると、その後ソフィは、俺に近付いて来ると、更に顔を近付けてくる。近い近い……。


「良い? さっきはあなたの力を見たかったから、あえて手を出さなかったの。あれくらいの奴等なら、私ならもっと早くに倒せるわ」


「分かった、分かった。聖女様の力は分かったよ。だけどな、まだ子供だということを忘れんなよ」


「なによそれ。この世界じゃ能力のある人は、子供だろうと戦場に立たされるのよ。だから悪いけれど、あなたみたいな平和ボケしてる人は、ここでは長生き出来ないのよ。さっさと宿に行きなさい。殺す覚悟もないくせに」


 なんだそりゃ、殺す覚悟? そんなの、ジルもそうだろうが。


「言ってくれるねぇ。だけど、俺だけじゃねぇだろう。ジルだって……」


「あの子はしょうがないの。なにも分かってないくせに、子供扱いして決めつけないで!」


「……そ、そうか」


 もの凄い剣幕な顔で迫られて、思わずこっちが迫力負けしてしまったわ。なんだこの世界の子供は……。


 それとも、こいつらが特殊なのか? くそ……良く分からないが、なんだか俺が、戦争を知らないバカなガキみたいな扱いされてるぞ。

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