高校生の神様

@kana

第1話




気づいたら、高校生になっていた。


中高一貫のため、中学生から高校生になっても全く環境なんて変わらない。制服だって、校舎だって、通学手段だって。何一つ変わらない。



ただ、いつもの電車に、妙にきっちりとした制服を着た、私と同年代の子が乗るようになっただけ。







その子たちが言ってることはみんな一緒。





「JKになったことだし、プリ撮ってー、あ、彼氏も作ってー……やばい、本当にJK楽しみ!!」


「わかるー!!やっぱり遊び倒さなきゃ、人生損だよね、損!!!」


「遊ばないJKとかJKじゃないよね、よし、遊ぶぞー!!」











なにそれ、ふざけてんの!?!?

遊ばないJKはJKじゃないとかあんの!?!?


その感覚が全く理解できない。まあJKとか憧れてないから別にいいんだけど。




どんな子たちも大抵そういった趣旨の内容の話を朝っぱらから大声で話してくるもんだから、もう嫌ったらありゃしない。


「JKなんだし大声で喋ってもいいよね?(笑)ウケる〜〜(笑)」じゃねーよ。そんな特権ねーよ。隣のおっさん引きつった笑みしてるよ。






高校生になって、高校生というものがよく分からなくなってきたこの春の日。



同年代の子たちのいうことに、共感できないわーーーその感覚理解できないわーーーーとか、マジで私の人生終わってるわーー(笑)とか思っていた、この日が。




まさか、人生を変える日になるなんて……












いつものように、1限50分の授業を6コマも受け、疲れ切った体で電車に乗る。



今日も疲れた。生物の先生の頭は相変わらずハゲて後ろを向くたびに光り輝くし、数Iの先生なんて急いで教室来てくれたおかげでただでさえない髪の毛が数本靡いててもう本当に笑った。



まあ2人の授業両方寝たんですけど。



授業なんてめんどくさい。高校生になってから周りの子は勉強勉強。周りに合わせるために私も日々毎日勉強勉強。そんなにお勉強するのって偉い?って思っちゃうけど、誰かに聞くのもなんか恥ずかしくて言えない。




「あー、ねっむ、早く家帰ろ」




ようやく家の最寄の駅に着いて、改札を抜けたらなんだか急に肩の力が抜けたような気がして、つい独り言が出てしまう。



いかんいかん、1人で喋ってるとかどう見ても危ない奴じゃん。




誰も見てないよね?少々不安になりながらも恐る恐る周りを見渡すも誰もいない。よし、私の勝ちだわ。



安心して家へと一歩を踏み出した、その時——




「おじょーさん、眠いの?」




「へっ!?!?」






真後ろから声がして、振り向いてみるとそこにはなんと超絶美形モデルばりの長身イケメンが……!!!



なんてことはなく。





やけーーにもさったい毛量の多い長髪に無精髭を生やし、メガネを掛けたおじさんが突っ立っていた。






「え、君さっき眠いって言ってなかった?」






あ、でもなんか足長いし細いしスタイル良さそう。


いーなーこんなにスタイル良かったら人生勝ち組だよなーー……あ、でも顔が。






「なんか、残念ですね」



「いや俺なんで初対面でそんなこと言われなきゃいけねーの」






割とツッコミいいな……これは容姿を性格でカバーしてる系男子……いや、男か……





「今絶対ツッコミ良いなとか思ったでしょ」



「え、なんでわかった?自覚済みなの面白いですね」




「だからなんでそうなる?」






違うってばー、と小声でつぶやき、小さなため息をつく黒髪モハモハ男。


つかなんでお前が疲れてるみたいになってんの。そっちが話しかけて来たんでしょ。疲れてんのこっちだわ。





「あ、それで本題なんだけど」



「……は?」



「あの、俺も一応用が合って君に話しかけたんだからね、決して変質者で女の子と喋りたかったとかそういうんじゃないんだからね」






なぜか必死に謝る黒髪モハモハ男。そんなに必死になると逆に怪しいってことを彼は知らないんだろうか。








「ん゛んっ、で、えっと、その話しかけた理由が」



「はぁ」




「……なんと!今日からキミが立派な高校生になるまでお手伝いします!!はい拍手!!!!」








……1人パチパチと嬉しそうに拍手してるけど最高に意味がわからない。


なにそれ、立派な高校生とかなに。






「あ、ちなみに僕は、……うーん、高校生の神様、とでも言っておこうかな!」




「ずいぶんとバカっぽい神様ですね」






「ええ、そんなこと言わないでよー、俺だって別に好きでやってるわけじゃないしーなんならチャンスの神様とかしたかったしー」






「え、あの前髪しかないとかいうやつ?」






「あ、そうじゃん前髪しかないんじゃん、あーーそうかーーじゃあ、うーーん……ってそうじゃなくて!!

とーもーかーく!!僕は!!君を!!立派な高校生にするために来たんだから!!わかった!?!?」






くそ、意外とノリいいし話誤魔化して逃げれるとか思ってたのに誤魔化されてくれなかった。なかなか手強いなこいつ。









「……てゆーか、そもそも立派な高校生ってなんですか?」






「……そこからかよ」







呆れた視線を向けてくるけど分かんないから仕方がないじゃないか。なんなの、それ。その定義なに。






「あー立ち話もなんだし、ほら、ひとまず家帰って、そこでお話ししよ」




「……家に上げろと?」






「うん」







当たり前じゃんっていう雰囲気醸し出してるけどあなた顔見えてませんからね。そのなっがい黒髪で隠れて見えてませんからね。




まぁ実際立ったまま話すっていうのは正直しんどい。なんでこんな晴れた空の下重いリュックを背負いながらおじさんと話さなきゃならないのか。


しかし、そのおじさんを家に上がるというのは正直気がひける。どうしよう。


そんなことを悶々と考えてたら、





「ほら、行くよ!!」



「うぉあ!?」






急に腕を引っ張り、ずんずんと進んで行くこの目の前の男。なんなの腕いた……くないし、無駄に超絶加減の良い強さで引っ張ってくるし、いやしかし脚長いな、ほっせーーなにあれ棒じゃん、あ、でも程よく筋肉ついてるしいいかも、いやでも……






とりあえず神様とかキモいわ。

家にあげたくない。


そう思い、全体重をかけて必死に引っ張られるものかと抵抗をする。





「ちょっ、とーーおーもーいーんだけどーーー、」




「ふざけんな何家まで来ようとしてるんですか気持ち悪いですよーーー」




「……ったく、もう仕方ない。ね、今から絶対舌噛まないように注意するんだよ」





「は?舌?」





「ちゃんと俺注意したもんねーー」






「はぁ!?」









次の瞬間、目の前が真っ白になって強い風が私たちを包む。



なに、なにが起きてんの……!?!?





そして、風が収まり、目を開けると、そこは—————————








「なんでぇ!?!?!?」




「ふふふーすげーだろ」







私の部屋の中でした。










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