第2話






「じゃ!早速説明を始めようか。あ、楽にしてくれていいよそんな重い内容でもないし」




「は……?」







まるで我が部屋かの如く当然のように私のベットに座って胡座をかく目の前の男性(推定30歳前後)。





色々と思うところはあるけれど、なんだかめんどくさくなってきて大人しく背負っていたリュックを下ろして床に座った。







‪「で?話すことって?」







「……日向 ユイカ15歳。市内の中高一貫女子校に通う現在高校一年生。身長162cmたいじゅ……」




「ちょっ、なにあんた話してんのよなにその紙!!!!!」





「なにって、ユイカちゃんのプロルィール」







語尾にハートつけてるんじゃないかっていうくらい甘え口調で言われても気持ち悪いことこの上ない。



なにを話すのかと思えば、持っていた薄っぺらいカバンから取り出した一枚の紙を見てニヤニヤしながら口を開いた彼。


持っている白い紙。そこに私の個人情報がびっしりと書かれてるんだろう、反対面から見ても細かい文字が光で透けて薄っすらと見える。








「つかなんなの!?なに!?あなた誰よ!!」




「だから、俺は神様だって言ってるじゃん。分かる?かーみーさーま!ゴット!!G、O、D!!」




「そのくらい分かるわうるさい三十路」





「知ってる?神様には年なんてないんだよこれでまた一つ賢くなったね」





「……お腹空いたな〜〜」








付き合うのもアホらしい。もう無視してリビングでお菓子でも食ーべよ。



部屋を出ようとドアノブに手をかけた、その時。







「ユイカちゃんはさ、今を変えたいと思わないの?」






「……え?」







「スポーツ、学力、芸術……あらゆる業界で君と同世代の子たちが活躍しているのは知ってるでしょ?」






「ま、まぁ……」







「ユイカちゃんは、このままただ1人の"平凡な女子高生"のままで終わっていいのかい?」








「……平凡な女子高生、ねぇ」







「そう、どこにでもいる、女子高生」









やけに強調してくる彼の顔は至極真剣で。



なんで、とも思うけどなんだか私も真剣に考え始めてしまう。







「1度きりしかない人生。その中でも高校生ってのはたったの3年間しかない。その3年で君がどんな君になるかで、君の未来は決まるようなものだ」








「そ、う……だね」








3年。


きっとそれは今までの"3年"とは比べ物にならないくらいの速さの"3年"なんだろう。


その期間でどうなるか。なにを学び、なにをしたいと思うかで、確かに私の将来は決められるようなものだ。








「そんな3年間をとーーーっておきの、悔いのないような時間にするのをお手伝いするのが僕ってわけ」







「……そんな話聞いたことないんだけど」







「そりゃ今初めて言ったからね」








「そういう意味じゃなくて、その、そんな手助けしてくれる神様、だなんて聞いたことない」








「……ユイカちゃんは根っからの理系なんだね」








「は?」









絶対バカにしてんだろその言葉。理系だからってなんだよそうだよ数理できるけど国語はさっぱりできない系JKですけど何か???




少しは想像力とかさー、そういうものも働かせようよ全く今の子は頭固いんだから、とブツブツと呟く三十路ジジイ。うるせーよ。









「ま、そーゆーわけで。明日から本格的にサポートするんで。よろしくね」






「無理かな」








「そんな即答しないでくれるかな」






「無理かな」









「……オジサンチョットメンタルヤラレソウナンダケド」







「無理かな」









「……っとにかく!分かったね!?明日からだからね、伝えたからね」











早口で言い切ると、彼を中心にして風の渦ができたかと思えば一瞬、白い光が目の前の景色を覆った。





そして目を開くと、彼の姿は既に消えていて。













かくして私のめんどくさいめんどくさい神様との毎日が始まるのだった……—————






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高校生の神様 @kana

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