宇宙少年と銀河少女~Space Wanderer~
阿礼 泣素
宇宙の放浪者
「俺たち……この宇宙で死んで、この宇宙の塵になるんだな」
「いーじゃん、私達が人類の新たな歴史の一ページになるんだから。光栄なことじゃん」
少年少女は歓談する。少年たちは自らに課せられた重要で、唯一の任務を全うするためにこの狭い空間に幽閉されている。
「って言っても、俺たちはただの観察者でしかない。ただの歯車ってやつだ。……まあ、歯車ってのも一体何なのか、俺たちは知ることさえもできないんだけどな」
「そうやって気取ってても、一緒だよ。いっちゃんは私と一生いっしょなんだからね。運命共同体ってやつだよ」
その言葉だけを聞くと、随分と束縛欲の強い女性の発言のようにも思われるかもしれないが、少年少女はもうこの広い宇宙の中で、たった二人で生きるしかない。それが、彼らに与えられたたったひとつの生きる意味なのだ。
「そうは言ったって、あーちゃん。俺たちはもう一生この電子辞書を読んで過ごすだけしかできないって考えたら、ちょっとくらいはさ、センチメンタルにもなっちゃうだろ?」
「まあ、それはそうかもしれないけどさー、いっちゃん。ふつうに考えてみれば、本当は人ってのは意味もなく必死に働いて、意味もなく呆気なく死んじゃうんだから、意味のある私たちの方がよっぽどいいじゃん?」
――そう思わない? 思おうよ。
少女は少年を窘めるように言った。少女は少女で思うところはあるが、どうこう言ってもこの状況を変えることはできないと分かっている。だからそれ以上は言わない。弱音を吐いたって、弱気になったって、意味なんてない。私たちは生きているだけで意味があるんだ。
少年、
宇宙航海15年目。二人はこの宇宙で生まれ、この宇宙を旅して、この宇宙で死ぬ。言ってみれば、宇宙の放浪者だ。
「俺たちは一体どこへ向かってるんだろうな。宇宙に果てはないことを証明するために、果て無き旅に出るってちょっと矛盾してるんじゃねーか?」
「まあ、それも含めての旅ってことでしょ。無かったら無かったで、私たちが終わったところが終わりだし、まあ、そんなに重く考えなくていいんじゃないの」
――無重力だけに。
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