②アレイス

「こんな子を僕が教育する……なんで?」

 次に植物の魔術。それを教えてくれたのは緑色の左に流した少し目にかかって隠れる長さの前髪が特徴的な髪型、金色の瞳に三白眼を持つインテリ契約書、アレイス・メイウェイル。金色のモノクルをつけ僕の知人の中では白衣を最もうまく着こなす現役医師。普通のVネックの黒い服に紺色のジーンズを穿いているだけなのにどうしてこれだけ差がつくのだろうというくらい顔も整って、スタイルも良い俗に言うイケメンだった。男の僕でも思うくらい。ただ性格がとても面倒くさがりで、ある意味先生の中で一番話しにくい先生だった。

「えー、じゃあまず噂の青い炎見せてよ。何か気持ち悪いくらいメリア君が騒いでたからちょっと僕も興味がある」

「め、メリア先生が騒ぐ!?」

「別にそう驚くことじゃないでしょ。メリア君なんてすごいことがあるとすぐにハイになるからもう見慣れたよ。態度や口調の割には面倒見も良いし、人としては僕より全然できてると思うよ。まぁそれは良いとして見せて。それを見たらちゃんと魔術教えるから」

 アレイス先生はあんまり笑わない人だったけれど、発言はとても優しくて気持ちは十分に伝わってくる人だった。そして後々この人はメリア先生の恩師であることを知った。顔が整っているせいかあまり年上には見えない、というか同い年かとずっと思っていた。そのくらいあの垂れ目やキレのある肌は彼を若く見せていた。

「まず、植物を出すときは好きな花を連想する。ちなみに僕は朝顔が好きだよ。」

「そうなんですね、緑の力で出る植物が人によって違うのってそういう意味があったんですね。」

「そう。酷い人なんてその植物の種類が違うことにすら気付かない。植物と言うのはとても面白くて奥が深いと言うのに……」

「朝顔、固い絆に愛情。花言葉なんて乙女チックなんですね」

 決めました、僕は桜にしたいです。

「……精神の美、それを手に入れるには相当な努力が必要になるねぇ?」

 とりあえず、その手首に絡みついた朝顔の蔓を魔術で切ってごらん。火は禁止にする。そう言って先生は珍しく笑顔を見せながら僕の手首を蔓で縛り上げた。

 こうして、僕は自分の桜を手に入れるため蔓で腕を引きちぎられそうになりながらも……先生の面倒くさがりの性格に精神がやられそうになっても必死にもがき桜を扱うほどの力を手に入れた。

「イリアス君の桜は、万年輝く美しいものとなるだろう……」

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