罠の誘い
「ここは……?」
「ここは世界〈ダルミト〉だよ。暗くてじめじめした嫌な場所だね」
少し時間が経って、目が覚めたヌル君は、辺りを見回すと。驚いたような顔をしている。驚いたのは僕達なんだけど。ロウタちゃんなんかは固まってるし、グリアちゃんは……。ごめん、表情が読めないや。
「リア? グリア? ロウタ? 何故?」
「いや、聞きたいのはボクの方なんだけど」
「ギヒャヒャ。流石に、驚いたぜ」
なんか動揺からか、ボーっとしてるけど。ふと、なんか思い出したように慌てるヌル君。あ、メビウスの〈ゲート〉を取り出して投げた。やっぱり、メビウスと何かあったのかな。
「この鍵は、メビウスの位置補足の装置だ。早く壊した方がいいかもしれない」
そう言うけど、投げられた鍵はなんか光を放って。扉のようなものを出現させた。もしかして、これは入って来いって事なのかな?
「どうする? まぁ、十中八九罠だと思うけど」
「この先にメビウスの気配がするな。ギヒャヒャ、気配も隠さずに駄々漏れなんて、完全に罠だよな」
精霊であるグリアが言うんだから間違いないし、気配を隠すのが得意なメビウスが捕捉させるなんて、これは完全に罠だけど、メビウスに会うにはここを行くしかないね。
「……。行こう」
迷った末にヌル君は決めたんだね。そうだよね、進まないと何も変わらないもんね。それなら早く行ったほうがいいと思うな。
「僕はここで門番してるから、三人とも行っておいで」
「うん? 何のつもりだ?」
「さっきまでついていくって言ったけど、状況が変わったからね。それに、グリアちゃんは僕を利用する気だったんでしょ? 早く行きなよ、精霊なら何が来てるかわかるでしょ」
「先に進もう」
「ギヒャヒャ、それならそれでいいか」
「完全にボクついていけてないんだけど……」
ヌル君、ロウタちゃん、グリアちゃんは扉の先に進んでいったね。さて、2人のお客さんの相手をしないといけないね。信仰の天使オールグローリア、偽りの天使フェイクライフ。
「あぁ、その先は先ですら無いと言うのに。壁に突き当たり、それを突き崩すことを強いられ、困難な苦悩となるだろう」
「私は決めました、あの人を苦難から救うと……。人を救うのが、私の存在意義であり、私が求められた全てなのです! さぁ、そこを退きなさい」
「それは出来ないね。君たちの勝手な正義で、ヌル君の選択を否定したりはさせないよ。
扉に障壁を張って、進入を防ぐ。僕はヌル君の選択に任せようと思うよ。例え、それが無難な選択だとしても、きっと何時かは……。まぁ、どうせ嫌でも次があるんだ。気楽に考えないと耐えられないね。
「あぁ、俺は。箱を壊すだろう。可能性を壊すだろう。だが、それは、傾いた塔で球体を落とすことを否定するのだ。あぁ、そうだ。そんなことをさせてはいけない、現実はいつでも残酷だ……」
「残酷だからこそ、救済が必要なのです。私は、全ての人を救いたい、こんな世界にも希望はあるのだと、そう思いたいのです。私の手の届く範囲かもしれませんが、なんとしても救ってみましょう!」
メビウスも、僕らも、きっとヌル君に非常な現実を突きつけるんだろうね。それによって、ヌル君がどんなことになるのか、それは想像することだって出来ない。だけど、選択できるのは、もうヌル君しか居ないんだよ。だから、僕はたとえ、ヌル君が現状を変えられないからといって、その全てを受け入れるつもりだよ。
「君たちの正義何て、僕には興味ないね。竜は何時だって身勝手なんだ。さて、ここからは僕の身勝手なんだけどねぇ……。
全ての能力を無効化するエリアを展開する。これによって展開中は僕も能力を使えなくなるし、天使だって能力を使えない。そして、このエリアが消えてしまうまで、僕でさえ解除も出来ない。
「たまには、頭を使わずに、ただ殴りあうバトルなんて、とっても面白そうだよねぇ?」
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