破壊の真実

「その前にこれあげるよ」


 アローンクローズからさっきの鍵を渡された。良いのだろうか、おそらく世界を渡る道具だと思うのだが。


「僕らには無用の長物だからね、こんな鍵無くても移動できるもの。それに、これは神聖の管理者が戯れにに創ったものでね。この鍵が使えるかどうかで、神聖の管理者が生きてるかどうか判別できるオマケつき。どうも君はメビウスのことを気にしてるみたいだからね。うん、解ってるよ。世界を破壊しようとする存在を放置できないとかそんな感じでしょ。ごめんね、僕らにはそんな事興味ないんだ」


 神聖の管理者の力を使って転移しているようなものなのか。そうなれば、神聖の管理者が倒れれば使えなくなるのも当たり前の話だ。それよりも、神聖の管理者の力を使っているという事は、こちらの位置がばれないか? いや、管理者の探知能力を考えれば今更の話だ。おそらく神聖の管理者はレアルのように探知範囲が狭いなんてことも無いんだろう。


「ありがたく貰っておく。話とはなんだ」


 このまま鍵について話しても無駄に長い話を聞かさせるだけだ。こうなったら使えるものは使わせてもらおう。ついでに、嘘をつけないという天使から情報も貰っていこう。


「解ってると思うけど。神聖側も邪悪側も、君にとっては味方にならない可能性があるって事だよ。少なくとも、神聖側というか、メビウスの考えには君は納得しないだろうし、邪悪側だって理想を見すぎて何にも出来てないからね。だから、君はどこかに所属するよりも、自分で考えて自分で行動した方がいいと思うんだよね。なにも、この世界の派閥に巻き込まれる必要はないでしょ」


 そうだったな。神聖側が敵となるからといって、邪悪側が味方になるとは限らない。寧ろ個人的に動く方が得策か。


「なるほどな、考えておく」


「それと、神聖の管理者だけど。実は、世界を滅ぼしてないんだよ」


「は?」


 それはどういう事なんだ。そうなってくると意味が解らないというか、今までなんだったんだ? そうなるとこうなった原因は違うのか?


「メビウスは確かに世界を破壊しようとしてるし、そのための力も集めたんだ。だけど、メビウス以上の適任が居たんだよ。本人としては自分の力で滅ぼしたかったんだろうけど、メビウスには滅ぼすだけの力を扱う事が出来なかったんだ。うん、それなら滅ぼした奴は誰だって話だよね。うん、解ってるよ。そいつの名前は破壊者プロキア。今も生きてるかは解らないなぁ、だって、人間だもの」


「人間にそんな事できるのか?」


「正確には人間を超越した存在だけど、本質的には人間だから問題ないよね。人間だからこそかな、何しろね〈外部〉としての存在を受け継いだ人間で、しかも〈零の映写機希構〉の定めるシステムから外れた行動をしてしまったせいで、プロキアは世界のシステムを無視できる存在になってしまったんだ。うん、本来この世界の住人なら、こんなことにはならなかったよ。なにしろ制限がかけられてるからね。だけど、プロキアは殆ど〈外部〉としての存在だったから、この世界の住人にかけられてる制限が無かったんだ」


「つまり〈外部〉とは、この世界では余る存在なのか」


 確かに外部と言うぐらいだ、あまり良いものでは無さそうだ。少なくとも、この世界にとって。しかし、この話を聞くと、メビウスには世界を滅ぼすほどの力は無いという事なのか。


「まぁ、外部は外部だからね。そうそう、メビウスが世界を滅ぼす力を扱えなかったのは、この世界の住人にかけられてる制限が原因だよ。まぁ、そうだよね。この世界が不用意に壊されないように対策位するだろうね。うん、解ってたよ」


 まるで、この世界が何者かによって作られたかのような……。いや、確かにそうかもしれない。この世界は人工的過ぎる。


「この世界は作り物なのか?」


「おそらくそうだよ。多分〈外部〉の誰かが作ったんだと思うんだ。だから、この世界の核である〈零の映写機希構〉に接続する為には〈外部〉に行く必要があるんじゃないかな。そういう事は中立の管理者が知ってそうだね。なにしろ、あの人はこの世界の門番みたいな存在だからね。うん、人ではないけどね」


 中立の管理者か、目的が定まったな。中立の管理者に聞きこの世界について知ろう。そして、そんな存在であれば自分についても知っているかもしれない。


「目的は定まったみたいだね。中立の管理者のところに行く方法だけど、僕が探してあげても良いよ。君には先にやるべき事があるだろうからね。うん、なにそれって言うんでしょ。うん、知ってた。邪悪側を大人しくさせないとダメでしょ、倒す必要は無いけど。下手な行動は取らせないようにしないといけないんだ」

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