異世界に召喚された僕がロボットに乗って魔王と戦うことになった件

けろよん

異世界召喚編

第1話 異世界に呼ばれた少年

 勇希の父、竜司はよく夢を語る男だった。

 自分は世界で活躍するんだとか、ロボットに乗って戦うんだとか、凄い宝を手に入れるんだとか、そうした子供じみた夢の話だ。

 母はそんな父をいい加減でろくでもない男だと嫌っていたが、勇希は夢を語る父の姿が好きだった。

 ある日、父が行方を眩ました。母はあきれたため息をついていたが、勇希はきっと父は夢を求めて冒険に出たんだと思っていた。


 そうして時が流れて勇希が中学生になったある日の帰り道、彼は異世界に転移した。

「なんだ?」

 不思議な浮遊感が収まると勇希は魔法陣の上に立っていて、周囲にはファンタジーな恰好をした人達が大勢いて騒いでいた。

 どこかの神殿のような建物の中だ。勇希はとりあえず人々の話に耳を傾けた。彼らは一様に驚いているようだった。

「おお、召喚に成功したぞ」

「彼が勇者様なのか?」

「え? 勇者?」

 その言葉に勇希が驚いていると綺麗な杖を持った少女が進み出てきた。立派なドレスを着たお姫様のような少女だ。

 彼女は気品のある穏やかな笑みを浮かべて言った。

「驚かれるのも無理はありません。わたしはこの国の王女レオーナ。あなたをこの世界に招いた者です。お願いします。魔王を倒してください」

「いや、いきなり言われても困るんだけど」

「困っているのはわしらの方じゃ!」

 勇希が困惑しているとくわっと目を見開いて立派な白い髭をした老人が乗り込んできた。

 宝石やマントで着飾った豪華な身なりと頭に被った王冠から彼は王様だろうと勇希は推測を付けた。

 王女レオーナがそんな勇希の推測を裏付けてくれた。

「お父様、そう怒鳴らなくても」

「いや、言わせてもらおう! わしらは困っておるのじゃ! ならばパパッと魔王を倒しに行って助けてくれるのが勇者の務めというものじゃろう!」

「勇者様、お願いします」

「うーん……」

 これは「はい」と答えるまで離してくれないパターンだろうか。

「でも、僕に魔王を倒すなんて出来るんだろうか」

 勇希は普通の少年だ。神様に会ってもいなければ特にチートなスキルを授かっているわけでも無かった。ステータスを念じてみてもオープンしなかった。

 勇希は困っていたが、王女レオーナは安心させるような朗らかな笑みを浮かべた。

「心配には及びません。召喚に応えてくれた勇者様に授けることになっている素晴らしい神様から贈られた武器がこの城にはあるのです」

「あ、そんな便利な物があるんだ」

「案内しますね。ついてきてください」

「はい」

 勇者が世界を救ってくれるとなってその場には安心した空気が広がっていった。

 

 召喚の魔法陣があったのは高い塔の上だった。長い階段を降りて見晴らしのいい渡り廊下に出たところで勇希はそれを見ることが出来た。

 ここはファンタジーの世界の城のようだった。勇希は前を歩く王女様に話しかけた。

「それで僕が使うことになる武器ってどんな物なの?」

「それは実際に見てもらった方が早いと思います」

 勇者が使う武器といったら聖剣とか伝説の武器の類の物だろうか。でも、勇希にはバトルの経験は無かった。喧嘩も苦手だ。

「僕がその武器を手にしたとして果たして魔王に勝てるだろうか」

「大丈夫ですよ。あなたは神様に選ばれてここに来たのですから。わたしは何の心配もしていません」

「そうですか」

 勇希は少し心配だったのだが、そうまで言われては黙ってついていくしかない。とりあえず行けるところまで行ってみよう。そう判断することにした。

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