Die 2 俺の話

『僕』から殺しを頼まれた。

『彼』の中から『俺』を拾って、復讐を依頼してきた。

『俺』は、怒りから産まれた

 ぐちゃぐちゃの感情のうねりから、噴きだす様に別れた。

 ヒドイ世界だった…。

 秩序を無くした混沌。

 仮に『俺』が自分に名前を付けるなら『カオス』と名乗るだろう。


 産まれた瞬間には、真っ白な心も成長と共に色んな色を取りこみ、汚され混ざり…黒くなっていく。

 それが何色であろうとも、しだいに黒に近づいて行く…。

 行き着く色は『黒』なのだ。

『片山 崇』は、子供の頃に色彩が壊れただけ…。

『俺』が産まれた頃には、もう…。


 でもマシなほうだろう…純粋な殺意として産まれた『俺』よりは…可能性として選べたのだから、選ばなかっただけで。

 結果、『俺』という存在を産むことになった。

 人を殺めることが惡ならば、『俺』は惡だ。

 純粋な惡だ。

 この手に握られたリボルバーと同じ…人を殺めるために造られたコレと同じ。


『俺』は他の誰とも会ったことがない。

 依頼者はもちろん、仲介人とも会ったことは無い。

 独り…産まれたときからずっと独り。


 ただ…写真の人物を殺すだけ…面識など無いはずなのに…それでも、殺意が湧き上がる。

 それは、悲しみから…憎しみから…湧き上がる。

 不思議と他の感情を抱くことはない…無かったはず。


 よく覚えてないんだ…眠って、目を覚ませば…今日が何日か確認する。

『俺』が起きているということは、殺しをするということだ、そのために『俺』がいるのだから。


 でも…もういいみたいだ。

 きっと…『俺』の役目は終わったんだろう…。

 よくわかるよ、消えていくのが、よくわかる。

 消えるというのは正確な表現じゃないのかもしれない…戻ると言ったほうがいいのだろう。

 結局、殺すためだけに産まれた『俺』は、誰のために存在していたのだろう。

『片山 崇』という男の1部であったことは間違いない。

 欠片のひとつ…無数に散らばった欠片のひとつ…モザイク画のような美しさはないのだろう。

 歪で凸凹で隙間だらけ…それでも生きてきた証。

 これを美しいと誇れるのならば、『俺』は産まれなかった。

『片山 崇』は、壊れた…壊れていたのだろうか。

 きっと、自分で壊した。

 独りで在る事に耐えられなくなった、そしてバラバラに別れた。

 割れた欠片のいくつかは自我を持ち…それでも『片山 崇』に戻ろうとした。

 誰一人、『片山 崇』になろうとは思わなかった。

 ただ…戻るために…ひとつになるために…。


 これは…「さよなら」なんだろうか…それとも…。


「ありがとう」

 薄れいく…溶け込むような気怠さ。

 小さく聞こえた感謝の言葉は、オマエなんだろ…『片山 崇』

『俺』は、オマエで良かったんだろうか?

『俺』がいなければ…もしかしたら、違う人生もあったのかもしれない。


 誰とも交わることは無かったけど…オマエと話してみたかったな…。

 礼は要らない…『俺』は『俺』の本分を全うしただけなんだから。


 あぁ…それでも…涙が流れるんだな…こんな『俺』にも…。

 最後まで面倒看てやれなくて悪いな…。

 でも、最後のトリガーは『俺』が弾くんじゃないようだ…。

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