Die 3 私の話
昔からそうだった…。
子供の頃から、嫌な事があると、コイツは『私』に押し付けてきた。
コイツの中で、一番年長者である『私』に。
だから、年長者たる『私』が、この役割を担うのは当然のことなのだろう。
『私』は、コイツから日常生活を譲り受けた。
別れた欠片達の中で、もっとも理性的な部分。
いや…そう在ろうとした部分。
だが…上手くはいかなかった。
あるいは、『私』が上手に立ち回れたのならば、この結末は回避できたのかもしれない。
ここに辿りつくまでに分岐点は幾つか存在したのだから。
ここを目指したわけでもない。
弱い『片山 崇』が変わりたいと願った…その願いを受け取ったのが『私』だ。
『片山 崇』の生きた時間の大半は『私』なのだ。
『彼』は『私』によって『片山 崇』足り得た。
弱かった子供は…賢しく、利己的に振る舞うようになり、それが自分だと錯覚してしまった。
泣いてばかりいた自分を眠らせて…。
どちらがということはない。
誰もがそうであるように、ある時は悪意を、また、ある時には愛を、他人に向けた。
大半の人間は、それが混ざり合って、自己を形成していく…。
『片山 崇』は、それが極端だっただけだ。
当然だ、『彼』とは別の『私』や『僕』・『俺』が入れ替わっているのだから…。
個々には性格というべき、役割もあった。
明確に分離しているだけに、それは傍目には極端な変化と見えただけなのだろう。
『私』が絶望に堕ちた時…『私』はミシッ…ミシッと音を立てて、やがてガラガラと崩れた。
『私』は『彼』の中にいた『僕』に『片山 崇』をしばらく任せた。
『僕』は『ボク』に近しすぎたのかもしれない。
『僕』は『ボク』の悲しみを背負う役割に徹した。
結果、『ボク』は幸せそうに見えた…『ヨーコ』は『ボク』を愛してくれた。
このまま…『僕』は『ボク』に任せたまま消えていけば良かったのかもしれない。
それが出来なかったのは、『私』のせいなのだろう、『僕』に向けられる敵意は止むことなく、結果『僕』は『俺』を目覚めさせてしまった。
『私』に出来ることは、『僕』に『ボク』を守らせること…。
結果、『私』は『俺』に敵意の元を葬ることしか…。
『私』は『僕』に依頼と言う形で、殺しを頼んだ。
『僕』は『俺』にその役を任せたのだ。
警察が追っていた『片山 崇』という殺人鬼の産まれた瞬間でもある。
産んだ自分が、責任を取りたいのだが…それは出来ない。
『私』の最後の役割は、『ボク』を目覚めさせること…。
ハーメルンの笛吹じゃないが…散らばった欠片は、『私』が全部連れてオマエに還るとするよ。
最後は歪に統合された『ボク』に委ねようと思う。
この『片山 崇』という器の行く先は、『ボク』に託すのが正しい。
全ての欠片を集めて…『ボク』に戻ろう。
その全ての経験を『ボク』に返そう。
その全てを受け止めて、『片山 崇』という男に戻ればいい。
やっと…眠れるんだ…もう2度と目覚めませんように…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます