第29話 GRAY WAVE
この男に関しては、なぜか…なぜだろう…不思議な感情が入り乱れる。
正直、殺すのは簡単だ。
窓の向こうにいる禿げあがった後頭部に、このまま銃弾をぶち込めばいい。
不用心というのか…それとも自分が狙われるという自覚がないのか…。
『フジカワ・タカヲ』という男は、どこか抜けている。
仕事は出来るようだが…人間的に抜けている。
殺されるなんて思ってないのだろう、本当に…。
俺は、少し考えて、『㈱I電気』を後にした。
「じゃあリクエストに応えよう…」
俺は、そのまま『フジカワ・タカヲ』の自宅へ向かった。
近所に通報されたくないので、セカンドバックにタオルを詰めてサインレンサーの代わりに使う。
Now It’s a show time!!…遠慮はいらない。
「Rock'n'Roll !!!!!!!」小声で呟いて、俺は、ドアを開けて土足のまま、リビングへ向かった。
小太りの奴の妻、悲鳴より早く2発ぶち込む。
2階へ上がると、ちょうど廊下で息子と鉢合わせた。
ニコリと笑って、3発ぶち込む。
5発撃ち尽くして、薬きょうを廊下にカラカラと落として銃弾を込める。
全部の部屋を回ったが、どうやら娘はいないようだ。
さて、どうするか…。
そうだ、先に帰ってきた方から殺そう。
俺はリビングへ瀕死の息子を蹴りながら転がして運んだ。
ソファに座らせ、奴の妻を引きずって、その隣に座らせた。
身動きが取れないように手足を縛り、ソファに固定する。
しかし、この家族は皆、背が高い。
そして重い。
結構な重労働で汗をかいてしまった。
シャワーを借りよう。
少し冷たいくらいが気持ちいい…。
シャワーを浴びて、冷凍庫にあったアイスを食べた。
リビングでボフッと音がしたので拳銃を向けると、瀕死の息子が前のめりに倒れている。
「行儀の悪いことだ…」
面倒くさいので、足で顔を蹴り上げて、そのままソファの背もたれに押し付ける。
「もう少し頑張ってくれよ~男だろ?」
とくにやることも無く、2時間ほどが経った。
小腹が空いたので、コンビニに行って弁当を買って戻った。
どうも、昔から家庭料理というものを口にする気にならない。
特におにぎりは、絶対に無理だ。
母親の握ったおにぎりの不味さを思い出す。
吐き気が込み上げる。
僕が食べれたのは『ヨーコ』と『コトネ』のだけだ。
他の人が握った、おにぎりなんて食べる気もしない。
玄関の鍵が開けられる音がする。
車の音はしなかった、娘が帰ってきたのだ。
俺はリビングの壁に背中を付けて、娘が入ってくるのを待つ。
心臓が高鳴る…この感覚が好きだ。
カチャッとドアノブが回り、背の高い娘が目の前を横切る。
ソファに向かって歩き出して、その異変に気づき、身体が強張る。
俺は娘を延長コードで縛り上げ、娘のショーツを剥ぎ取る。
その蒸れたショーツを娘の口に押し込んで、声を出せないようにして床に転がす。
夕方、『フジカワ・タカヲ』が帰宅して、リビングの惨状に気付く。
俺は後ろから、奴の手足を撃ち抜いた。
顔をこちらに向け彼は叫んだ
「か…かたやまー!!」
俺は頷いて、娘に拳銃を握らせる。
後ろから俺が手を添えて、『フジカワ・タカヲ』の額に銃口を向けてやる。
首を激しく横に振りながら泣いている娘の人差し指を優しく引き鉄にかけてやり、俺は娘と一緒に引き鉄を弾いた。
ゴトンという音と共に、彼の命の灯はかき消された…愛する娘の手で…。
光失った瞳で、なお娘を見ている…。
「良かったじゃないか…大切な人の手で逝けるなんて…羨ましいよ…」
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