ねむいけど圧倒します。 後編


「はぁ、やっぱり賛同するんじゃなかったかなぁ。だるくなってきたぞ」


悠太はまだ続く模擬戦にめんどくさそうに溜息をつく。しかしその間に未だ残っている生徒たちは戦闘行為に移る。


「【求めるは水竜 ウォール】」

「【求めるは雷竜 イヅチ】」

「【求めるは火竜 バース】」


次々に生徒たちは詠唱をし始め、詠唱が終わると手元に直径一メートルほどの魔法陣が浮かび上がる。そこから複数の小さな水の竜と雷の竜と火の竜がこちらに向かってきた。


「へぇ、第二魔術か。だけど究極型・・・には敵わないなぁ。まあいいや、早くおねんねするためにちょっとだけ俺の技術ってもんを見せてあげましょうかねぇ」


「あいつバカなの?全く動こうとしないじゃない」

「ははは、ほんとにな。ついに怖気づいて動こうともしねぇ。まあちょっとは楽しめたんじゃないか?」

「そうですね。とんだ雑魚・・でしたね。」


クラスメイト達は嘲笑う。これから起こること・・も知らずに。


「なに言ってんだあいつら?まあいいや、じゃあいっちょやるか!」


ついに竜達は悠太の半径2メートルまで迫ってきた。悠太は目の前に迫ってくる竜達を避ける....ではなく切った・・・


やっぱり・・・・この程度ならこの剣でも大丈夫そうだな」


すると次々に悠太はなまくら剣を竜達の体を切り裂いていく。ものすごいスピードで。コンマ0.1秒の速さで切り裂いていく。悠太は一歩も動かずに全てを処理し、その場には切る際に起こった砂嵐以外なにも残っていなかった。


「なっ!!」

「嘘でしょ...」

「ありえない!魔術を切る・・なんて...」


魔術を放った生徒達は呆気にとられている。悠太はなんでもないように竜達を切ったのだが、その常軌を逸した行動にクラスメイトたちは唖然する。


この世界の魔術は精密な術式と魔法陣で成り立ち、詠唱をすることで魔法陣を起動させ、魔術を体現している。魔術を切るということは、精密な術式と魔法陣を完璧に理解しなければならない。でなければ魔術を切ることはできない。しかも術式も魔法陣も完璧に理解できる者自体がそもそも存在しない・・・・・、だからありえないのだ。


もう1つの理由が、魔術を切った者など今まで誰一人いなかったのだ。つまり悠太がした偉業はすでに生徒の域を越えているのだ。


「じゃ、終わらすか」


そして悠太は放心状態となっている生徒達を気絶させていく。それもものすごいスピードで。悠太は気づいてない、一瞬ともいえる時間で的確に一撃で気絶させる行為がどれほど常人離れしているのかを。


ほぼ・・全員を気絶させた悠太は、やっと寝れると思い闘技場を後にしようとするがが、まだ一人の生徒が残っていることに気づく。


「何してんだあいつ?」


「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない!!!!!!」


その生徒とはこの模擬戦を計画した張本人である山内であった。そして先ほどまでの余裕はなく、頭を抱え悶え苦しんでいた。その様子に悠太は「あの子大丈夫?もしかして何かに目覚めちゃったの?」と違う意味で心配していた。


「劣等生なんかに!!劣等生なんかに俺が負けるわけがない!!くそ、くそくそくそくそくそがぁぁぁぁぁぁ!!!!」


そして雄叫びをあげながら理性をなくした獣のように悠太に向かって突進していくが、


「おつかれさまで〜す」


その声は事務的で左手であくびを抑えながら言葉をかける。そして山内はばたりと倒れついにクラスメイト全員に勝利した悠太だが、


「俺がまだ残っているぞ?」


そうだ。まだこの人が残っていた。


「ていうかわかっていたんでしょ?こうなるって」

「ああ」

「あとなんで分かっていながら参加したんですか?」

「なあに、常日頃授業中寝てばかりいる霧谷に喝を入れるチャンスだと思ってな」

「はぁ」


悠太は気の抜けた返事をする。


「だが安心しろ、これからやるのはお前の更生目的の闘いだ。手加減はしてやる」


すると、先生から物凄い闘気と殺気を放ってくる。この人手加減する気が全くないな。そして間違いない、これは幾多の戦場をくぐり抜けてきた『本物』だ、他の生徒達とは比べものにもならない『本物』。闘気と殺気が桁違いだ。


「それじゃあ始めるとするか!!」

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