第7話

 この歓楽都市には、陰に日向に深く根を張る組織が存在する。

「リア。入るぞ。」

 誰もが羨む広い部屋。ソファには花束や金のかかったアクセサリ、極上の菓子、溢れかえるばかりのファンレター。

 しかし、彼女の目にはそのどれひとつとして鮮やかに映るものはない。

 それは2年前から、変わらない。

 変えたくても変えられない。

 彼女が見ているのは、ただ一人だけの姿。

 自分のことなど、これっぽっちも見てくれることはないというのに。

 それをわかっていながらこうして心を閉ざした歌姫の元に通ってしまうのだから、やはり自分はおかしいらしい。内心で自嘲した彼───キングは、ベッドに埋もれるようにして身体を横たえている彼女───リアに近づいた。

 さざ波のように広がる髪は、一滴の青を織り交ぜたような銀。一方、華奢な身体を包むのは深い色合いのサファイアブルーのドレス。肌は透き通るように白く、むき出しの肩は触れたら折れそうに華奢だ。

 キングはベッドサイドに腰かけると、ヘアメイクを施した髪を一房引き寄せ口づけた。

「………触らないで。崩れるから」

 感情のない声で言ったリアに、キングは笑う。

「着飾ったまま寝てる奴のセリフじゃねえな」

「昨日は疲れて、寝ちゃっただけだから」

「……どうかな」

 彼はリアの肩を掴んでこちらを向かせた。硬く沈んだ薄青の双眸を見る。感情のないその瞳に不意にいらだちを感じ、キングは長い指をリアの細い顎にかけた。

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