Grand-Sky
懐中時計
第1話
ギシ……とベッドをきしませながら、彼は身を起こした。
大して役目を果たしていない、申し訳程度の厚さのベッドサイドのカーテンを開けると、すっかり高くなった太陽が鮮烈に部屋に差し込む。その眩しさに顔をしかめながらブーツを履き、彼は立ち上がった。その拍子に、身体を包んでいた薄っぺらの毛布が床に落ち、均整のとれたしなやかな裸の上半身があらわになった。
その左肩から先は、端整な顔立ちとは不釣り合いで無骨な義手が生えていた。
素肌に直接シャツを着て、ダークブラウンのベストに袖を通す。細身の黒いネクタイを無造作に結ぶ。それから、義手だとばれないように黒の手袋を左手にはめる。
これで、いつもの自分───この界隈ではわりと名の知れた青年、エースの完成だ。
(……今日も、つまんねえ一日が始まるのか)
彼はそう思って、ため息をついた。
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