第30話:当主、清国

源内先生の見解じゃ、

「おいそれと侵入した敵が、奥へ入り込めないような設計なんだろう。」

確かに、そうだ。これだけ、迷路になっていれば、敵も侵入出来まい。

「はぁ・・さっすが、平家の末裔だな。用心深い。」山師。


同、邸内、オレたちは、奥へ進むと、警備をしている者が二人立っていた。

オレたちが奥へ行こうとすると、

「こちらはお通し出来ません。」

「おいおい、何だよ。奥に誰かいるの・・・」山師。

「清貴様ですよ。ご病気で臥(ふ)せているので・・・」お松。

清貴と言えば、さっき、おりんが言ったオレにそっくりの男・・・・

おそらく、この平家の世継ぎなのだろうが・・・病床のため、オレにお鉢が回ってきたのか。

お松が別の道を案内した。

「やれやれ・・・」山師はうんざり。「途中、休憩所か、何かね~のか。」


豪壮な警備を潜(くぐ)り、ようやく部屋へ通された。

「こちらに当主、清国様がいらっしゃいます。」

ついにご対面って段取りか。

部屋へ通されると、上座に清国の姿があった。

想像してたよりも柔和な顔立ちだ。だが、やはり平家の血筋か、

どことなく気品に満ちていた。

傍(かたわ)らには、正妻の律、その三男、清秀、そして長女の清姫、愛人のお松と怱々たる面子だ。

「おお、よく来た。」当主、清国。「お前がお雅の子か・・・」

「はい・・清雅と申します。」

「ふ~ン、」清姫。「清貴お兄様にそっくりね。」

「うむ・・・確かに、清貴に似ておる。出かしたぞ。お蝶。」

「はい・・・」頭を下げた。

「待って下さい。まさか、」清秀が、「この清雅とか言う輩(やから)に家督を譲ると言うのでは・・・・」

「おいおい、」山師。「やからって・・・・」


どうやら、不穏な空気が屋敷内を支配していった。

当然だろう。これまでの序列がオレの入ったセイで、一新するかもしれないンだ。

だが、清国は全く意に介さず、

「フン、決まっておろう。息子(おまえ)たちは、皆、病弱で・・・

相続させる訳にはいかん。」

「何を言ってるんですか。」妻の律だ。

「そうです。」先程の三男、清秀だ。「私が居ります。」

「ええ・・そうです。三男の清秀に継がせれば宜しいかと・・・」律。

「フン、清秀か・・・ワシのタネか、どうか、怪しいだろ~。」

「何ですって~、あなたの子に間違いありませんよ。」律が激怒。

「そうですよ。」清秀。「いっくら、父上でも心外です。」

「おいおい・・」山師がオレたちに、「ややっこしい相続問題だな・・」

「シ~」お篠が、口に人差し指を当て、

「それでは・・・」愛人のお松、「分家から婿養子を取れば・・・」

「バカ言え。あんな清継(きよつぐ)の倅に任せたら、この屋敷はそっくり分家に乗っ取られるだろうが・・・・」

「申し訳ありません・・・」お松が畏(かしこ)まった。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る