第27話:揚げ羽の里
こうして、朝を迎えた。嵐は過ぎ、今日は一転、雲ひとつない快晴だ。
オレたちは里への旅路を急いだ。
背後には、追っ手の影がチラついたが、旅の最中、襲いかかってくる気配はなかった。
やがて、一週間が過ぎ、やっとオレたちは目的の地、山間(やまあい)の谷、平家の隠れ里へ着いた。
蝶が舞っていた。見た事もないような大きな蝶だ。
この地、特有の揚げ羽蝶だろうか。
高台から里を見下ろすと風が強く鳴り響き、まるで鵺(ヌエ)の咆哮(ほうこう)のようだ。
「スゴい風ね・・・・」お篠は髪の毛が舞うのを手で押さえ、
「ああ・・」明日真。
「へへ、ここが平家の隠れ里か・・・・」
「揚げ羽の里・・・・」いつか見たような光景だった。
「はい・・」お蝶。「ここは、かつて揚げ羽の里と呼ばれ、この川に沿って一面、揚げ羽蝶が飛んでいたと言われています。」
「この川を・・・か・・・」源内。皆、川を見渡した。
「っで、揚げ羽の里か・・・・」山師。
「何か・・・懐かしいような・・・」オレ。
「じゃ、ここに来た事があるのかい。」お篠。
「いや・・・夢で見た光景に似てて・・・・」
「夢か・・・」源内。
今でいう予知夢だったのかもしれない。
オレは、何か底知れない恐怖を感じた。このまま進めば、必ず何か、悪い事が起きる・・・・今なら引き返せる・・・・
「さぁ、行きましょう。」お蝶。
「ハッハ、お宝探しの始まりだ~。」山師が笑った。
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