第2話 妹よ

☆2017年5月16日、妹に電話しました。

 15年ぶりに、妹に電話しました。

 それまで口もきかなかったのですが、

 夫も、「仲直りしたいんだろ」 と助言しますしね。


☆妹は仕事でなかなか出てこない

 夜7時半頃に電話したんですが、なかなか出てこなくてねえ。

 ご主人に、『電話してね』 と伝えて切りました。

 夜9時頃、電話がかかってきました。

 「どうしたの?」 と、不安そうな声に、

 「父が死んでもう15年経つから、もういいかなと思ってね」

 と答えました。


☆しばらく、旅費の話などして盛り上がる

 7月7日の母の命日にお墓参りに一緒に行こう、と持ちかけます。

 甥っ子を連れて行こうかなんていうので、

 「15年間、なにやってたんだと思われるよね! 

  突然あらわれて 『伯母さんです』 なんて!」

 と言ったら笑ってました。

 旅費を心配されたので、

 「JRには、大人割りっていう、50歳以上の割引きがあるのよ」

 って教えたら、

 「おねーちゃん、いくつだっけ?」

 「52」

 「おかーさんの死んだ歳だ」

 「そーなのよ。わたしも寿命かなとか思ったわけね」

 「思い残すことのないようにって?」 とか言って笑うのでした。

 おまえのセリフじゃねーよ。


☆なにごともなかったかのように会話して

 その日は終わりました。

 最期まで、謝罪の言葉は聞けないでしょうが

 そんなことはもう、どうでもいいかなと思ってます。

 ほんとうは、父の死の真相を、彼女の口から

 はっきりと聞きたいところですが

 それをやったら、きっと永久に仲直りできないだろうから。

 死んだ人はかえってこない。

 父は自殺なんか、するべきじゃなかったんだ。

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