日々の事柄 2017年版

田島絵里子

第1話 馬車とお好み焼き

 まず言っておこう。

 お好み焼き屋は、馬車を引かない!

 わたしのいる広島では、

 戦争直後には、屋台で運営していた人もいるらしいが、

 馬車を引いて客を集めたという話は、

 寡聞かぶんにして聞かない。


 広島と言えば お好み焼き。

 近くに、おいしいお好み焼き屋さん(屋台ではない)があり、

 合唱サークルの帰りに、ちょくちょく寄って

 食べて帰る。

 その、お好み焼き屋のご主人から、面白い話を聞いた。

 「わしには、馬を飼っとる友だちがおるんじゃ~」

 じゅうじゅうお好み焼きが焼けている。

 しだいにこみ上げてくる笑いのように。

 

 広島には、ドリミネーションというものがある。

 クリスマスになると行われる、原爆ドームあたりから

 平和大通り沿いのライトアップ。

 去年は、カープが優勝したことや、宮島の世界遺産登録が20年経つことなどから

 それにちなんだ電光モニュメントがあった。

 煌めく雫のLED。

 濡れるような鯉の滝のぼり。

 期間中は車や人が大混雑。

 出番になるのが、なんと白馬の馬車!

 ひとり1回1500円で、じっくりライトアップを見られる。

 大人気。


 馬車を引くその白馬は、噴火前の阿蘇山の平原で

 放牧されていた。

 歳と性格の関係で競馬には向かないので、

 一頭30万円。

 ただし、エサ代などの世話代は含まない。

 厩舎きゅうしゃに世話をする人がいらっしゃるらしい。


 派手な芸能人のするような結婚式と

 ドリミネーションのあるクリスマス以外は仕事がなく、

 いまは要請されてハウステンボスで

 馬車を引いている。

 馬は専用のトラックで運んだそうな。


 馬はお金がかかるのでは

 と言ったら、その馬車の御者は

 大病院の一人息子で

 国体にも出たツワモノなんだって!

 身近なところに、意外なコネクションを見せられて、

 驚くと同時に、客商売って、人脈が広がるねー

 と思った、今日のわたしでした。

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