パンドラの箱 〜其の者、最後の希望なり〜
里見零
第1章 〜アヴァロン入団編〜
第0話 プロローグ『序章』
「昔々、それはまだ最古の人類が現れる遙か昔。
1人の天使と1人の悪魔がいました。天使は、それはそれは聡明で、誰もが憧れる程の美貌を持った上級天使でした。
それに比べ悪魔の方は、力を欲するが為に他人と関わる事をやめ、修行だのなんだとよくわからない事に手を付け、むさ苦しい筋肉ばかりつけて、攻撃魔法しか使えないような脳筋あく...」
「実にくだらん」
薄暗い部屋の中に1つだけ灯るロウソクのそばから2人の男女の声が聞こえる。
「何が聡明だ。それは聡明なのではなくただの猫かぶりだろ。自分の保身の為に自分より立場の上の者に媚びを売ってるだけにすぎん。
それに誰もが憧れる美貌だと?お得意の光魔法で誤魔化してるだけではないか」
男は不機嫌そうに言った。
「はぁ?何言ってんの?事実を認めたくがないが為にくだらないとか決めつけるあんたの方がくだらないじゃない。それにこれは先代の天使長が執筆した天界に伝わる実話よ?人間を不幸にさせる事しか頭にない魔界の蛆虫達と一緒にしないで」
女は、先ほどの穏やかな口調とは全く異なる、下品に近い物言いである。
「あの老木はお前の父親だろ。そして誰が蛆虫だ。お前らなど、魔界の下級悪魔に少し攻撃を当てられたくらいで蹌踉めく、貧弱を文字にしたらような集団が悪魔を侮辱するでない。」
「その貧弱集団の素早さについてこれないで1回攻撃を当てても直ぐに回復され、そのまま倒す事が出来ず味方の数ばかり減らして、最終的に無様に退却していったのは、何処の何方々でしょうか?」
「逃げ回ってるだけの雑魚どもが、口を慎め」
「言い訳ですか?あー恥ずかし!まさに負け犬の遠吠えね」
2人の喧嘩は止まることをしらず、1時間が経過した。しかしここで女の体に痛みが走る。
「うっ..」
「おい、大丈夫か?」
「大したことは無いわ、もう慣れたもの」
「そうか、ならいい。随分と熱くなってしまったが、今はお前の身の安全が優先だ。この続きはまたにしよう」
「あら、言い返せなくなって負けを認めたの??」
「いい加減にしろ」
しばらく静寂が続いた。今まで気づかなかったが外では鈴虫の鳴き声が響き渡っている
「綺麗な音ね」
「あぁ、そうだな。自然と心が安らぐ、気持ちの良い音だ」
鈴虫の鳴き声にしばらく浸っていると女が口を開いた。
「もうすぐね、私達の子供が生まれるまで」
「そうだな、ここまで長かった」
「全く、最初はあんたなんかと子供を作るだなんて思いもよらなかったわ。あんだけ対立してた天使と悪魔がまさか結ばれるだなんて。
性格も噛合わない最悪の組み合わせだと思ってたのにね。まさか天界と魔界を追い出される羽目になってまでこんな事になるなんて」
「同感だな、俺もまさかお前と結ばれるとは微塵も思っていなかった。第一、魔王になるべく他者との関わりを避けた俺がこんな事になるとは、誰も想像はしていなかっただろう」
思い出話に老けている間に窓から月の明かりが差してきた。
女にはさらさらとした月明かりで輝く美しい金色の髪、背には純白の2枚の翼があり、
男には、見るだけで吸い込まれそうな漆黒の髪、そしてそれと同じ漆黒の翼が6枚あった。
「名前、考えてる?」
「俺は1つだけ候補がある」
「あら、私もよ」
2人の顔はいつの間にか笑顔が浮かんでいた。
「では、2人の候補の名を組み合わせるのはどうだ?」
「うん、いいと思う」
2つの顔が互いに接近する。
「愛してる、ゼル」
「あぁ、俺もだ、ガヴ」
2人の唇が重なり静寂に包まれた夜が明けた。まるで、これから始まる新たな物語の幕開けを意味するかのように。
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