歴史新話ヒストリア

@tabizo

第1話 宿題~松永君と古田君の場合


ここはとある町の小学校。仮に戦国小学校としよう。明日から夏休みで、先生が生徒に宿題を出していた。


先生「では、みなさんに宿題を出します。紙粘土で器(入れ物)を作ってきて下さい。大きさや、形は何でも結構です。自由に作って下さい。素敵な作品を期待していますよ。では、新学期に元気に会いましょう!」


夏休みもあとわずかになったころ、ひさひで君は中学生のよしあき君の家にいた。

よしあき君に手伝ってもらって出来上がった作品を持って帰る途中にのぶなが君に出会った。


のぶなが「おう、それは宿題のやつか?オレに見せてくれよ」


ひさひで君は渋々作品を取り出した。

のぶなが君は転校生してきてすぐにクラス全体の頂点に立ったガキ大将だ。誰も逆らえない。


のぶなが「なんだこの形は・・・茶釜みたいだな。」

ひさひで「名茶器にちなんで平蜘蛛茶釜と名付けたんだ。」

のぶなが「よく見るとなんか、かっこいいな、これオレにくれよ!」

ひさひで「嫌だよ。だってこの前もぼくの大事な筆箱を取り上げたじゃないかぁ・・・。」

のぶなが「あの九十九髭茄子とか言ってたやつか・・・人聞きの悪いこと言うなよ、あれはお前が歓迎のプレゼントとして、くれたんだよなぁ?おい!」

ひさひで「いや・・・あれは・・・う、うん・・・でも」

のぶなが「つべこべ言わずによこせよ!はやく!」

ひさひで「いや・・・だ・・・」

のぶなが「あ、オレに逆らうのかよ!おお?どうなんだよ!」


ひさひで君は泣き出しそうになりながら堪えていたが、今にも殴られそうな剣幕で迫られ決断した。

ひさひで「・・・おまえに渡すぐらいなら・・・こうだ!」

そういって作品を地面に叩きつけた。

のぶなが「ああ、おまえ、何を・・・!」

そう言ってのぶなが君はひさひで君の胸ぐらをつかんだ。

その時、偶然先生が通りがかった。

先生「おまえら何をしてる!」

のぶなが「なんでもねぇよ!な?」

のぶなが君はあわてて去っていき、ひさひで君も肩を落としながら帰っていった。

二人が去ったあと、粉々になったひさひで君の作品のかけらを拾い集める生徒の姿があった。

隣のクラスのおりべ君だった。


新学期が始まり、おりべ君のクラス。先生がみんなの作品を見て回っていた。

先生「おい、古田ぁ、みんなにお前の作品を見せてあげてくれ。」

先生が続けて言う。

「この作品はところどころひび割れていたり、欠けたりしてる部分があるが、なんとも言えない味わいがある。きれいに完璧に作るだけでなく、センス次第でこういう作品も作ることができるんだ」

みんなの前で褒められ、おりべ君は得意顔で言った。

「これは、破調の美というんですよ・・・」

先生は感心し、教室では賞賛の声があがっていた。


END

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