2

 居間のこたつに夕飯を並べて行く奈都子。陽向がここへやって来てからは作る量が増えた。それに月影も顔を出すようになったことで、俄然奈都子は料理に力を入れるようになった。もちろん好評だ。


 においを嗅ぎ付けて来たのか、馨がやって来た。こたつに置かれたおかずを見て馨が文句を言う。


「またお肉なの。魚がいい」


 珍しい子供だなと思う。肉より魚を好むなんて。


「朝ご飯に出したでしょ」


「朝は朝。夜は夜で、魚だ!」


 普通の子供としたらわがままになるのだろう。馨の場合は、かわいい亭主関白な子供に見える。


「じゃぁ、明日はお魚にするから。でも、お肉も食べないと体大きくならないよ」


 と、お勝手に戻る奈都子と入れ違いに、きっちりと着物を着た月影がやって来た。


「もう少し体を大きくしないとな、馨は……」


 確かに普通の子供と比べたら、一回り小さい。


「泪! 泪だって、一日一食の時だってあるじゃん」


「私は馨と違って子供じゃないから、一食だっていい」


「えっ、そうなの? じゃぁ、オレも大人になったら魚だけ食べたい」


 かなり意味が飛躍させてしまっている馨。次の料理を持ってきた奈都子が二人の会話に口を挟む。


「馨、大人になってもお肉は食べるの! 泪さん、今起きたの?」


 馨は、ふて腐れていつも自分が座っている場所に座った。


「昼過ぎに起きた。でも、ずっと部屋にいた」


「こっちに来てくれれば、お昼あったのに……」


「いつも悪いとは思ってて……」


 視線を下げる月影。


「気にしないで。体調のこともあるし。ねぇ、馨。テラス君呼んで来てくれる? もうすぐ晩ご飯だよって。書庫にいるから」


「嫌だよ。あそこ暗いから」


 と、何かをつまみ食いをしながら答える馨。


「それにアイツ、オレのゲーム勝手にやった。しかもゲームオーバーしてるんだ。下手くそにもほどがあるよ。奈都子さん、オレが学校に行ってる時、部屋に入らないように見張っててよ」


「えぇ、一日中見張ってるの?」


 奈都子は笑顔で答えた。


「馨。無理を頼むでない。ゲーム機をどこかに隠しておけば済むだろ」


 月影が割って入った。


「そうだけど……。るーいもアイツに言っておいてよ」


「そのくらい、自分で言えばいいじゃないか」


「やだ。嫌いだもん」


「泪ちゃん、テラス君呼んできてもらえる?」


 奈都子が言った。


「えぇ」


「お願いね」


 居間を出て行く月影。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る