第4話 ダンジョン攻略で晩餐を!1
「ちょっとカズマさん!早くなんとかしてよ!」
一心不乱に走る。周りは見えていない。何故なら、捕まった時点で終わってしまうのだから。
「珍しいな。ウィズが訪ねてくるなんて」
例の事件から数日後の昼下がり、珍しく客人が来たかと思えば見覚えのある顔。いや、基本的に1度は顔を合わせてるから見覚えのない顔の方が少ないのだが。
「それで、何か用事でもあったのか?それとも普通に遊びに?店の方は今日は休みなのか?」
「いえ、バニルさんに店番をしてもらっていて散歩がてら近くを通ったので顔を出そうかと。先日は大活躍でしたからね。またギルドで話の種になっているのでは、と思って」
大当たり。詳しい事情を知らない面々からすれば前回の泥棒の捕縛は大手柄。それ相応の報酬を受け取れば当面話題になることも目に見えていた。
「ところで、アクア様は?」
「酒を少しの間禁止したせいで部屋に引きこもっているな。あんなにげんなりしている姿はあまり拝めないぞ?」
そう、前回の事件の発端であるアクアには酒を少しの間飲むな、と釘を打っておいた。最初のうちは本人も冗談だと思っていたらしいが食卓に酒瓶が並ばなくなり屋敷中探してもそれに近いものすら無くなっていることから察しがついたらしい。
「鬼!悪魔!カズマさんなんでこんなに酷いことするの?!私はただお酒が飲みたいだけなのに!」
酷いことが起きないように事前に手を打っただけである。
「お気の毒ですけど…はい、少しの間なら我慢できるのではないでしょうか。健康のためにも良いかと思います」
リッチーのウィズにまで言われてしまったあの女神はもう少し生活リズムというものにも目を向けるべきだろう。
「それでは、そろそろ戻らないとバニルさんが怒ってしまいそうなので」
「ん。気をつけてなー」
本当の意味で平和というのはこういうことなのだろう、と噛み締めながら彼女の背中を見送った。
「カズマ、ウィズが来ていたようですね」
「おう、めぐみん。散歩がてら近くを通ったらしくてな」
「なるほど、偶にはのんびりと休むことも大切だと思いますけどね。ウィズは特に働き者ですから」
働けば働くほど貧乏になる、と有名なウィズ。まあその原因の品を何処から仕入れているのか、という問題からは視線を逸らしたい。
「ダクネスはまだ実家ですか。今回は結構ゆっくりしているのですね。ゆんゆんもあの後里帰りしましたし」
そう言えばめぐみんが帰って来たのもあの事件の直後だったっけ。となるとこの屋敷に今いるのは俺とめぐみんとアクア、ということになる。これなら無理してでもクエストを受けなくとも済むし何よりも何かしら問題が起きた時の犯人を絞りやすい。
「カズマカズマ」
「あ、はいカズマです」
「今私達が何か問題を起こすのではないか、と思いませんでしたか?」
「いや、そんなこと思ってないぞ?」
「本当に?」
「本当に」
「嘘ではなく?」
「嘘ではなく」
こういうやり取りも久しぶりな気もする。なんというか、平和過ぎる街、アクセルらしい日常が戻ってきた。
流石に酷いと思う。私はただお酒が無くなってたことを訴えただけなのにその結果お酒を禁止するだなんて。私の楽しみが減ってしまったのだ。こればかりは私と言えど我慢ならない。しかし、相手はあのカズマさん。下手にお酒を持ち込めば何を言われるか…ん?そっか。そうよね。それに類似したクエストを探して受けて報酬として一杯…それならきっと問題無いはず!何より私は生活の資金を少しでも増やそうとクエストを受ける提案をすればいい。きっとカズマさんも同意してくれるだろうし何よりもめぐみんが帰って来ているのだ。爆裂魔法を披露するためにもクエスト参加を希望するだろう。…うんうん、中々いい作戦だと思う。何よりも合法的にお酒を飲めるのは良いことだわ!え?お酒を報酬で貰えるクエストなんて聞いたことがない?ええ、私もよ?だから探すの。何としてもお酒を手に入れてみせる!それだけ考えていればあとはどうとでもなるのよ!
「カズマさーん!めぐみーん!クエスト!クエスト行くわよー!」
美味しいお酒のために!
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