第2話 お酒を隠した犯人に天罰を!2

「よし、まずは食卓を探すぞ。どうせ近くにあるんだろうし何より灯台下暗し、酒を出しっ放しの可能性だって考えられる。幸い昨日からダクネスは実家、めぐみんもゆんゆんの所へ遊びに行っているし俺もその酒とやらには心当たりがない。しかも屋敷の外に持ち出してないならなくなる方がおかしいだろ?」

「カズマさん、今日はなんだかやけに説得力があるわね。なんというか…普段もこうだったら楽なのに」

杭を刺された気分だが元々はお前が酒を隠し持っていて尚且つ無くしたのが問題なんだが?と言ってやりたいところだが今は大目に見ようと思う。何せ、ここで口論してしまったらさっきまでのやり取りの堂々巡りになるのはよく分かっている。この駄女神にもう少し頭があればどれだけクエストのクリアも楽だったのか…考えるだけで頭が痛くなるところだ。だが、そんなことを今更言っても余計に駄女神様の機嫌を損ねるだけ、俺はよく理解している。少しでも円滑に事を運ぶためには苦汁を飲みつつ早急に解決、そして今後このような面倒臭………手間のかかる要件を持ち出されないように注意を促そうと思う。

「何ボサッとしてるのよ。そうと決まれば直ぐに探しに行くわよ。カズマさん鈍臭い…プークスクス」

殴っていいよな?ここでアンケートをとってコイツを殴ってもいいか決めてもいいよな?…なんて、誰に聞くんだよと1人でツッコミつつ自然と湧き上がる疲労感に溜め息を漏らした。


食卓に…ない。まあ、知ってた。正直寝る前にチラッと見て来たがその時も普段通り変わりなく一案として食卓にあるかもしれない、と言っただけだ…が、真に受けたば………女神様が約1名。

「ないじゃない!ちょ、ここにありそうってカズマ言ったじゃない!なんで?!ないじゃない!ウソ!ウソつき!もっとしっかり考えてよかじゅましゃぁあっ!」

当然のように罵りつつ駄々をこねるあたりもう女神というより癇癪を起こした子供としか思えない…精神年齢を測る機会があれば真っ先にコイツを突き出そうと俺は思った。

「だったらソファーの近くはどうだ?」

「なんでソファー限定?!」

いや、俺は別にアクア様がお酒を飲んだ事を忘れていて実はソファーの横に空の瓶を置きっ放しにしてるのではなんて思っていませんよええ。ただ単にありそう。そこにあれば正直安心できる。コイツならやり兼ねゲフンゲフン、とまあ色々考えた結果である。

「例えばだ、もし空き巣が入って来たとして酒を手に持って帰るよりゆっくりとリラックスしながら飲んで気分良く帰る方がいいだろう?(少なくともお前はそうすると俺は思っているなんて言うつもりはない)」

ハッと顔を上げるアクア。単純だとしか言い表す術を持たない俺。これが本当に女神なのか、と疑ったところでこの世界の摂理はどうやっても変わらないし第一にこの女神を祀り上げるアクシズ教というのも評判を聞けば悲しくなるくらい…まあ、アレなのだ。良く言うならば純粋である。

「そうね!私だったらきっとそうするわ!」

そうだな。コイツだったらそうするしそんなことしてる間にお縄に頂戴されて泣き噦るんだろう。寧ろ犯人がいると仮定しても其方側の感情を汲んで考えているあたり罪人の気持ちもわかるいや、近しい行いを考えたこともあるのではないか、と疑ってしまうくらいに素直。寧ろコイツが素直じゃなかったらこの世界に生きる人間の素直の基準がどれほど低くなってしまうことか…。足取りが一段と重く感じるようになりながらも気怠げにソファーに近づ…………待った。ちょっと。待て、待ってストップ!

「アクアさん?酒瓶はどのような形状で?」

「え?そりゃ見てみればわかるわよ。瓶なんだし」

「アクアさん、本当に昨日飲んでないんだよな?」

「当たり前じゃない。飲んでたら騒がないわよ?」

「なら、この空の瓶は?」

「私のお酒ね」

「お前のお酒」

「空っぽ」

「だな」

「………なんでよぉぉぉおおおおっ!私のおしゃけなんで空っぽなのよぉぉおおおっ?!」

空の瓶に縋り付く姿を見る限り本当に覚えがないらしい。となると…まさかとは思うが本当に…

「そう言えばカズマ、最近アクセルに現れた泥棒の話知ってるか?何やら色々な場所に忍び込んでは物を拝借したりするらしいぞ?」

––––まさか、その泥棒が?だとしたら俺としてもほんの少しだけ許せない。と言うよりもしかしたら安全に暮らす上で必要なことではないか?ここで考えているより行動した方がいいだろう。ならば…。

「よし、アクア支度をしろ。ギルドでクエストを受けよう。内容は……泥棒の捕縛だ!」

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