第1話 #21「明かされた過去」

 「創次郎おじいちゃんの全て?」


 有紗は奥田を睨みつけて聞き返した。だが奥田は動じる事無く言った。


 「言葉の通りさ。創次郎アイツが守ってきたもん全てをぶち壊すんだよ! 居場所を! 仲間を! 家族を!!」


 興奮気味になってきた奥田の声のボリュームが段々大きくなってきた。


 「アイツは表じゃあニコニコして『争いは嫌いだ』だの『社員は大切な家族だ』だの言ってるがアイツの本性はどんな裏社会の人間よりも腐ってやがる!!」


 何を言ってるんだアイツ?


 「何を言ってるの?」


 俺の思っている事を代弁するかの様に有紗が聞いてきた。すると、さっきまで興奮気味だった奥田は急に静かに語り出した。


 「やっぱ知ってるワケねえよな。そりゃあ言うワケねえよな」


 「だから、さっきから何を言ってるの!!」


 ブツブツと喋っている奥田に苛立ちを感じた有紗は同じセリフを怒声で聞き返した。奥田は真面目な顔で話始めた。


 「俺も昔はアイツに憧れてた時期があった。10年前の話だ」


 ---いつも通り仕事から帰ってた時、ギャングに絡まれた事があった。最初はただ見た目のせいで絡まれたのかと思ってた。だからお金を渡して事を済ませていたが、その日から色んな人間に絡まれる様になった。


 ギャング、マフィア、ドラック商人etc…


 どいつもこいつも裏社会の人間達だった。しかもそいつらは夏目財閥の人間ばかりをターゲットにしている。


 俺も毎日毎日絡まれてくる事に苛立ちを感じ、ある日とうとうギャングと殴り合いの喧嘩をした。


 学生時代は喧嘩で負けた事は無かったから返り討ちにした。その時にボコった相手から色々聞き出した。すると奴らはしきりに『アイツに仲間を殺された』だの『復讐してやる』だのアイツに恨みを持っていた。


 俺はそれから何度もアイツから話を聞こうと試みた。だが、アイツはまともに話を聞くどころか忙しいという理由をこじつけて面会さえさせてくれなかった!


 毎日ギャング達と喧嘩になりアイツとの面会を試みるも何度も断られ、俺は次第にアイツに対して苛立ちを覚えていた。


 そんな時だった。ようやく面会する事が出来たと思ったらクビ宣告を言い渡された。そん時になってようやく分かった。コイツはとんでもないくらいのクソ野郎だったて事を!


 それから俺はボスに腕っぷしを気に入れられてCrusherに入った。


 そして、そこでまたアイツの裏の顔を知ってしまう事になる。

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