第1話 #20「コイツ人間か?」
「ボークーゥー、何処に行ったのかなあー?」
へらへらした口調で奥田は俺に向けて喋り出した。出てくるワケねぇだろ!
「俺の事見てたよなー。何かオジサンに用があったんじゃあーないのかなあー?」
まるで悪酔いした親戚のオジサンみたいにしつこく問いかけて来る。
「……」
俺は沈黙し続けた。呼吸もゆっくりゆっくりとしていった。普通にしていたらバレてしまうかも知れないと思ったからだ。
「しょうがないなあー」
頭をポリポリと掻きながらゆっくりと真っ直ぐ正面に向かって歩いて行った。因みに俺は正面に隠れてしまっている。
段々俺との距離(まだ奥田は気づいて無いと思うが…)を詰めて来た時だった。奥田の足が急にピタリと止まった。
「ふーんー、なるほどねー」
ズドンッ
「!!」
コッソリと覗いて見ると驚愕の光景が映っていた。
奥田の後ろから宙づり状態になった有紗がゆっくりと降りてきて銃口を奥田に向け一発撃った時だった。奥田の右手が背中まで届きその上撃った弾を取ったのだ。
「背後からの狙撃か。悪くないけど、相手が俺だったのがダメだったなー」
「くっ!」
悔しそうな顔を見せる有紗。俺も思わず声が出てしまいそうだった。マジで化け物かよ、コイツ!!
手が背中まで届くのは百歩譲って銃弾取るとか反則過ぎる!! マジで何者だよ!
最初の作戦がまさかの失敗に終わったが、まだ終わってはいない。有紗は下に降りすかさず銃を構える。
「おーおー、怖い怖い」
明らかに挑発してきているが有紗はそれを無視して話始めた。
「オマエの狙いは一体何なの? 財閥を乗っ取る事が目的じゃ無かったの?」
少し強めの口調で問いかけてくる有紗に対して奥田は、
「ああ、あん時そんな事言ってたけなあー。まあそれも悪くねえが、違うなあー」
相変わらずへらへらした態度に苛立ちを感じるが、まだ俺が出る幕は無い。今は黙っている事しか出来ない。俺はその怒りを抑えながらただただ2人の会話を静かに聞いていた。
「じゃあオマエの狙いは…」
段々有紗の口調が強くなってきているのが何となく分かる。有紗も苛立ちを感じているのだろう。すると奥田はニヤリと不気味な笑みを浮かべこう言った。
「俺の目的はただ1つ。創次郎、あのジジイの全てを奪う事だ!!」
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